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裏神栖村

 先程のおとりちゃんのただならぬ発言にクナト様が答えた。


「うーん。あのね、基本的にこちらに来る人間はほとんど人身御供にされてしまった人が多いんだよね。で、そういう人達は一度死んでいるので、神に仕えるものとして人間とは別のものになるんだ。おとりの場合も私の勘違いではあったけど、勘違いじゃなかった場合は人身御供だったしね。その点いぶきは氣吹戸主(元神)だから例外中の例外だけどね」

「えっ!おとりちゃん人間じゃないの?」

「そうよ。私はクナトのお嫁さんだし、神の遣いは人間に(あら)ず」


 そういやおとりちゃんは昔々の民話のモデルだよね。・・・裏神栖村(ここ)では14、5歳の少女に見えるおとりちゃんは息栖市(あちら)ではいくつになるんだろうか。

 

「あっ!おとりちゃん、着物どうだった?・・・ってまぁぁ!!なんて可愛らしいの?」


 神社から少しだけ歩いた先の家の前で、水撒きをしていたうちのお母さんより少し若そうな女の人が私達を見つけて駆け寄ってきた。


「いぶき、こちらが着物をくれたおミヨさんよ」

「あっ、私は息吹と言います。こんな高価そうな着物をくださってありがとうございました」


 私はおミヨさんに向かって深々と頭を下げた。


「いいよいいよ。私にはちょーっと可愛すぎるから仕舞っておいたけど、タンスの肥やしになるより着てもらった方が着物も喜ぶから。・・・あれ、その髪の色といい「いぶき」という名前といい、もしかしていぶき様かい?」

「あ、そうみたいです」

「やっぱりかい!タケミ様は元気かい?こっちにはいつ戻ってきたのかい?」

「えっと・・・」


 私はおミヨさんの質問の意味が分からずクナト様をチラッと見た。


「あ、あぁ。タケミはまだ修行が終わらないみたいでいぶきだけ一旦帰ってきたんだ」

「そうなのかい。タケミ様は熱心なもんだねぇ。クナト様は修行しなくていいのかい?」

「えっ!わ、私はほら、おとりが居るからな。さ、やる事沢山あるのだから先を急ごう。ではな、おミヨ」

「やだねぇ、自分の都合悪い事になるとすーぐ逃げるんだから」


 おミヨさんの口撃に速攻白旗を挙げたクナト様。そんなクナト様をジト目で見ているおとりちゃん。

 カオスな雰囲気のまま私達は再びタケミ様の元へ向かう為に歩き出した。

 

 会う人会う人全てがクナト様とおとりちゃんに挨拶をしに来る。祭りでも主役だし、二人とも村人に慕われているんだなぁ。良い事だ。

 

 村案内をしながら暫く歩いていると、クナト様が先程のおミヨさんとの会話のことに言及した。


「先程のおミヨとの会話だけど、村人に心配をかけぬ様タケミはいぶきと共に天の国に修行に行ってる事になっているんだ。だからいぶきが息栖市(あちら)から来たと言う事は村人に言わなくていいよ。・・・すまないな。いぶきがこちらに戻って来た事で、やる事も話すことも沢山あるから説明が足りない事が多々あると思う。これからもいぶきとおとりを混乱させてしまうかもしれない。でも分からないことはちゃんと説明するから、都度私に聞いてほしい」

「そんな・・・、私だっていっぺんに色々言われたら混乱しますよ。だって氣吹戸主(もう1人の私)の記憶が無い以上、裏神栖村(こちら)に関しては知らない事しか無いんですから。クナト様は私に謝りすぎです」

「私だってクナトの嫁と言ってもまだまだ新参者だし、私の知らない事だって沢山あるわ。だから、いぶきも言ってる様にそんなに気にする事無いと思うわ」

「いぶき・・・おとり・・・」


 クナト様がうるうるした目でこちらを見ている。んー、犬の耳としっぽが見えるような気がする。

 

 タケミ様が居る場所は神之池に沿って右へ向かった先に山が見える。その山の(ふもと)の祠だそうだ。

山はそれほど高くはないが、2つの山が合体しているような形。う〜ん。例えるなら・・・そうだ!筑波山を小さくした感じだ!

木々に覆われており、1面緑色をいて、見えるところに岩肌は見えない。

 それにしても、ちょっと遠いなぁ。自転車ごと池に落ちれば良かったかな、なんて事を考えてしまった。

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