黒き蛇の遣い
歩く事30分位かな、ようやく山の麓までやってきた私達。
山の側面を掘った、洞穴を通って祠まで行くらしい。
思ったほど疲れなかった。氣吹戸主の身体のおかげかな。
クナト様が白蛇で、タケミ様は黒蛇。対になる存在なのにクナト様は神社住まいでタケミ様は山の中の祠住まい。
ちょっと扱いが違うんじゃないのかなー、と思わないでもないけど。
洞窟の中は人が3、4人横に並んで歩けるくらいの広さはあって、天井もそれなりに高い。
先程は神社と祠の差について思う所があったのだが、村人が手間隙かけて掘ったのだと思われる洞窟を見たら扱いにそんなに差は無いんじゃないかと思い直した。
「はー、洞窟なのにあんまり暗くないですねぇ。壁が光っていて」
「ヒカリゴケだね」
「なるほどー・・・苔なのか」
洞窟の壁はほんのりと淡い青い光を纏っており、神秘的な印象を醸し出している。
松明や蝋燭とかの消耗品の照明要らずでエコだなぁ。
「いぶき、あそこだよ」
クナト様が指差した先を見ると突き当りに祠があった。
祠がある場所は一際広く掘られており、人が20人くらいは入りそうなスペースだ。
祠の前まで来ると、ピリッと張り詰めた様な感覚に陥った。
クナト様は祠に向かって
「クナトが来た。タケミの所へ案内してほしい」
と言った。案内って言っても周りを見渡しても小さな祠しか無いよ?小さな祠はとても人が入れるスペースではない。
『昨夜はタケミ様の一大事の為、やむを得ずこちらの状況を伝えに参りましたが、クナト様との謁見を望んだものではございません故お引き取り願います』
祠のスペースに響き渡る声がどこからともなく聞こえてきた。えっ?どっかにスピーカーでもあるのかな?
「・・・お主達タケミの遣いは私を到底許せまいとは思うが、せめていぶきだけでもタケミに合わせてやってくれないか?」
『えっ!?いぶき様!?』
祠の前に小さな光が現れ、やがて人のカタチになった。
『あぁ、いぶき様。戻られたのですね。タケミ様が最後の力を振り絞って呼んだかいがありました・・・』
七五三の衣装みたいなのを来た小さな5歳くらいの男の子がてててっと私に駆け寄り抱きついてきた。
「えっと・・・?」
「タケミの遣いの狢のイナビだよ」
イナビという男の子は私に抱きついて私の胸の谷間に顔を埋めてグリグリしている。
ん・・・?なんか、この子エロくない?おとりちゃんを見ると、おとりちゃんも怪訝な顔をしている。
「因みにそいつは子どもに見えてもれっきとした大人だよ」
「ひっ!?」
「黙れ!白蛇め!」
イナビは私に抱きついたままクナト様を睨みつけた。
お・・・おとな・・・・・・?この子が・・・??
「さ、いぶき様。タケミ様の元へ参りましょう」
そう言ってイナビは私の手を引っ張った。
「ちょ、ちょっと待って。あの・・・クナト様とおとりちゃんも一緒がいいな・・・?」
なんかこの子・・・えっと男性なのか?と二人になるのはやだなぁと思った。
イナビはチィィッと大きな舌打ちをしてクナト様を睨み
「・・・・・・・・・いぶき様の頼みなら仕方ないですねぇ。白蛇も連れてってやりましょう。ハァァァッ」
心底嫌そうに顔を歪めてため息をつきながらイナビは両手を広げた。・・・クナト様、徹底的に嫌われてるな。
私はおとりちゃんの隣に行き、おとりちゃんの着物の裾をキュッと握った。
イナビが両手を広げると眩しい光が私達を包んだ。先程イナビが現れたときと同じ光だ。
光の眩さに目を瞑ってしまい、次に目を開けた時には洞窟とは違う場所に立っていた。
え?あれ?ここどこ?私がキョロキョロしていると、クナト様が説明してくれた。
「ここはタケミの屋敷だよ。実際には祠のある山の頂上にあるんだ。ここにはタケミやタケミの遣いと一緒じゃないと来れないんだよ」
へぇ、下から上へ・・・エレベーターみたいなものなのかな。
「こちらです」
日本家屋の大きなお屋敷は、時代劇に出てきそうだなという感想だ。玄関で履物を脱ぎ、イナビの案内で広い廊下を進んでいく。
いつの間にか私の左手を握っているイナビと、おとりちゃんの左裾を掴んだままの私。おとりちゃんの裾は絶対に離しては駄目だと本能が感じてる・・・ような気がする。・・・だってなんでかイナビと恋人繋ぎなんだもの。




