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妹と旅する曰く付き異世界  作者: 智慧じゃこ
4/33

エド族の少女

5/28 身体強化の説明文を改定。

   改定前:力・スタミナ・頑丈さが上がる。

   改定後:ステータス全般が上がる。


「エド族には昔から付き合っている問題があル。」


ジェレンさんがそう語りだす。


「エルフは魔法に長けていて、当然魔力もそれなりに保持していル。その代わり身体能力は高くなく、その体は脆イ。魔力の衣を纏ウ【魔力装衣(エナジーコート)】を使用する前に叩ければすぐに片が付ク。逆にドワーフは魔法はからしきジャ。その代わり腕力はずば抜けて高いし体は頑丈。」


ジェレンさんは苦しそうに寝ている先ほど倒れてしまった女の子をわが子のように頭を撫でながら話しを続ける。


「そんな種族のハーフなんだガ、たまに膨大な魔力を保持しておきながら魔法が全く使えない子も産まれてきてしまう。その魔力は年々膨らみ、10歳前後で自分の魔力に耐え切れず死んでしまうんジャ…。この子、シエラは「絶対に死なない。」と言いながら体が動くうちはずっと鍛錬をしてきた。魔力に耐えられる体を作るんだってナ。でもそれも叶わず1年前くらいからカ…見ての通りジャ。もうすぐ10歳。そろそろ腹を括らねばならぬ頃ダ…」


「・・・」


自分の魔力で死んでしまう…か。魔法を使えれば魔力を外に出す事が出来て生き永らえると。だからA級の魔物を魔法で倒したという俺に魔法の教えを請いて来た…と。

まいったな、俺はこの世界に来たばかりだ。魔法もあれしかまだ覚えてないし使い方と言われても教えるなんて事出来ない。


「お兄ちゃん…」


同じ年頃の子がもうすぐ命がない。そんな事を聞かされれば優しい妹はどうにか出来ないかと思う所だろう。でも助けるという事はポイントを使うという事。ポイントを使うということはそれだけこの世界にいる時間が長くなるし、問題にあたる度にポイントを使っていてはいつまで経っても目標に達成出来ない。

そんな感じで悩んでるのか、それ以上は言ってこない。

まぁ、見捨てるなんて事出来ないよな。


「俺に、この子を託しては貰えませんか。」


「なニ?何か治す心当たりでもあるんカ!?」


ジェレンさんが腕を掴んでくる。よっぽどこの子に思い入れがあるのだろうか。


「お、落ち着いて下さい。まだなんとも言えませんし上手くできるかも分かりません。失敗する可能性だってあります。失敗したらどうなるかだって分からない。」


「ふム…」


「…ジェレンばあちゃん。」


「!シエラ!大丈夫カ?」


「あたし、その人に委ねます。どうせ死んじゃうのなら、お願いしたい…えと、名前は…」


「そういえば名前名乗って無かったっけ。俺は天使蒼汰だ。こっちは妹の結衣」


「ソウタ…さん。お願い、助けて。お礼はします。」


なんでもします、お金貯めます、だから、お願い。と弱弱しい声で続ける。


「よし分かった、任せておけ。」


グッと親指を立てて恰好付けると、シエラは疲れたのか寝てしまった。


「ふふ、お兄ちゃん恰好つけてる。」


「い、いや、これは安心させるためにな?」


バレてる。


「それでは治療を開始しますのでジェレンさんは席を外して下さい。」


何があるか分からないし念のため。


「しかシ…いや、分かっタ。シエラをどうか頼みまス。」


そう言ってジェレンさんは去っていった。


…さて、まずこの子の状態、どうすれば治せるか。それを鑑定するようなスキルが欲しい。

イメージ…しようとすると。


---既存スキル【鑑定】を15,000Pで会得しますか?---


あれ、さっきは消費ポイントとか出ずにすぐ覚えちゃったのに今回は選択できるのか。それにポイント足りないかなとか考えてたけど思ったより安い。

この違いはなんだろう。

迷わず【鑑定】を会得する。


---スキル【創造】によりスキル『鑑定』を会得。…消費ポイント15,000P。残り33,000P---


よし、これでシエラの状態が分かるな。

えーっとどう使うんだ…?シエラを凝視するとさっき自分のステータスを見た時と同じような画面が出てくる。


--------------------------

名前:シエラ

年齢:9歳

種族:エド

スキル

【身体強化Ⅱ】

  ┗力・スタミナ・頑丈さが上がる。

【魔力ブーストⅤ】

  ┗現在習得してる魔法のレベルより、ブーストレベル分強く打てる。

【疾走Ⅰ】

  ┗瞬間的に速度を上げる。レベルが高い程スピードが上がり、持続時間が長い。

魔法

なし

状態異常

魔力飽和:魔力が限界まで溜まっている状態

魔力汚染:使われない魔力が淀み汚れている状態。汚れた魔力は魔法に変換できない。汚染されると体が思うように動かなくなり、1年~1年半で命は尽きると言われている。

  ┗治癒方法:汚れた魔力は神経にも達している為【魔力操作】で少しずつ取り出し、同時に綺麗な魔力も注ぐ必要がある。一気に吸い出すと激痛が走り最悪死亡する。


--------------------------


お、でたでた。スキルは気になるがとりあえず後回しにして、えっと…あった。治し方も書いてあるな。…膨大な魔力を少しずつ取り出すのか…どのくらい時間かかるんだろ。まぁいいとりあえず【魔力操作】とやらを覚える必要がありそうだ。


