1章-4「運命の出会い 後」
よろしくお願いします。
会場は多くの人で溢れ返っていた。
煌びやかに着飾った女性陣
主役の登場を今か今かと待ちわびる男性陣
その中で、その場にいる女性陣の注目を一際集める一角がある。
多くの女性が視線を送るその先には、白の礼服に身を包んだ金髪の美青年と
黒い礼服に身を包んだ黒髪の青年?少年がいた。
「なぁ・・・ちょっと視線が痛いんだけど。。。」
黒の少年はこういった場には縁が無く、今回が社交界デビューの様で
周りの視線をいたく気にしながら、隣に立つ青年に愚痴をこぼしていた。
「我慢しろ。僕もあまりなれてはいないんだから、、、。」
「トーマスはこっちに来てからあっちこっち行ってたじゃないか!
本当は今日だって、トーマスだけくればよかったのに。。。」
「慣れるもんじゃないんだよ!それに、いつも逃げてたけど本当はハルだって今まで参加しなくちゃいけなかったんだ。今まで大目に見ていたんだから、今日はおとなしく諦めろっ。」
そう言って二人が話していると、遠くから二人を目で追っていた女性陣の中から
一人の女性が勢いよく飛び出し
金髪の美青年もといトーマスの元に寄ってきて、スカートをちょいと摘み
「ごきげんよう。ロイド様」
「はじめまして。ジュリアと申します。ロイド様、こちらの方をご紹介していただいてもよろしいですか?」
と優雅に挨拶をしてきたので、二人も話をそこそこに切り上げ
女性に向け挨拶を返した。
「ごきげんようジュリアさん、今日は一段と綺麗ですね」
「彼は僕の・{はじめまして。ハルと言います。よろしく。}・・・}
あまりにぶっきらぼうなハルの返答にトーマスは何か言いかけるが
ふとジュリアを見ると、何が面白かったのか口元が少しニヤけていたので
特に何も言わずハルの脇を軽く小突くだけにしておいた。
それからジュリアは、今がチャンスとばかりにトーマスにアピールを始めたので
邪魔者は消えようとばかりに、少し困った顔をしているトーマスをジュリアに渡しハルはその場から逃げ一人テラスに向かう。
・・・トーマスが恨めしそうな目でこちらを追っていたが気づかぬふりをして。。
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作った笑顔で来客に挨拶を回る。
・・・早く終わらせて部屋に戻りたい・・・
そんな事を思いながら私は、順に来る誰かもわからない
覚える気もない方とのくだらない世間話をする。
話も早々に切り上げ次の方は?と次の方に視線を向けると
「やぁ。今日も変わらずとても綺麗だね」
ニヤニヤとした気色の悪い笑顔を浮かべながら近づいてくるファヴィオ。
「本日はご多忙でしょうに、、、わざわざお越しいただき、有難うございます。」
「いえいえ、あなたの為ならどんな事があったとしてもすべて後回しにしますよ。それにしても、ますますお綺麗になられて・・・許嫁!の私としても鼻が高いですよ。」
「あら、それはまだお受けしてませんし家の都合で結婚する気は私にはありませんよ。」
「それは存じてますよ?なのでこうやって事あるごとに貴方の心をこちらに向かせる為に足を向けているのです。」
私の嫌味もこの男の前には意味がなく、そう言ったファヴィオは私の腰に手を回してくる。
・・・どうにか逃げたい・・・
・・・けれど、大勢の目がある中で・・・
{そんなに嫌なら助けてやろうか?}
ーそれは突然、私の頭の中で聞こえたー
驚いた私は周りを見渡してみる。
{助けてやろうか?ど~すんだ?}
再度聞こえてきた声に私は心の中で答えた。
((助けて))
そう言ってから、私の身に何があったのかはわからない。
分かったのは、会場の明かりが消え誰かが私の体を抱き上げて・・・
そこからは一瞬で私は会場の外、中庭にいた。
「よっぽどあの男が嫌いなんだな まぁあ~いった場所自体があまり好きじゃないみたいだけどね」
「・・・誰???」
私の問いかけにその方は少し微笑みながら
「助けてもらっておいて一言目にそれは無いんじゃない?助けてって言ったのはキミでしょ。」
「あっ・・・有難うございます。助かりました。。。」
「よろしい。ではお嬢さんを降ろして差し上げますか。」
「えっ・・・!!あっ。。」
そう。私は今その方に所謂お姫様だっこをされている訳で、、、
それに遅ればせながら気づいた私は顔が真っ赤に染まる。
それが面白かったのか、その方は笑いながら
「俺の名前はハル。よろしくね。ジーナスさん。そんなに照れなくても全然重くなかったから大丈夫だよ」
その台詞にさらに頬が熱くなる。。。
・・・なんてデリカシーの無い人でしょう・・・
そう思い頬でもひっぱたいてやろうと思った私は、伏せていた目線をハルに向ける。
ー手は出かかっていたの。けど、彼の顔を見た瞬間に私の手は止まってしまった。。。なぜなら、そこにいた笑みを浮かべる男の顔は私が夢によく見ていた
男の顔だったのだから。ー
そこからは、あまり何を話したのか覚えていない。
けれど決して長い時間では無かったと思う。
覚えているのは彼は良くはわからないけれど、人の心の声が聞けるらしい事。
そして、そろそろ抜けだそうかと考えていたら、私の心の声が聞こえたと。
普通は知らんぷりだけど、すごく可愛かったから特別に助けてあげたと。
・・・ここで私はまた顔が赤くなるんだけど、今度はばれなかった。・・・
そして、私を探しに来た使用人たちが私を中庭で見つけると彼は一瞬で夜の闇の中に消えてしまった。
(これが恋かなんて私にはわからない。)
(だけど、夢に出てくる彼がそうなら)
(私にとっては彼が運命の相手)
屋敷は私が居なくなった事でかなりの騒ぎになり、パーティーはお開き。
無事で良かったと使用人達は口々にそう言い、父も心配していたけど
私はそれどころではなかった。
今の私の胸にある思いは一つ。
・・・もう一度。彼に会いたい・・・
有難うございました。