日常からの非日常
始めまして!
文章を書くのが得意でもなく多彩な語源力があるでもなくただ書いてみようというだけで書き始めたものです。
小説というのもおこがましいかもしれませんが目を通して頂けるなら幸いです
思うがまま書いて行きますのでよろしくお願いします。
2018/7/17 @arisue_alico さんに妹の天塚結衣のイラストを描いて頂きました!一番下に載せたので苦手ではない方は見てって下さい。
「はいお待ちー」
『ゴトッ』とお皿を鳴らしそれを妹の前に持っていく。
「くんくん・・・この匂いは食パンを焼いた香り!上に載っているものはチーズと・・・ハムかな?」
妹は少し悩み、正解を口にする。
「正解だ、良くわかるなー。兄ちゃんは匂いだけで当てられる自身はないな・・・」
そう言いながら妹の手を取りパンの場所に持っていき場所を教える。
「あっ・・・いつもありがとうお兄ちゃん。」
微笑みながらお礼を言ってくる妹。
うん、可愛い!!!
「どういたしまして。冷めないうちに食べよう。」
冷静を装い自分から食べ始める。
そうすると妹ももきゅもきゅとパンを食べ始める。
食べてる間は喋ったらはしたないとテレビで聞いてから妹は口に食べ物がある間はほとんど喋らないが今日は違うようだ。
「今日は1日暇ですな~お兄ちゃんは何時に帰ってくるの?」
んーと言いながら答える
「平日だから帰ってくるのは夕方だよ・・・っていつもなら言うけど、午後に強い台風が直撃しそうとかで午前しか授業がないから昼には帰ってくるかな。買い物してから帰ってこようと思うけど何か食べたいものとかあるか?」
シュン・・・と音がしそうな顔から一気にパァァと顔を輝かす。
分かりやすい、そして可愛い。
「買い物なら一緒に行きたかったけど台風近いんじゃ今日は我慢する。えーっと・・・この前食べたお好み焼き食べたいな!エビとお肉の!」
この前鉄板で作ってあげたやつか・・・
「わかった、材料買ってくるよ。」
その後は終始にこにこしながらパンを食べていた妹に「それじゃ行ってくる」と言い学校へ向かう為玄関へ向かい靴を履く。「いってらっしゃい」と言う妹を誰もいない家に一人で留守番させることに心配を募らせながら家を後にする。
俺の名前は天使蒼汰、今年で18歳になる。決して(てんしそうた)ではない。
そして先ほど家で会話をしていた妹は天使結衣。肩まで届く黒い髪の10歳だがあと数ヶ月で11歳になる。こちらは(てんしゆい)で間違いない。
そんな天使並みの容姿と性格を得てしまった為か、妹は産まれてからその目に光を宿したことがない。
そう、目が視えないのだ。
その為服等は兄である自分が買ってくるのだが、センスがいいわけでもなく無難な物に留まってしまっている。苺が好きだと前に言ってたので苺のヘアピンを買って上げたらそれ以来毎日付けてくれているのが嬉しい。
俺は元々柳蒼汰という名前だった。
父親を事故で亡くしてから母親は別人の用に冷たい態度をとるようになり、深夜に家をフラっと出ては俺が学校へ行った後帰ってくるという日々を送っていて、俺の事を避けていたのだと思う。そして2年前突然チャラそうな男を家に連れて来て「再婚する」とだけ言われ、今の名前となった。
再婚した相手の父親に付いてきたのが結衣であり、男の方も障害を持った娘を煩わしく思っていたのかかなり雑な態度だったことを覚えている。
再婚して結衣を連れてきたその日に両親は新婚旅行へ行くと言い残しそのまま帰ってきていないが、渡された通帳には毎月ギリギリ暮らせる程度のお金は振り込まれているので生きてはいるようだ。
当時はいきなり出来た妹と二人暮らしになってしまい戸惑ったものの、今では仲良くやっている。
申し訳なさそうに両親の祖父母が様子を見に来てくれることもあるのでわりとなんとかなっているのである。
当時の妹は常にビクビクしていてとても見ていられなかった。