---既存スキル【魔力操作】を2,000Pで会得しますか?---


お、仕事が早い。そして安い!さっきから出る既存スキル――って出るものは創造で作ってるわけではないからそこまで高くないのかな?


迷わず会得っと。


---スキル【創造】によりスキル【魔力操作】を会得。…消費ポイント2,000P。残り31,000P---


おお、覚えた瞬間になんとなく魔力操作のやり方が分かる。

意識すると魔力の流れが分かるな…シエラからすごい魔力を感じる。これを少しずつ逃がせばいいのか。…直接肌に触れれば効率がいいみたいだな。おへそがいいみたいだ。

いや、違くて!覚えた瞬間色々効率のいいことが分かってね!?治療を口実におへそ触りたいとかじゃ断じてないからね!?


心の中でいったい誰に言い訳をしているのか一人頭をブンブンさせ、無だ…無を宿せ…と右手をおへそに置き治療を開始する。


「お兄ちゃん大丈夫…?」


「ん!?何が!?あ…だ大丈夫だ、問題ない。」


ふう、焦った。妹の目が視えてたら「お兄ちゃんなにしてるの…?」と氷のような目で見られていたかもしれない。


「これは…ちょっと時間かかりそうだな。大分神経も使いそうだ。集中するから結衣は先に寝てていいからな。」


「うん、頑張って!お兄ちゃん!」


「ああ、まかせとけ。」


そして集中する。

右手に魔力を感じる。すごい魔力だ。初めて感じる魔力。すごく荒々しく今にも爆破してしまいそうな、少し気を緩めたら一気に溢れて出てしまいそうになる。それを抑えながらゆっくり、少しずつ外へ逃がし、自分の魔力をシエラに循環させることも忘れない。何時間経ったか、それともまだ1時間も経ってないのか、自分がどれだけの時間魔力操作をしていたのか分からなくなっていく。だけど意識は手放さない。手放したらこの魔力はまだ幼いこの子に牙を向く。助けてあげたい。


‐‐

‐‐‐


‐シエラ視点‐



温かい。

心地が良い。

体の中を何かにかき混ぜられている感覚。でも不思議と怖くない。

体の中に溜まり続けていたモヤモヤが少しずつ無くなっていく。

体が軽い。

体が軽い…?


