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妹と旅する曰く付き異世界  作者: 智慧じゃこ
9/33

ギルドと奴隷と


んーと、ここかな?

湖から西に少し離れた所へ行くとギルドへ着く。

木製のドアを開くと立て付けが悪いのかギイイイと結構な大きさの音が鳴り、中に居た冒険家達が一斉に振り向く。

な、なにこれ、ちょっと気まずい空気だ…とっとと済ませてしまおう。


「えっと、コアの買い取りをお願いしたいんですが…」

「なんだなんだ?スライムでも倒して小遣い稼ぎかー?兄ちゃん!ガッハッハ」


1人が笑うと同じテーブルに座ってるおっさん二人も同じになって笑い、それが伝染しギルドにいる全員が笑う。

全員酔っ払いか…依頼が終わってその報酬で一杯って所だろうか。帰りたい。


「す、すいません皆さん悪い人ではないんですよ、すいません!魔物のコアや素材はこちらで買い取りしております!すいません!」


20歳くらいじゃないかな、結構な若さで目の保養になる物が付いてる。不必要に謝ってきて、謝る度にソレが揺れあ痛い?

シエラが俺の靴を思いっきり踏んでいる。いやだってしょうがないじゃん…周りの奴らを見てみろよ皆受付嬢ガン見だぞ!わざと俺に絡んで謝らせてるんじゃないかってまで考えられるぞ!そんな事言えない俺は「すいません…」と小声でシエラさんに謝るのでした。


「あ、じゃあお願いしたいんですけど」


と言った所で後ろのドアがバァーン!さっき自分が開いた音よりも大きい音を立てて開く。


「ミーアちゃーん今日も買い取り頼むぜええ!」


でっか!現れたのは身長2メートルは超えてる筋肉マッチョメンで、身の丈以上袋を担いで来た。

俺の時とは違い回りの奴らは全員目を逸らしていた。やばい奴なのかな。


「す、すいません、今おひとりご案内中なので少々お待ちください、すいませんすいません」


窓口は3つ程あり、他が空いてるのに今自分が担当してもらってる人をご指名らしい。後で知った事だがこのミーアさんは最近入った新人らしく、初々しさとドジっ子属性。そして男の視線を奪う大きな力を携えているのでギルドのアイドル的存在になっているみたいだ。

後今は受付嬢へ振り返ってはいけない。シエラがこっち見てる気がする。危険


「あ、申し訳ないです。少ししか買い取り品ないのですぐ終わると思いますのでちょっとお待ちを…」


絡まれても面倒なので丁寧に2メートル級の筋肉に断りを入れる。

えーっとコアは…まだ次元鞄から特定の物を取り出すのに慣れない。案外難しい


「あ、あわ…」


ん?受付嬢が変な顔して見上げている…どうしたんだいミーアちゃん?と思った所でドン!!!と鈍い音と共に俺の背中に軽い(・・)衝撃が走る

「っ!?ソ、ソウタ!……あれ?だ、大丈夫?」

「え?ああ背中に何かぶつかったみたいだけど大した衝撃じゃなかったよ…ボールでもとんできたのか?」


後ろを振り向くと太い筋肉が俺の背中の衝撃があった場所に触れていたまま固まっている。

は…?どういう状況だ?

外野の人間もまたポカンと口を開け何も喋らない。


「ま、いいや、ありましたありました。このコアを売りたいんですが…」

「え、あ、はい、すいません!このコア…は!?しょ、少々おまちください。」


ペラッペラッペラッペラッとページをめくる音がやけに響く。


「えっと…これ…ですよ…ね。A級魔物ヴィルトシュヴァインのコアですね。こ、こちらは1つで金貨2枚で買い取らせて頂いてます。現在討伐依頼が出ているのでその報酬金が金貨1枚と大銀貨8枚ですので合計金貨3枚と大銀貨8枚に…なります」


おお、相場は分からないが結構高い!


