第三話 首もとの鮮血
今回はガールズラブ?要素が入ってます。
「少し、話を聞かせてもらおう。」
「は、はひ......。」
そう言って先頭の兵士は、ミネに近づいた。兵士の銘々は頭に兜を被っているせいで顔が見えない。かえってそれは、この状況の緊迫感を増すものであった。
ミネがこの世界で目覚めて一晩が開けた今、ミネは数人の兵士と、対の剣を背中に下げた兵士に囲まれていた。その理由はミネには分からない。
抵抗は出来なかった。相手は多数で、そして武器を持っている。ミネはただ、直立不動でその場で立っているほか無かった。
「突然ではあるが、調査の為だ。そのまま、動かないでくれ。」
先頭の兵士の声は、女の声だった。よく通る声で凛とした雰囲気を感じさせる。ただ、低く重いその声は、ミネを命令から背けさせない。
この状況だからミネは何とも言えないが、やはりこの町の人々は日本語を喋るようだった。だが、恐らく今のミネの頭には恐怖や焦りなどでいっぱいで、本当に立っているだけになっている。
「それでは、失礼する。」
先頭の兵士はミネにまた近づく。兜越しではあるが、顔と顔がくっつきそうになる距離だ。ミネの顔が強ばる。
固唾を飲んで、ミネは何をされるのかと目を閉じかける。兵士はとうとうミネに片手を伸ばすと、ミネの服の襟を掴んだ。
その時、兵士は突然兜を取った。兜の中の顔が現れる。それは、細くしっかりとした目付きでミネを見る、長い黒髪の女性の顔だった。
それを見たミネは一瞬だけ、その美しさに見とれた。彼女の瞳の奥に見える、憂いの片鱗。それが彼女の瞳を揺らしていて、ミネの目を、心を釘付けにしたからだ。
実際、時間が、状況が許すのであればミネはそのまま、彼女の瞳を見続けていたのかもしれない。だがそうはならなかった。
何故なら、兵士は片手で掴んでいた襟を引っ張り、露になったミネの首もとを噛んだからだ。
「ひっ!......。くぁ......ぁ。」
ミネの口から困惑と苦痛の声が漏れる。かなり強く噛まれているようで、首もとからは血が滲んでいる。
赤く、そして光を受けて輝くそれを、彼女は舐めとる。舌を這わすと、それを口の中へと入れてしまった。それを味わうように、口を動かしている。
「ふむ......、なるほどな。」
「......ちょ、ちょ、ちょ、ちょっと、いきなり何をするんですか!?」
ミネは少しの間呆気に取られていたが、正気に戻るとそう言った。いや、目を見開いて動揺している姿から、正気とは言えないが。
それを聞いても、兵士の彼女の方は兜をもう一度被っていて、話を聞いていない。
「クレヴァン、この女性は黒でも白でもない。城まで連れて調査だ。」
先ほど拡声器を持って唯一喋っていた兵士がミネの前に出てくる。その兵士が複数の兵士を呼ぶと、その兵士と共にミネの腕を掴んで連行しようとする。
「な、何でこんなことをするんですか!」
ミネがそういうと拡声器の兵士、クレヴァンという名前だろうか、が兜越しにミネを見る。
「まあ、お嬢さん。あなたは多分何も悪いことはしてませんよ。だけど、今は自分の置かれている状況を確認した方がいい。」
クレヴァンの声は男のように低い声だった。爽やかな、というより渋い、といった方が合っている。
ミネはその声で言われた通り、辺りを今一度見渡した。囲まれているのは、剣を持った兵士が百人以上と、未だ土下座をしている町の人々だ。
ミネは恐らく気づいた。今は何も発言することは出来ないことに。ミネ自身に覚えがないことであっても、今は何もすることが出来ないのだ。
「......察しが良くて、助かるよ。」
ミネはそのまま、兵士たちに連れ去られた。兵士たちは先ほど通りに行進を始める。その行進は、町の真ん中、城の方へと進んでいった。
一話ごとの文字数は安定してません。色々とありますがご了承ください。