パチっと目を開く。

いつもの天井。いつもならこの瞬間体の重さを思い出し苦しくなり、気絶するようにまた寝てしまう。

そういう生活を1年近く続けてきた、地獄のような日々。もうすぐ死ぬのかなって思ってた。

けど

何も襲ってこない。体の重さも苦しさも。もしかして…と隣に気配がすることに気付き振り向くと


「きゃっ!?」


と言って慌てて自分の口を塞ぐ。びっくりした。だって近くに男の人の顔があるんだもの。


「ソウタ…さん?もしかして、本当に治して…?」


疲れているのだろうか、ぐっすり眠っているらしくその顔をボーっと覗き込む。とその時


「起きましたですか?大丈夫そうです?」


突然の声にビクっとする。


「あ、は、はい!あんたは妹の…」


綺麗な黒髪の女の子。

目を瞑ってるものだから寝てるのかと思った。目…見えないのかな?頭の上に乗ってる生物も気になる…可愛い


「うん、結衣です。具合良さそうで良かったです!うちのお兄ちゃんはすごいでしょう?」


ふふんと兄の事を自慢げに話し始める。いつも困った事があれば助けてくれるヒーローなんだと。お兄ちゃんはねっ!お兄ちゃんはね!とずっとお兄さんの話しを。

お兄ちゃんの事好きなんだなぁ…兄妹、羨ましい。


「本当に、すごいねソウタさんは。誰一人助かることがなかったこの病気を治してしまうんだもの。どうしよ?一体どれだけの恩を受けちゃったのかしらあたしは。」


「んーお兄ちゃんは恩とか返さなくていいっていうと思うなっ。きっとまた恰好つけると思う」

そういいながらクスクス笑う。


うるさくしちゃった為か


「ンー…」


と伸びをしてそのお兄さんが起きてくる。


「…お?その様子だと上手くいったみたいかな?」


眠そうな顔でポンポンと頭を軽く叩いてくる。


「とりあえず、これで魔力が原因で死ぬ危機は去ったよ。これからも生きられるはずだ。」


生きられる。そう言われると本当に治ったんだと。胸に秘めていた元気になったら外の世界を見て回りたいという夢も叶うと。そう思ったら涙が出てきた。


「ありがとう、ございます。本当に・・・ありがとうございます。」


妹相手に慣れているのか、でも妹ではないから遠慮してるのか、軽く胸を貸してくれるソウタさんにあたしは少しの間甘えた。


少しすると


「シ、シエラ!?」


「あ、ジェレンおばあちゃん」


「ナ、ナナナ、ナオタ?」


「ぷふっおばあちゃん言動おかしくなってる」


おばあちゃんの様子につい可笑しくなってしまい噴き出す。


「よ、よかっタ。ほんとうによかっタ。ほんとうニ、ほんとうニ…」


おばあちゃんが泣きながら抱き着いてくる。あたしより泣いてる。こんなに想ってもらっているあたしは幸せ者かもしれない。


「蒼汰殿、本当にありがとウ。しかし私らは何も返すものがなイ。魔物の肉しかないが、せめテ御馳走させてくレ。」


「いえいえ、お気になさらず。魔物の肉というのは少し興味があるので頂いていきます!…調理場を見せてもらってもいいですか?」


「あア、かまわんヨ。」


ソウタさんとおばあちゃんがそんなやり取りをするとこの場を去っていった。


「お兄ちゃん、料理が好きなんだよね。」


「なるほど…それで。」


「すごく美味しいの!もしかしたら魔物のお肉もお兄ちゃん味になってしまうかも」


「でも魔物の肉ってすごく硬くて生臭くてとても美味しいものじゃないのよね。いくら料理上手でも厳しそう…」


「そ、そうなんだ…いやでもお兄ちゃんなら大丈夫!いける!」


そうして1時間後

洞窟中がすごく香ばしい匂いに満たされ、料理場に全員が視線釘付けになっている。


そんないい香りのお肉が1人ずつ葉っぱのお皿に載せられ、行き渡る。


「あーうちの秘伝のタレが少しあったので使ってみた。口に合うか分からないが遠慮なく食べてくれ」


まだ誰も食べない。


「では、まずは私かラ食べてみよウ」


村の長が一口食べたら皆食べ始めるという風習だからだ。

そしてジェレンおばあちゃんが魔物の肉を1口食べる。


「んんンン!?」


倒れた。え…?


「ちょ、え、なんで!?」


ソウタさんがめちゃくちゃ焦ってる。「も、もしかして魔物の肉とタレの相性が悪くて毒でも発生した!?」と騒ぐも。


「う……うまイ。うますぎル!!」


カッと目を見開きガツガツ食べ始めるジェレンおばあちゃん。

それを茫然とみんなが見てハッとし食べ始める。

そこからは大騒ぎだった。


「ウメェ」「なんだこれえ!」「これがあの肉かああああああ!?」


叫び泣き、みんな喜んでいる。


「シエラも病気が治ったし、肉もうまいし。今日はいい日だぜ!!」


あたしが病気が治るのとお肉が美味しいのをいっしょくたにされた!後でガインはパンチね。

そんなに美味しいのかなとパクッと一口食べる


「ほわぁっ…美味しい…」


隣で結衣がにこにこしてる。


「ね、美味しいでしょ!」


まるで自分のことかのようにお兄ちゃんがあちこちで褒められてる事がうれしいみたいで機嫌が良さそうだ。


「…あなたは食べないの?」


「私はお兄ちゃんと食べるから。さっきからおかわりおかわりって聞こえるし、しばらく忙しそう」


そう言ってまたにこにこ…というかニヨニヨしてる。


「…好きなんだね」


「っ!?え?な、なにを、なななにが?」


あれ?


「あれ、兄妹で駆け落ちしてきたとかガインがあちこち言いふらしてたけど違うの…?」


「え、あ、そういえば…あ、あれは違うの。咄嗟に適当な嘘をお兄ちゃんがですね…アハハ」


あれ、嘘だったんだ。それじゃソウタさん恋人いない…って何考えてるのあたし!


「な、何か事情があるのね?まぁ聞かないけど…これからどうするつもり?」


「どうするのかな?お兄ちゃん次第だけど、デナイアルさんが過ぎたら街を目指すと思う。」


「そっか…そうだよね。」


ここにずっと居てくれたらなって思うけど口には出せない。あんなすごい人なんだもの、きっと何か目的があって旅をしてるのよね…。

しょうがないよね…と思うも、でも…とソウタを見つめ続ける。


その様子をニヤリとジェレンが見てることに気が付かず。

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