昇る太陽沈む太陽
思わぬ明るさにパチと目が覚める。
ソファの上で寝てしまったようだ。カーテンが閉まっていない窓から赤やオレンジの光がチラチラと入り込んでいる。
明朝なのか黄昏なのか、どちらとも言えない。それにどういうわけか寝る前の記憶が思い出せないから、なおさらどちらとも言えない。
僕は咄嗟に時間を確認した。
壁にかかっているアナログ時計は六時を指していた。
せっかく時計を見たのに午前か午後かわからない針の時計ではいつなのか本当にわからない。
クソ、今何時なんだ。
体をソファに横たわらせたまま頭の中で毒づいた。
そして、同時に思い出した。
ソファで寝ていたということは、ソファの前に置いてある机の上にスマホがあるはずだ。今度は机の上をみた。
スマホがない…。
なぜだ。僕は典型的なスマホ中毒者だぞ、寝るときだって側に置いておくのに。
ますます、訳がわからなくなってきた。時間もわからないし、さっきまで何をやっていたかもわからない。ぐるぐると疑問が渦を巻いている。
今度は起き上がってみる。
いつもと見慣れぬ僕の部屋だ。
他に時計はあったかな。
見える範囲に時計はなかった。
気がつけば窓から入り込む赤やオレンジの光はさっきよりも強くなっているようだ。今がピークかもしれない。
僕はソファの上で長座の格好をして良く冷静になって寝る前の行動を思い出そうとした。しかし、なにも思い出せない。そう思うと、なぜかいっそう焦って余計考えられなくなっていく。
そうだ、スマホはどうしたかな。
僕は時間のことはおいといてスマホを探すためにソファから立ち上がった。
いつもだったらズボンのポケットに入れて持ち歩いているか、側においておくのに。
コンロと冷蔵庫と電子レンジが置いてあるだけの使われていないキッチンにはスマホはなかった。リビングの隣の六畳間にはタンスがあるだけで、寝る前に使ったとは思えなかった。なんとなく、外出はしていないと思ったのだ。うちはトイレとお風呂が同じひとつの部屋だ。もしかしたら寝る前にトイレに行っているかもしれないと思った。しかし、そこにもスマホはなかった。一応、ベランダだって見た。
どういうことだ…。
家の中のどこにもスマホがない。
しかもデジタル時計もないだなんて。
ますます、時間がわからないじゃないか。
一度、ソファに戻って気持ちを落ち着かせるために座った。
ふと、壁にかかっているアナログ時計に目がいった。
えっ!
どういうことだ。
時計の針が、いや時間の進みが明らかにおかしいのだ。僕は家中をスマホを探しながら歩き回ったのだ。普通に考えて十五分くらいは経っているはず。なのに時計の針は六時三分を指していた。
なぜだ。
僕のさっきの行動が三分で終わるものだとは思えない。
時計を見てみても決して秒針がゆっくり動いているわけでない。だが、時間がゆっくりになっている、そう感じたのだ。
窓から入り込んでくる光は相変わらず赤やオレンジだ。とてもきれいでずっと見ていたくなるような、この世の人工物では作ることのできない光。
僕はその時、今が午前なのか午後なのかわかった気がした。
その時、僕の心は考えることをやめどうでもよくなっていた。フワフワしたような感覚が胃のあたりにいる。
どれくらい、ボケッとしていただろうか。
時間は信用できないからわからない。また、だんだん眠くなってきた。
たぶん 寝たら また やり直し だな。
そして、彼は時の流れの中にまた連れていかれる。
読んでいただきありがとうございました。