「ではそれでお願いいたします。あ、細かいお金も欲しいので少し両替お願いします」

「畏まりました…ぼ、冒険家カードはお持ちですか?」

「いえ、ないです…商人ギルドでならさっき登録してきたんですけど、まだ発行中で…」

「分かりました、冒険家カードはお作りになられますか?えと…お作りになられますと買い取り時の手数料等が免除されます…はい。」

そうなのか。まあタダで作れるなら作ってもらうか。

「んーではお願いします。」

「ではこの板に左手をパーにして触れて下さい」

「あ、あたしも作ってくれますか?」

「はい、畏まりました。」


そう手続きをして簡単なカードを作ってもらった。シエラと一応結衣の分も作ってもらった。

スキルとかは持っていれば勝手に持ち主の情報を収集し記載されていくらしい。仕事を受ける時に例えば【身体強化Ⅲ】以上等条件が付いていて、クリアしてないと受けられないという仕組みみたいだ。

…ヴィルトシュヴァインの討伐依頼書がさっきチラッと見えたが【身体強化Ⅴ】10人以上【治癒術Ⅴ】3人以上と書いてあった。

ギルドが保証しないだけでそれ以下で出来るもんならやってもいいらしい。


「ではありがとうございましたー」


蒼汰の言葉がギルドに響き、ドアが閉まる。

あ、チゲエ蛇のコア売るの忘れた


蒼汰が出て行ったギルド内では、自分のパンチがボールが当たった程度と言われた2m級の筋肉は茫然としていたが沸々と怒りを露わにしていった。

周りの人間もA級の魔物があの若者に倒されたというが、誰も信じている者はいない。しかしこの筋肉が手加減をして殴ったとも思えないのに平然としていた少年に誰も野次を飛ばせなかった。

受付嬢のミーアは今回は上手く仕事ができたなとホクホク顔だが、後でギルドマスターになぜこんな大事な事を報告しない!と怒られるのはまだ少し後の話し。


もう日が落ちて来て辺りは夕焼けに染まっていた。


「ソウタ…本当になんともないの?あの筋肉に本気なんじゃないかってぐらいの重さがありそうなパンチ背中にやられてたわよ…」

「え、お兄ちゃん、ちゃんと背中ある!?」

「まじか?背中!あ…ある!」

「よ、よかった…」

「なにやってんのよ…大丈夫ならいいけど」


なんで俺殴られたんだろ…殴られたんだよね?痛くなかったのは身体強化のおかげなのかな…防げる物だったから良い物を致命傷の攻撃だったら危ない。あの攻撃がもし結衣に向いていたら…

---既存スキル【危険察知】を8,000Pで会得しますか?---

---既存スキル【気配察知】を8,000Pで会得しますか?---

危険と気配の察知か。

2つとも会得だ!


「後は…」

「あたしの奴隷登録ね、ちゃっちゃと済ましちゃいましょ?」

「うーん、本当にするのか?」

「もう…別に奴隷になったって特に変わらないって。大丈夫大丈夫」


気は進まないがしょうがない…

冒険家ギルド前に簡単なMAPが張られていたので見ると奴隷市場という場所があったのでそちらに向かってみる。

冒険家ギルドからさらに北西の方へ向かう。賑やかだったのが段々と静かになり、まったく活気のない場所だ。これから奴隷として生きていく人間が集まる場所なんだから当たり前だろうけど…

