主役不在の宴
【注意!】
ここから先の話は、修正する可能性が高いです。
(ストーリーは変更しません)
これまでの分の推敲を終えてから書き始める予定でしたが、自らの更新頻度の低さを省みて、急遽、続きを書くことにしました。
なので、準備が不十分な点もございます。
それでもよろしい方は、第二章【まやかしの涅槃】をどうぞお楽しみください。
事態の収拾もつかぬまま、夜を迎えた。
後夜祭の会場は騒がしく、取材に来ていた新聞記者は苛立ちを露わにしている。
ウィザーズウォーゲームの社長と社員は応対に必死。
そんな中、周りから閉ざされたかのように静まり返ったテーブルが一つ。
そこに、暗い面持ちの花織と轟が俯いて座っている。
しばらくして、そこへ神がやって来た。
「いやあ、お待たせ。長引いてしまってね。敗者インタビューなんて勘弁してほしいよね、ほんと」
「……」
「それで、優君のことだよね? 悪かったと思ってるよ。翔さんにもこっ酷く叱られてね。君は心が読めるのに、人の気持ちは全然理解してないって言われちゃったよ」
その戯けたような話し方に、轟は反感を覚えギロリと睨んだ。
「お前、本当に反省してんのか?」
「ごめんごめん。本当に悪いと思ってるよ。だから僕も考えたさ。お詫びに優君は連れて帰るから、絶対」
そう言って花織に視線を向けるも、顔を合わせる気配はない。
流れる沈黙。重たい空気。
数秒後……。
「……優さんは、これ以上私に付き纏われるのが迷惑なんじゃないですか?」
ようやく返事が返された。
その声は淀んでおり、静かで、暗く……重々しく……ある種の恐ろしさすら感じる。
その迫力に、思わず轟でさえ怯む程。
しかし、神はそれに気圧されることなく、間髪入れずに否定する。
「違うよ! 優君は、君たちならもう大丈夫だと、そう思ったから離れたんだ。そこにネガティブな意味合いは決してないよ! だから、安心して僕に任せて! ね?」
「……」
「それじゃ、早速だけど僕は彼を追うよ。待っててね」
そう告げるや否や、神は会場を出て行った。
しばらくして、轟は立ち上がり、窓際へ行くと……。
「頼むぞ。オレじゃどうにもなんねえんだ。絶対連れて帰って来い! あいつじゃなきゃ、ダメなんだよ……」
そう呟いた。
一方その頃。
某所にて、不快に笑う声が響いていた。
「楽しみだなあ。どう壊してやろうかな? なあ、アヤメ」
「あなたに任せる。そういうの得意でしょ? キョウ」
「ああ。最高のショーにしてやるよ。まずは……神をここへ招こう。たった今入ったばっかりの情報によれば、優を探す旅に出たとこらしいからな」
再度、気色の悪い笑い声が響く。
その横で、アヤメと呼ばれた女性は憎悪に顔を歪ませており……。
「本当に憎い。絶対に許さない……!」
そう呟き、唇を噛みしめた。
――数日後。
招待状を受け取った神は、某都道府県の廃墟を訪れていた。
広い屋内を探索し、数分後……。
「やあ、待ってたよ」
突如、上から届いた声。
見上げると吹き抜けになっており、そこから四名の影が神を見つめている。
その中のリーダー格が名刺を取り出し、投げ飛ばす。
シュルシュルと回転しながら向かってくるそれを、神は二本の指で挟んでキャッチ。
そこには……ニルヴァーナ代表者との肩書きと、裏には真っ赤な文字で凶と書かれていた。
「……前に、優君と一緒にいた人だよね?」
「ああ。その通りだ。凶と呼んでくれ。そしてこいつらが、戮、暴、殺だ」
そう告げると、後ろの壁をスクリーン代わりにそれぞれの名が表示される。
映像はさらに切り替わり、とある人物が嘆き悲しみ、怒り狂う様子を映し出す。
それを愉快そうに眺め、笑う凶。
「どうだい? 素晴らしいだろう? なんて芸術的なんだろう。この人は知ってるよね? 優が壊れた後、一瞬だけ世界一の天才ゲーマーとして輝きを見せた、真だよ。涅槃の境地なんて偉そうな肩書きを名乗っちゃってさ。だから、壊したついでにオレが貰ってやった」
堂々とした悪事の自慢。
その横で殺は憎悪と殺意を募らせている。
残りの二人はニヤニヤと笑うだけ。
そして、一頻り笑い終えると……。
「さて、それじゃ本題に入ろうか。実はな、オレたちは優がどこにいるのか知っている」
そう、話を切り出した。
その瞬間、神の表情が変わる。
「何っ!? 優君に何をする気だ!」
「まあ、落ち着け。オレたちは親切心で会わせてやろうとしてるだけさ。ただし、条件が一つある。今からオレたちとバトルして勝ったら、どこにいるか教えてやるよ。もちろん、ハンデはもらうぜ? 4対1で戦ってもらう。お前はデッキを4つ使え。それと……オレたちはデッキをシャッフルしない」
「何だと!? ふざけているのか? カードゲームは毎ターン何を引くかランダムだから成立しているんだ。それを根底から覆すような、そんなルール……」
「嫌ならいいんだぜ? そしたら、オレたちも教えないだけだ。なあに、天才ゲーマー様にはこれくらい余裕だろう? こっちはド素人がちょっと引き運がよくなるだけだ。そんなの、何戦かに一回はあるだろう?」
とんでもない詭弁を平然と口にする凶。
顔を顰める神へと、さらに脅しをかける。
「いいのかな? 優なら自分で見つけられるからいいと、暢気なこと考えてないよな? 何でオレたちが居場所を知ってるのか、よーく考えることだ」
そう揺さぶり、苦悶の表情を浮かべる神を見て愉悦に浸る凶。
数秒後……。
「……わかった。その条件で勝てばいいんだね? 乗った。約束は守ってもらうよ」
真剣な目つきで神は宣戦布告した。
それを受け、凶はこの上なく嫌らしく笑い……。
「ああ。オレが約束を破るような奴に見えるか?」
心にもないことを、然も当然かのように口にした……。