盲学校という目が見えない人、弱い人用の学校もあったが頑固として行きたがらず、ずっと家に居る。
そんな妹とどうにか仲良くなろうと中学生の頃からせっせと磨いて来た料理スキルでリクエストに応えたり。目が見えなくても楽しめるおもちゃを探してみたりで気を引いていた。時折見せてくれるようになった笑顔がうれしかったのだ。
まあそんなこんなで普通の人とは少しだけ複雑な人生を歩んできたけど特に不満は無かったしこれからも大丈夫だろうと思っていた。
朝までは。
「あー結構風強くなってきたな・・・早く帰ろおうっとっと」
授業が終わり、買い物をして帰路の途中角を曲がった所で来る突風によろめきながらもスーパーの袋を片手にぶら下げ歩いている。
・・・・・・・・・・・・なにか、見られている気がする。
自意識過剰とかそういうのではない、ないと思いたいのだが・・・なんなんだろうかこの落ち着かない感じは。
まぁでも気のせいだろう。
「真上から視線を感じるというのもおかしな話しだしな・・・」
いつもより雲の流れのスピードが速い空を見上げながらそんなことをボソッとつぶやくと突然。
---ユニークスキル【創造】を貸し与えられました---
「っ!?・・・なんだ?なんかいま・・・」
聞こえたような・・・と周りをキョロキョロ見渡すが誰もいない。
なんなんだ・・・疲れてるのかな・・・と思いながらも家に着き、ガチャガチャと音を鳴らしながら鍵を開ける。
「ふぅ・・・ただいまー」
一拍置いてひょこっと
「おかえりなさい、お兄ちゃん!」
頬を蒸気させて出てきた妹が出迎えてくれる。
はい疲れ飛んだー
「・・・何かしてたの?」
妹は元気よく「うん!」と答えると
「今日はお兄ちゃんが早く帰ってくるって言ってたので日課のエクササイズ(自己流)を午前に前倒しやっておりました!」
お兄ちゃんが作ってくれる料理が美味しくてつい食べ過ぎちゃう・・・このままじゃぽっちゃり道まっしぐら・・・と1年前にボソボソ喋った後から毎日の日課になっているらしい。
らしいと言ったのはその姿を見せてくれたことがないからだ。なんでかな?
「そうか、んじゃ午後は遊ぼう!」
おー!と二人で気合?を入れる。
「まぁその前に昼飯だな。お好み焼きは夜にしてお昼は軽く・・・んースパゲッティでも作るか。」
妹は「すぱげってぃるー!」と謎の言葉を放ちながらバンザイしていた。
そして「汗をかいたのでお風呂に入ってきます。」といいリビングから去っていった。
家の中ではもう慣れたもので、目が視えなくてもスイスイ移動している。
内心いつもハラハラしているが、心配は杞憂に終わる。
「風呂か・・・」
昔は使い方や場所を教えるのに一緒に入ってたけどこれもまた1年前くらいに「も、もう一人で入れそうです」と顔を赤くして言っていた。
娘が一緒に風呂に入ってくれなくなった父親はこんな気持ちなのだろうか・・・と当時は思ったものだ。
それから二人は昼食を終え、一休みした所で妹が最近ハマっているゲームを提案してくる。
「動物鳴きまね当てゲームしよー!」
「よしきた!」
動物鳴きまねゲームとは片方が動物の真似(主に鳴き声)をしてそれを当てるゲームだ。とは言ってもどんな動物がどんな鳴き声なんて妹の頭の中にはすべて記憶しているし、俺の方もこの鳴き声はなんていう動物で・・・と昔教えた側なのでゲームにはならず、俺が動物の真似をして妹が笑うってだけの遊びになっているが、妹がやると言ったらやるのだ。
「それじゃ最初は何がいいかな・・・」
妹はじっと耳を澄ませているが、まだ何もしてないのに口がにやにやしていて今にも笑い出しそうだ。
まずは定番のアレいっときますか。やるからには俺も全力だ。
目を瞑る。
よし・・・イメージだ・・・黒い毛。厚い胸板。未知数の握力に特徴的な鳴き声と誰もが知るあの行動。
キタ・・・魂が宿った・・・行ける!
カッと目を見開き最高の物まねを披露する!!
