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第一話 衝撃的目覚め

第一話です。楽しんでくれると嬉しいです。

ある町の交差点で、二台の車が煙を上げて他の車を立ち往生させていた。助けを呼ぶ声や悲鳴が起こり、混沌と化したその場所の真ん中。一台の車の中で、一人の少年が倒れている。彼の足は潰れた車体によって砕け、出血も甚だしかった。だが、少年は意識を保っていた。必死に何かに向けて声をかけていたのだ。彼が叫ぶ先には、中年の男がいる。彼の父親だ。


「父さん! しっかりしてよ! 父さん!!」


少年が叫ぶが、父親の方はそれに応答しない。父親は、少年よりも痛く激しい損傷をしていて、その身体には多量の血が溢れていた。呼吸をしようとしているが、その度に口から血を吐き出している。もう長くはなかった。


「父さん...、やだよ、死なないで...。」


少年が息も絶え絶えになり、とうとう掠れ声しか出せなくなったころ、周りの喧騒が一際大きくなる。動けない少年は辺りを見ることしかできず、恐怖でひたすらに顔を動かしていた。

その時、父親が身体を動かした。前方の運転席から、少年のいる後部座席まで行こうとしている。目は虚ろで動きものろかったが、父親はたどり着くと、しっかりと少年を抱き締めた。


「と、父さん...?」


「生きろ、お前は俺が助ける。峰次(みねつぐ)


か細い声で父親はそう告げると、頭を守るように少年を抱え込んだ。血が少年を濡らすが、少年は一瞬だけ、安心からか顔を綻ばせた。


そして、その時から一秒たたずに峰次の乗っていた車体は爆発した。





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木製の小屋の中、柔らかい生地のベッドの上で私は目を覚ました。よほどの怖い夢を見たのか、布団をめくり上半身を勢いよく起き上がらせていた。息も上がり、その顔には汗が滲んでいる。何故か額に乗っていた濡れタオルが落ちると、それを使って汗を拭いた。それが終わるともう汗は出てこず、息も落ち着いていた。手を額にあてて、私は深呼吸をする。

この小屋は、見識のない場所だった。分かることと言えば、写真でみた寒帯の地域のような内装だ、ということだけ。暖炉が付いてあることから、この辺りは寒い気候なのかもしれない。もしくは、日本でいう冬だ。

そういえば、私も自分の知らない暖かい毛の服を着ていると気づいたとき、ベッドの向かい側の扉が開いた。この部屋は特に装飾も無く、しかも私が向いている方向の真っ正面であるからその人がよく見えた。

入って来たのは柔らかな白紫のワンピースを着た白髪の老婆だった。手には水とタオルが入った桶に取ってが付いたようなものと、パンが乗っている皿を持っている。柔らかな表情を纏い、私を見ると安心の笑みを浮かべた。エメラルドの瞳や、しわがあるが白く綺麗な肌には関係なく、彼女の優しげな内面が出ているように見えた。私には見慣れない、日本人ではない目の色や肌の色に少しだけ表情が堅くなった。


「目が覚めたのね。けど、まだ病み上がりでしょうから、寝ていて頂戴。タオルを取り替えるわ。」


老婆は私が寝ているベッドの近くのチェアに腰を下ろすと、私を寝かせて、同時にタオルも持っていった。そして、桶に入れていた方のタオルを絞り、私の額に乗せる。冷たくなったタオルに少しビックリする反応をしたが、すぐに慣れてしまった。私はまだ少し熱があった。

恐らく熱を出した私を介抱したのはこの老婆だろう。頭にタオルを乗せてくれたのも、全て。


「私の名前は、ラベン・デ。まだ状況が分からないでしょうけど、あなたが森で倒れていたのを私の娘が見つけて、ここまで運んだのよ。すごい熱を出していたから心配したけど、大丈夫みたいね。良かったわ。」


流暢な日本語を話すラベンは、見た目からして意外なもので少し違和感を感じる。だが、今は頷き返すことしかできない。頭がボーッとしているのか、どこか意識も遠くの方にあるように思える。


「うなされているようだったけど、熱ももうすぐ治まるでしょうし、安心して。良くなるまで看病するから。」


ラベンが優しく微笑みかける。その一言で私は堅くなった表情を綻ばせ、目を閉じた。安心と、そして熱での疲労から眠くなったのだ。身体を揺らして自分の睡眠ポジションを取ると、眠りに入る。ラベンもそれを見ると、パンを近くの小さめなデスクに置くと退出しようとする。

だが、突然私は起き上がる。夢から目覚めた時のように激しく。そして、何やら布団の中でモゾモゾしている。


「ど、どうしたの!? どこか痛いの?」


ラベンが心配して駆け寄ると、私は目を見開いて驚愕の表情を浮かべた。ラベンはなにがなんだかわからず、とりあえず私の背中を擦っている。


「大丈夫? 何か言って頂戴。じゃなきゃ、分からないわ。」


「......、この身体、私のじゃない。」


私は声を発した。その言葉の意味は、ラベンにとっては意味が分からないものだったが、私にとってはとても大きな衝撃的な事実だった。


「足が、足が動くんだよ。事故の後から全く機能しなかった足が動くんだ。」


誤字脱字は脳内変換して頂くか、もしくは感想などでご指摘頂けるのと助かります。ぜひよろしくお願いいたします。

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