プロ顔負けの実力
速くも勝ちを確信したかのような態度と表情の殺。
その自信を裏付ける2枚が今、ゆっくりと公開される。
「パラダイムシフトと兵器開発をストックゾーンへ。そして、兵器開発を使用」
立て続けにサーチ能力のあるカードを使用宣言。
対し、優たちはカウンターの使用をパスし、様子を見る。
殺は再び山札からカードを選び取り、公開。
その瞬間、優たちに緊張が走る。
焦る二人の顔を見て、殺は笑うでもなく、ただ溜息を吐いた。
「……残念ね。この程度でその狼狽えよう。もう終わりかしら?」
落胆する彼女の手元にある、今サーチしたばかりの1枚。
カード名は悪徳中の悪徳。
味方レプリカに装備させて使う、ウェポンという種類のカード。
プラチナカード特有の光沢の中、暗い紫色のオーブを持つ男が描かれている。
そして、その効果は……今回の優たちのデッキにとって、天敵と言うべき最悪のもの!
だが、だからと言って、ここで勝負を投げ出す二人ではない。
ターンを得た優が、闘志を滾らせ殺を睨みつける!
「……それだけで勝ったつもりか? どんなに強いカードでも、止めてしまえば無意味だ。そして、オレはそのためのカウンターカードを引きにいく。ヒメカゼスズメを召喚」
優が場に出したそのカードに対し、殺は打ち消す素振りを見せなかった。
無事に召喚が成功し、効果により山札の一番上のカードが公開される。
それが魔力3以下のカードなら手札に加わり、4以上なら捨て札へ置く。
結果は……。
「……どうやら賭けに勝ったようだな」
勝利の笑みを浮かべ、優はそのカードを手札に加えた。
カード名はパラダイムシフト。
魔力0で相手のウィズダムを打ち消せるカウンターカード。
今一番欲しかった1枚……大当たりだ!
そしてさらに、優の追撃は終わらない。
「続いて水鳥を召喚。どうする? 通るならもう1枚、パラダイムシフトが手札に加わるが?」
「……安心したわ。このまま無抵抗で負けてゆく姿なんて、見たくなかったから。いいわよ、召喚なさい」
優の宣言が通り、水鳥の効果により山札から水のサポートカードをサーチできる。
これにより2枚目のパラダイムシフトを手札に加え、準備万端。
続いて殺のターン。
彼女は余裕の表情で、前のターンにサーチしたシヴァルリーを場に出した。
「さあ、どうするつもり? せっかくのカウンターカードの枚数アドバンテージが覆るわよ?」
「させると思うか?」
優は即座にパラダイムシフトを使用。
当然だ。シヴァルリーは、消費魔力0で水のサポートを打ち消すオネスティというカードを、2枚もトークンとして加わる効果。
これを通しては一気にカウンターの駆け引きが不利になる。
よって、直後再び使用宣言された2枚目のシヴァルリーに対しても、間髪入れずに優はパラダイムシフトで打ち消した。
無事に乗り切ったかに見えたカウンターの攻防。
しかし……。
「悪いけど、想定内よ」
そう言って殺はストックゾーンから聡明の象徴アクアマリンを場に出した!
苦虫を噛み潰したような表情を浮かべる優たち。
それもそのはず。彼らには、現状そのカードを止める術がない。
アクアマリンはソーサリージュエルという種類のカード。
ウィズダムを狙って打ち消せるパラダイムシフトのように、その対策となるカードがあるにはある。
しかし、その採用率は低い。
なぜなら、ソーサリージュエルの出番が往々にして局所的だからである。
それらは設置という効果を持ち、初期手札の代わりとしてストックゾーンに置いてゲーム開始できるため、潤滑油として便利ではある。
しかし、効果に一貫したまとまりはないため、一部を選んで使用することになる。
結果、デッキ全体で見れば活躍の幅は狭く、わざわざ対策する人も少ない。
他に、水のサポートを魔力0で打ち消せるオネスティというカードもあるが、特定のカードへの対策に絞りすぎたため今回の二人のデッキには入っていない。
こうした事情で、殺の宣言は通ってしまう。
効果によって山札から選ばれた2枚。
公開されたそれらは、どちらもリアリティーというカード。
そしてさらに、殺は再度アクアマリンによりリアリティーを2枚サーチ!
計4枚のリアリティーが彼女の手札に加わった。
絶望的な状況下で神のターンが回ってくる。
彼は悪徳中の悪徳を打ち消すことを諦め、次の対策を打つべく邪教の会合で死の救済の教祖と死の救済の側近をサーチし、ターンエンド。
苦渋の決断。
険しい表情。
そんな彼らに、容赦ない一撃が浴びせられる!