「ウホォォ!・・オ・・・?」
勢いよく鳴き声を発しながら自分の胸板2回3回叩き物まねを披露し始めたところで異変に気付き中途半端な状態で固まる。
・・・訳が分からなかった。
妹がゴリラになった。
・・・・・・いや、違った。ゴリラに隠れて見えないだけでちゃんと妹は居る。
っていうか、え?ゴリラ?幻覚!?
「お兄ちゃん・・・?」
妹の声でハッと我にかえるがその時には妹が一歩こちらへ歩み寄る足音が聞こえた。
「結衣!待っ「きゃっ!?な、なに?モサって、お、お兄ちゃん?どこ?」
静止を促そうとしたときにはすでに遅く、妹はゴリラにタッチしてしまった。
そんなゴリラはビクッとした後本場のゴリラボイス発しながらリビングの庭へ繋がる窓ガラスへダイブし、ガラスが割れる音と共に外へ消えてった。
「お、お兄ちゃん・・・?ドッキリ?ドッキリなの?迫真の演技なの!?」
とテンパってしまっている。
妹のそんな様子を見て俺は逆に落ち着いてくる。
落ち着いても理解は追いついていないが・・・
起きたことを整理をしよう。
目を瞑り、イメージし、目を開けたらイメージ通りのゴリラが居た。
幻覚とか言って自分も誤魔化すこともできなかった。
いやだってもう窓ガラス割れてるし、外から「キャー!ゴリラよー!」とか騒ぎになってるし。
え?どうすんの・・・?
「お兄ちゃん?居るよねっ?ひ、一人にしないでっ」
ハッ・・・あまりの出来事に妹を放置してしまった!
「ご、ごめん、ちょっと・・・なんていうか・・・」
「なにが・・・あったの?」
_
__
___
「本当に・・・ゴリラが・・・」
「あ、ああ・・・」
今の出来事を丁寧に教え、どこからか入ってきたのかな?と質問されあちこち見て回ったが、どこにもゴリラが入ってきた形跡はなく、リビングのソファで放心している2人が居た。
割れた窓ガラスを塞ぐためにとりあえず固定しておいた誰か分からない人物画のおじさんが避難の目でこちらを見てる感覚に陥るがそんなわけないと思いつつ目を逸らす。
とりあえずテレビでも・・・とテレビを付けてみると、そこには緊急速報というテロップと共に【輸送中のゴリラが脱走か!?】と流れてきており、マンションの屋上から今日も行ったよく知る商店街の方を映し、台風のおかげで外出してる人は少なくそこは幸いだった思いますとかなんとか言うアナウンサーの奥目に先ほどのゴリラが屋根の上でバナナを食べる姿が映し出されている。近くの住民は危険なので家から出ないようにと若いアナウンサーが早口で同じ言葉を繰り返している。
そういやテーブルの上のバナナいつのまにか無くなってるな・・・と思っていると
「ぷふっ」
と可愛らしく吹いた妹がクスクス笑い始める。
「ご、ごめんなさい、なんか、可笑しくて、ふふっ」
「そ、そうだな、ハハ、あっはっはっはは」
と町が大変なことになってるも関わらず、退屈な日常がいつもとは違う日常となり、妹にとってある意味忘れられないだろう思い出の日となったのなら良かった事にしよう。
「まぁ別に俺らが悪いってわけじゃないし・・・な?」
「うん、たまたま突然ゴリラが沸いてきたのがうちってだけだね!」
とまた二人で笑い出す。
外は丁度台風の目に入ったのか、風が穏やかになっている。
「楽しんでくれたようでなによりじゃな!」
「「!?」」
ビクっと二人して声が聞こえた方へ顔を向ける。
「だ、誰ですか貴方は・・・っていうか鍵占めてたはずなのになんで家の中に・・・」
確かに鍵を閉めた記憶を頭に巡らせながらそこにいる人物に問いかける。
「ま、またなにか出てきたの!?」
妹は不安そうに自分の袖を掴んできた。
「ふむ・・・まーなんじゃ、うちは考えるのが苦手じゃけ、率直に言うと神じゃ!名はコニラという!」