喧騒とまでは行かないが商人と客とのやり取りは結構されている。

中には人族も居るが、大体売られている奴隷は獣人やハーフみたいだ。

奴隷には全員赤い線が入った首輪を付けられていて、奴隷の前に持っているスキルが書かれた板が置いてある。

とりあえず一番近い奴隷商人にどう登録すればいいか尋ねてみる。


「すいません、少しよろしいですか?」

「いらっしゃい、どの子が気になるので?」

「あ、いえ、すいません客ではないのですが」

「…なんのようだい」

「奴隷登録のする場所を教えて頂きたいのですけど」

「ああ、この先の白い建物だよ」

「ありがとうございます」


一応お礼として銀貨を1枚渡しておく


「へっ分かってるね、まいど」


銀貨1枚1万円って換算すると渡し過ぎた感あるが、まぁさっき大金が手に入った所だしいいだろう。

奴隷商人が指さす方向の白い建物まで歩き辿り着く。

中に入ると外の奴隷市とは違い、奴隷が売ってる場所とは思えない煌びやかな内装になっている。



「いらっしゃいませ、隷白館(れいはくかん)のご利用は初めてですか?」

「あ、はい。」

「では説明させて頂きますね」


聞く所、外とは違い中では奴隷のスキルを実際に見たり体験したりできるようで、奴隷同士の模擬戦や、特技の披露、料理を作ってる奴隷も居る。

商人ギルドの階級が(ゴールド)ランクじゃないと出品不可な場所らしいが珍しい奴隷を持ってきた場合(シルバー)ランクでも出せるらしい。外とは違い奴隷が持ってるスキルも高いみたいだ。


「そちらは…!珍しい、ですね、エド族ですか。今日は御出品されに来たってことでよろしいでしょうか?」


一瞬童謡してたような気がするけど気のせいかな?


「いやいや、違います。この子は大事な仲間なので、本当はしたくないんですけど奴隷登録をしないと色々面倒だと聞いたものでこちらに足を運んだ次第です」


無意識にシエラの頭を撫でる。

「あ、もう…」と言ってるが嫌がってはいないようだ。


混同種族(ハーフ)に嫌悪を抱かないとは、いい主人に巡り合えたようですね…お名前を伺っても?」

「蒼汰です。奴隷登録の方お願いできますか?」

「………貴方なら、大丈夫ですかね」


受付のお姉さんがボソッとそんな事を云うと、周りをキョロキョロ見回した後誰も居ないのを確認したのか、「よし」とつぶやき、身長が光ると同時に縮始め、シエラと同じ特徴の耳と体形なる。


「「え?」」


「実は私もエド族なんですよ」


そう言って自分の正体を明かした。

エド族は低身長に耳が少し尖っている。子供のエルフと似ているのだが、耳の長さが倍くらい違うらしい。

蒼汰はなんと言ったらいいか分からずポカンとしている。

シエラも同じだ。こんな所で同族とであるとは思ってなかったみたいだ。


「奴隷の受付をやっていればいつか同族に会えるんじゃないかと思ってましたが…本当に会えてうれしいです。仲間に会うのはあの逃亡劇の日以来ですかね…他の皆は大丈夫でしょうか。あ、申し遅れました。私の名はミレイユと申します。」


そう名乗った後【幻影付与(ミラージュ)】を詠唱し受付嬢の姿に戻る。


「あの、ミレイユさん。逃亡劇って莫大な魔力を溜めて国に復讐しようとしていた組織が魔力に惹かれて来た悪魔の軍団に襲われた時の事ですよね。どさくさに紛れてバラバラに皆で逃亡したっていう…。あたしはその時まだ産まれたばかりでジェレンおばあちゃんから話しを聞いただけなんですけど」

「ジェレン御婆様生きていましたの!?良かった…」

「はい、大きい声では言えませんが隠れながら点々と住処を変えながら仲良く生きていますよ」

「そうですか…シエラさんと言いましたね。この先もこの方と旅を続けるのであれば正体を隠した方がいいです。エド族は奴隷狩りに狙われやすいので…あ、これを持って行って。」


