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金魚は海では泳げない (2)

今日は転校生が来るらしい。期末試験も終わりもうみんな夏休みが待ち遠しくて仕方ない、そんな時期に転校生なんて珍しいもんだ。

男か女かも知らない。知る気もなければ興味も無かった。


先生ががらがらとドアを開けて汗をだらだらとたらしながら教室に入ってくる。うちのクラスの担任、中谷はデブハゲメガネの三拍子揃った優しいおっさん。夏は滝のように汗を流し、冬は女子のように服を着込む。暑がりで寒がりなんだろう。



「話したとおり、今日は転校生がくるぞー」



中谷が発した言葉を訊いて皆思い出したかのようにちらほらと転校生を気にする声が聞こえてきた。中谷曰く男らしい。尚更どうでも良くなった。俺はかわいい女の子にしか興味が無い。


入ってきていいぞーと言う中谷の言葉でドアががらがらと開き皆が一斉に注目する。



入ってきたのは男とは思えないような綺麗な人だった。


女子の黄色い声が教室に響き渡る。



和田でも大分イケメンだと思っているがそれよりも整った顔立ちだった。髪色も黒とは違い少し明るい色で瞳の色も海の色そのものと言っていいほど青く澄み渡っているのでハーフと見た。



「はじめまして、雨宮 律です。日本に久々に来たので知らないことばかりですがよろしくおねがいします」


雨宮はちょこんとお辞儀をしてにっこり微笑んだ。


“日本に久々に来た”ということはやはりハーフなのだと確信した。でもまあ俺はかわいい女の子にしか興味が無いのでこれからこいつと絡むことなんてないだろう。


視線を再びプールの方に目をやる。すると水着ではなく体操着姿1人の女がこちらをずっと見ている。


昔から視力だけは無駄にいい。ここが2階でプールのある場所が校舎から少し離れたとこにあるのにも関わらずこの生まれつきいい目を持っていのですぐに誰だか分かった。運動ができない分神様は俺に頭脳と視力を与えてくれたのだろう。



「あれ、花澤だな」



花澤は同学年の女子生徒だ。入学してまだ3ヶ月くらいのころ俺が中庭でスケッチをしているとこに花澤が来て絵を見るなり美術部に入れだのなんだのと言われ続けている。そう、学年が上がった今も。


顔は可もなく不可もなく。中の上くらい。和田情報ではおしとやかで優しいから地味系男子に人気らしいが、俺の知っている花澤はいいにおいがするだけの気が強い女だ。だから俺はおしとやかに振る舞う花澤の姿が想像できない。


雨宮の自己紹介がおわったのか教室がすこし静かになった。しかしすぐにまたうるさくなる。次は雨宮をどこの席にするかで騒いでいるのだ。どこにするもなに隣の席が空いてるのは一番後ろの列の窓から2番目の席、つまりは俺の横だけだ。俺はかわいい女の子にしか興味がない。



「空いてんだから俺の隣、くればいーじゃん」



雨宮に向けられた黄色い声を聞くのが鬱陶しくなったのだろうか、口が勝手に動いた。すると雨宮がこっちに笑顔で向かってきた。



「よろしくね、プールサイド覗き魔さん」


「なっ……!」



雨宮が隣に座るなり俺に小声で言ってきた。いやなやつだ。

こいつ、ずっと俺のこと見てたのか?変なやつを隣にしてしまった。

雨宮はにっこり笑って再びよろしくと挨拶をした。口角をあげ微笑んでいるが澄み渡った青い瞳の奥は決して笑ってはいなかった。


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