ババン!と音が鳴りそうな感じで手を腰に当ててエッヘンとしている。
「えーっと・・・」
どういったらいいか分からず穏便にお帰り頂く方法を考え始めると
「あー、まつのじゃ、基本人は皆信じない。知っておる。だから先にお前に私の力を貸し与えた。ほら、先ほど不思議なことがおこったじゃろ?あれが私の力じゃ」
「ま、まさか・・・ゴリラを召喚する力・・・か・・・?」
「ちっがーう!のじゃ!私の力は【創造】。あるものを対価に無から様々なものを創りだす力じゃ。」
んー安めのポイント安めのポイント・・・と目を閉じ何かを考えてる。
「ほれっ!」
そうやって神・・・らしき人はウサギを虚空から生みだし、妹に渡す。
「わっ、な、なに、この子・・・動いてる・・・モフモフ・・・」
咄嗟に受け取ったウサギをおっかなびっくり持っていたが、その感触の気持ちよさに頬緩めている。
「動物に限らんぞ、なんだって作れる・・・まあタダではないがな。」
そういいながら人参やら木製バットやらを出して机の上に置いていく。
「わ、分かった。あなたが神様だとして、どうしてここに?どうして俺にそんな力を?」
「うむ・・・説明すると少し長くなるのだが・・・」
その神とやらから聞いた内容をまとめるとこうだ。
この神が管理する異世界を楽しい世界にしてほしいと。
他の世界では異世界旅行というものが存在するらしいのだが
「うちの世界・・・名をユニヴァスと言うんじゃが。来た旅行者は呪われてるかのように様々なトラブルにブチあたってじゃな・・・」
来た瞬間稀にしか人里まで降りてこないワイバーンに襲撃される然り。
モンスターの突然の凶暴化然り。
旅行者には漏れなく毒物混入の食事が与えられる等
なんで・・・と目を覆いたくなることばかり起こるそうだ。
既に異世界ガイドブックには紹介されず、危険指定世界一覧に載ってしまったそうだ。
なんで俺がーという答えにはこの創造の力に適性があるのが俺とあと3人いたがとりあえず一番若い者に話しをということだ。
能力を貸し与えたのは神だと信じてもらうためとも。
楽しい世界にするついでに原因も探ってくれたらうれしいのじゃが・・・ちらっちらっ
とこちらを見てくる。
「そんな危険な場所に妹を連れていけるわけない、無理だな。」
「い、いやそもそも異世界渡航の力がもうあんまり残っていなくてじゃな・・・1人しか連れていけんのじゃ」
お願いじゃぁ頼むのじゃぁ
と腰にしがみついてくるが
「尚更無理だな、妹と離・・・置いていくわけにはいかない。置いていけない。」
何年かかるかもわからないのに異世界に俺が行ってしまえば妹はどうなる。妹がどうにかなるまえに俺がどうにかなってしまうがな!!!
と思っていると
「異世界に行ってる間、こちらの時間は止まっているようなものじゃ。向こうで1年こちらで1日という具合の時間の流れじゃ」
「・・・そうであっても見ず知らずの誰かを助けてあげる余裕なんてないし、義理もない。ましてや異世界の人なんて・・・もちろん助けてあげられることなら助けて上げたいが、俺にそんなこと出来るわけもない」
そういうと神ことコニラ様は少し考えるようなそぶりをして「物で釣るというのはあまり使いたい手ではなかったのじゃが・・・」と言いながらこちらを見てくる。
「お主の妹、目が視えないようじゃな・・・?」
チラっと結衣のほうを見ると妹はウサギを撫でるのをいつの間にかやめていて、心配そうな顔をしこちらに耳を傾けていた。
「そうだな・・・生まれつき視えない。」
そう言われれば、まさかとは思う。そのまさかは予想通りだったようで
「この頼みを受けてくれるのであれば、途中で目を治す薬が手に入るじゃろう。どうじゃ?」
頭が真っ白になる。
妹の目が治る・・・?