「悪徳中の悪徳を使用。さあ、足掻いて見せなさい」
3ターン目にして速くも場に出た殺の切り札。
対し、神は無駄とわかっていながらも手札のサボタージュで対抗。
しかし、やはりそれは通らない。
殺はリアリティーを自身の悪徳中の悪徳に使用し、打ち消されない効果を付与。
これに対しさらに上からカウンターで打ち消すことは処理順的に可能だが、何しろ彼女の手札にはリアリティーが後3枚。
ここの打ち消し合いは到底敵うわけもなく、殺の宣言が通ってしまう。
これにより場のレプリカは全滅し、さらに各プレイヤーのライフがプラス6される。
速攻を主軸とした優たちは一気に不利な状況に立たされてしまった。
苦し紛れに再度レプリカを展開する優。
それらに死の救済の教祖でキラーを付与する神。
しかし、それを嘲笑うかのように、殺はプロ級のプレイングで捌く。
「カームカウンセラーを召喚。山札からウィズダムをサーチ。そして、悪徳中の悪徳をカームカウンセラーに装備。ただし、パワーとライフはプラスしないわ」
「くっ……!」
顔を顰める優。
予想はしていた手だが、あまりにも痛烈。
殺の狙いは悪徳中の悪徳を使い回すことにある。
とするならば、ライフをプラスして強化するよりも、さっさと倒れて再使用するのが得策。
優たちもそれをわかって、あえて攻撃せずにレプリカだけ並べてターンを終了。
カームカウンセラーは自ら攻撃できないため、放置して準備が整ってから一気に総攻撃で沈める作戦だ。
並みのプレイヤー相手なら、この戦略で突破できたであろう。
しかし、二人の目の前にいるのは、そんな生半可な手合いではない!
今、優たちが選んだ苦肉の策は、音もなく崩れ去る!!
「甘いのよ! エマージェンシーを使用!」
「っ!?」
なんと、選択されたカームカウンセラーが悪徳中の悪徳ごと手札へ戻ってゆく!
ついでとばかりに兵器開発も回収され、再び悪徳中の悪徳を使用される!
全滅し続ける場。
どんどん増えてゆくライフ。
倒しても放置しても回収される切り札。
そして、息切れした頃に攻撃を開始される。
悪徳中の悪徳の攻撃時効果により、手札もどんどん捨て札へ置かれてゆく。
その効果は殺自身にも降りかかるが、用意周到とばかりに捨て札からも使えるリバースカードや、バトル開始時からストックゾーンにあるアイテムカードによってほぼ無傷。
こうして、じわじわと追い詰められ、逆転の機会もなく二人は敗北した。
【デッキ紹介】
デッキ名:フィッシュ&チキン
タイプ:速攻
使用者:優&神
【デッキ内容】
デッキ1
ツインバード:4枚
ヒメカゼスズメ:4枚
ワイズパロット:4枚
水鳥:4枚
天界の魚:4枚
スカイマンタ:4枚
カイトフィッシュ:4枚
ウィンドフィッシュ:4枚
ウェーブフィッシュ:4枚
ブルータルグース:4枚
鳥類愛護団の祖:4枚
魚群の指揮官:4枚
風乗り:3枚
コンフュージョン:4枚
パラダイムシフト:4枚
超魔術ファルコン・リバース:1枚
デッキ2
ワイズパロット:4枚
ウィンドフィッシュ:4枚
天界の魚:4枚
スカイダンデライオン:4枚
カームカウンセラー:4枚
ヘヴンズネクタリン:4枚
鳥類愛護団の祖:4枚
魚群の指揮官:4枚
死の救済の教祖:2枚
死の救済の側近:2枚
邪教の会合:4枚
コール:4枚
ディレイ:4枚
コンフュージョン:4枚
パラダイムシフト:4枚
サボタージュ:4枚
【解説】
優がメインで攻撃を仕掛け、神がバックアップするタッグ用デッキ。
並べた低コストレプリカを全体強化し、倒れた味方は一斉に蘇生!
キラーを付与し強力な壁を突破し、全体ダメージには打ち消しでピンポイントに対抗しよう。
【デッキ紹介】
デッキ名:無題
タイプ:長期戦
使用者:殺
【デッキ内容】
デッキ1
忍耐の象徴ジェイド:2枚
ソーダ味の魔法石:4枚
カームカウンセラー:4枚
ノーヴィスメイジ:4枚
水鳥:4枚
幼きエスパー:4枚
ワイズパロット:4枚
死の救済の側近:2枚
邪教の会合:1枚
コンフュージョン:4枚
パラダイムシフト:4枚
ディレイ:4枚
シヴァルリー:4枚
エマージェンシー:4枚
カーム:4枚
兵器開発:1枚
悪徳中の悪徳:1枚
超魔術リザレクト・リライト:4枚
超魔術インサニティー・リバース:1枚
デッキ2
ワイズパロット:4枚
聡明の象徴アクアマリン:4枚
呪文の習得:4枚
カーム:4枚
コール:4枚
コンフュージョン:4枚
シヴァルリー:4枚
パラダイムシフト:4枚
サイレンス:4枚
オネスティ:4枚
ディレイ:4枚
狂気:4枚
リアリティー:4枚
超魔術コンフュージョン・リライト:3枚
超魔術リザレクト・リライト:4枚
転生:1枚
【解説】
魔力を一気にブーストし、3ターン目にいきなり切り札を叩きつけ、有無を言わさず長期戦に引きずり込むデッキ。
絶対に悪徳中の悪徳を通すため、念入りにカウンターを用意しよう。
一度打った後は、回収してどんどん自分のペースへ持ち込めるので、上手く戦況をコントロールして勝ちきるべし!