ミレイユさんはそう言って薄い本を渡してきた。


「これは?」

「魔導書よ。この中に【幻影付与(ミラージュ)】も載ってるから、それを覚えて耳に掛けなさい。私の耳みたいにね」


とんとん、とミレイユさんは自分の人族と同じ耳を見せる


「ミレイユさんはいいんですか?」

「私はそこに載っているもので覚えられるものは覚えたから大丈夫よ。覚えるには何日もかかると思うけど、頑張って。」

「はい、ありがとうございます!」

「いえいえ、後これも上げます」


渡してきたのは奴隷が付けてるのと同じ見た目をした首輪だ。


「偽物の奴隷の首輪よ。【幻影付与(ミラージュ)】が使えるようになったら不要かもだけど、それまで付けておいたほうがいいわ」

「何から何までありがとうございます」

「いいえ、頑張って。色々とね?」


そう言ってミレイユさんは俺の方を見た後にシエラを見る


「なっ!が、頑張るわよ、魔法!魔法頑張って覚えるわ!」


うふふふとミレイユさんは笑いシエラが赤くなっている。

どうしたんだろ、初めての魔法覚えられるかもで嬉しくて興奮してるのかな?しかし良かった。シエラの奴隷化はなんとかなった。


「中も見ていかれますか?」

「んーせっかくだしどんなものか見てみるか」

「ではこちらのバッチと入札書を渡しますね。気になる奴隷が居ましたら入札書をその子の前の札に掛けていって下さい。入札書が他の人と被った場合は奴隷の方が主人を選ぶ形になります。」


オークション形式とかかと思ったら違うのかと思ってると顔に出ていたのか「奴隷になった人が自分で選択出来る最後の所なのよね」と言っていた。


グルっと中を一周すると出口に着くようになっており、迷いなく見て回れるようになっているみたいだ。


「お兄さん!わたくし【料理Ⅴ】持ってますわよ!毎日美味しいご飯食べられますよ!どうですか!」

「あら、可愛い子達。3人纏めて夜を相手してあげるわよん?」

「護衛ならお任せください!自分!【格闘Ⅳ】あります!【遠見Ⅲ】や【聞耳Ⅲ】もあり安心して旅が出来るようになりますよ!」

「りょ、料理はあまり得意ではないですけど、【家事Ⅵ】あります。綺麗なお家に住みたくありませんか?」


外とは違ってここでは自分からスキルを言って売ってきている。

ここに来る人は大体貴族やお金持ちみたいなので奴隷達も必死なのだろう。

奴隷は売っているギルド事にスペースが用意されており各スペースにそのギルドのエンブレムが横の柱に掛けてある。

(ゴールド)ランクはエンブレムも金みたいだ。とするとあっちの銀のエンブレムは珍しい子が居るってことかな…?向かってみると1人裕福なんだろうなという体形の40台ぐらいの男性がそこで怒鳴り散らしていた。

「なんだこの料理は!こんな変な色のもの食べさせて腹を壊したらどうする!」

ガシャーン!とその男は目の前にある料理を薙ぎ払い床に落とす。


「違うの、です。これ、は、リミーヤの実と、一緒に漬けた、です。大丈夫なんです…」


少し汚れているが、それでも綺麗だと思える金色の(狐っぽい)耳と尻尾を持った子がこの料理は大丈夫だと説明しているが、自信がないのか段々声が窄まっていく。


「大体獣人が作る料理なんて毛でも入ってんじゃないか?食べられるわけがないな。狐族(ルナール)と言ってもただの獣人に変わりないではないか」

「お客様!申し訳ありません、珍しいとはいえ獣人風情に料理なぞ作らせてしまいこちらの落ち度でございます、本当にすみません」


その店の店主であろう痩せて顔が細い人が文句を言いながら立ち去っていく人に頭を下げながら一緒に行ってしまった。

リミーヤの実か…聞いた事ないけどどんな味なんだろうな。それにしても床にぶちまけるなんて勿体ない…


「あんたまた変な物作ったの?何度言われたら分かるのよ。一緒に売られている私達まで変にみられるじゃない。せっかくの隷白館(れいはくかん)でのチャンスなのよ?いい加減にしてほしいわ」

「ご、ごめんなさい…」

「とっととそこに散らかっているものを片付けなさいよ、まったく…」


一緒に売られている奴隷は外と同じような感じの普通の奴隷みたいだが服装だけは綺麗で居る。話しの内容からして普段は外で売られているのだろう。

シュン…と折れた狐耳の子…狐っ子と呼ぼう。が散らばってしまった物を拾っている。

俺も近づいて落ちてる一つをつまみ、汚れを払って齧ってみる。


「あ・・・」


狐っ子がこちらを見てくる

色は違うけど…卵だよな


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