なんど妄想したか分からない。妹の目が見えていたら-と。
目が視えなきゃ出来ない事は山ほどある。むしろほとんどがそうだ。
一緒に映画を観に行きたい。水族館に行きたい。動物園に行って鳴き声でもしかしてあれが!と初めて視る動物に目を輝かせて走り回る妹の姿を幻視する。
妹は産まれて一度も外に広がる光景を見たことがないのだ、今食べてる物も、話してる相手もどんな見た目をしているのか。"視る"とはなんなのか。何もわからないのである。
・・・ちょっと自分を見た時どんな反応をされるのか怖くもあるが。
治してあげたい。何度そう思ったことかもう分からない。
料理するときも、なんとなく目にいい具材を選んで調理したものだ、そんなことで治るわけがないのに。
「それは・・・本当か?」
「本当じゃ。【創造】の力をもってすれば治せる物も創れるじゃろう。」
それはすぐに創れるのか!?と声を上げたところで止められる。
「落ち着け、今は無理じゃ。圧倒的にポイントが足りん・・・これぐらいの治癒薬となると2000万ポイントは必要じゃな・・・」
「そう・・・か、そういえばさっきもポイントがどうとか言いながら物を出してたよな・・・タダではないっていうのはそういう事か・・・?」
「察しがいい奴は好きじゃ!このポイントなんじゃが、うちの世界に住む者たちが幸福を感じると溜まるようになっておる。その想いが強ければ強いほど入るポイントも大きい。」
「なるほど、そのポイントで・・・」
「まぁ其方に貸し与えた奴は世界全員から収集できるわけではない。少し劣化しておる・・・といっても能力はこちらと同じじゃが、ポイントは幸福を感じる人達の近場にいないと溜まらん。」
「2000万ポイントっていうのは普通どれぐらいで溜まるのか・・・っていうのも世界全体からとるのと近場でとるのじゃ全然勝手が違うから分からないか・・・」
「まーそうじゃのー、異世界の知識を使って幸福にしたときどの程度ポイントが入るのかも検討がつかんが、1年あれば行けるのではないか?」
1年・・・つまりこちらの世界では1日だけ。そのくらいなら行けるかもしれない・・・やってみるか?
「結衣・・・ちょっと話が「だ、ダメ!!!」
ずっと驚いた用に固まってた結衣だが、俺が話しかけるとハッ我に返り、こちらが話しを切り出す前に断られてしまった。
「ダメだよ、そんなのダメだよお兄ちゃん・・・半分くらいしか話しは分からなかったけど、でもこれだけは分かるよ・・・危険、なんだよね?ただでさえ魔物っていう危険な存在がいる世界なのに渡航者は呪われてもっと危険だなんて、ダメだよ、死んじゃうよ・・・絶対・・・やだよ・・・目なんていいよ・・・」
泣かせてしまった。
泣き言なんて言わず、いつもニコニコ笑顔を振るまってる妹を。
それでも。
それでも俺は目を治して上げたい。
妹の為でもあるが、自分の為というほうが大きいだろう。
「兄ちゃんさ・・・夢だったんだよ。他の人は当たり前に出来てる事だから、友達にはなんだそれって笑われたりしたけどさ。妹と一緒に料理してみたり、ゲームセンターで思うままいろんなゲームをして感想いいあったり。」
「おにい・・・ちゃん・・・」
恋人かっ!とコニラが突っ込みをいれてるがスルーする。
「頼むよ、兄ちゃんの最初で最後のわがままを聞いてくれ。」
「ず、ずるいよ・・・そんなの・・・ずるいよ・・・」
「・・・話しはついたかの?そろそろ行かないと門が開けなくなってしまうのじゃが」
なんと、異世界への入り口は台風の目を軸にして開くという。
「あ、それと【創造】というスキルはその世界には存在しないのじゃ。その世界の人には秘密じゃぞ。」
「分かりました。それじゃ、頼みます」
コニラは頷くと何かをつぶやく。
すると足元に直径50cmくらいの光が溢れてきた。
そこに乗るよう目で促され、そこに乗る。するとコニラもそこに入って来る・・・結構狭い。
「それじゃ、ちょっと行ってくるよ。お好み焼きは・・・ごめん、明日作るから。」
「おにいちゃん・・・」
妹にこんな顔をさせてしまう自分が嫌になるが、大切に思ってくれてるからこそこんなに心配してくれてるんだと嬉しくもある。
「よーしじゃいくのじゃー」
ひと際光が強くなる。
「大丈夫だ結衣、すぐ帰ってくるから待っててくれ。」
「っ!」
結衣の頭に昔大好きだった母親に言われた最後の言葉が思い出される。