辿り着いた答え
決勝戦当日の午前。
優は花織たちへと連絡を取り、カードショップに顔を出した。
久々に会う三人。
優は開口一番……。
「悪かったな、心配かけて。それと……あの日、酷いことを言った」
と、準決勝でのことを謝罪した。
対し、花織は満面の笑みを返す。
「いいえ、気にしないでください。誰でも余裕のない時はありますよ。それより、優さんが元気を取り戻せて、本当によかったです!」
「ああ、もう心配ない」
そう応えた優の表情は、いつになく爽やか。
それを見た轟も安心し……。
「まあ、許すとするか。……いい勝負、見せてくれるんだろ?」
応援は任せろとばかりに、頼もしい笑みを見せた。
それに呼応するように、優は力強く頷く。
「ああ。必ず勝つとは言えないが、前みたいなことにはならない。……絶対にしない!」
「そうか、じゃあ頑張れよ!」
轟が拳を突き出し、エールを送る。
そして、花織も……。
「私は優さんが勝つと信じてます! ですが、万が一負けても失望したりはしません。キョウさんと私たちは違います! どんな戦いであっても、優さんが一生懸命戦った結果ですから!」
と、優の不安を吹き飛ばすような、温かい声援と共に送り出す。
優はとても穏やかな表情で……。
「ああ。それじゃ、行ってくる」
そう告げて、この場を後にした。
――そして、午後。
歓声が湧く会場。
その中心に立つ、優と神。
ルールは事前に通達済み。
三本勝負で、先に二勝した側の勝利。
改めてそれがアナウンスで説明され、全ての準備が整った!
いよいよ始まる決勝戦!!
テーブルへと向かう二人。
対面するや否や、神が口を開く。
「その様子なら問題なさそうだね。やっぱり思った通りだ」
「……やっぱり?」
「うん。昨夜、あの後の心音をずっと聞いてたんだ。優君は知ってる? 不安と高揚とでは、同じく心拍数が上がるけど全然響きが違うんだ。温かみがあったよ、君の音には……」
「温かみ、か……。確かに、こんな気持ち初めてかもしれない。きっと、素晴らしい勝負になるな」
「……!」
神は目を見開いた。
なぜなら、それは思ってもいなかった言葉だったから。
彼の表情が希望に満ちてゆく……!!
「うん! お互い楽しもう!」
決勝戦とは思えない程の、穏やかな挨拶と共にいざ開幕!!
デッキをシャッフルし、山札の位置に置く二人。
神の先攻となり、1ターン目。
「シヴァルリーを使用」
いきなりアドバンテージを握りに行く神。
しかし、次の瞬間……!
「カウンター発動。パラダイムシフト」
優の妨害によって、その目論見は失敗に終わった。
その結果に驚く神。
その様子を見た優が、ふっ……と穏やかに笑う。
「どうやら、今のオレの心は読めないらしいな」
「うん……。もう全然わからないよ」
そう応えたのとは裏腹に、神はとてもうれしそうに笑っていた。
続いて、優の1ターン目。
彼は水の魔力をチャージし、ストックゾーンへと手を伸ばした……。
「ソーダ味の魔法石を使用」
その宣言は無事通り、効果により山札からパラダイムシフトをサーチ。
そしてターンエンド。
迎えた神の2ターン目。
彼がチャージしたのも水の魔力。
そして、幼きエスパーを召喚。
こちらも準備を整える。
こうして、両者一歩も退かないやり取りが続き、迎えた神の5ターン目。
彼は既に魔力を支払い済みの超魔術テンペスト・リザーヴを発動した!
あの時と同じ展開。
しかし、今は違う。
優は堂々と対峙している……。
そして、自信に溢れた表情で捨て札へと手を伸ばした!
「カウンター発動。超魔術インサニティー・リバースを使用」
超魔術リバースの効果により、捨て札から使用を宣言。
対し、神も応戦する。
それをまた、優が対処。
何度も飛び交う打ち消し合い。
その結果、優の魔力は0になった。
しかし、彼は平然としている。
そして今、左手に持つ手札の束から、その1枚を右手で引き抜き、ゆっくりと表を向けてゆく……!
「カウンター発動。コンフュージョン」
宣言されたのは、0コストのカウンターカード。
その効果により、サポートカードを1枚打ち消すことができる。
しかし、打ち消されたカードの持ち主は、消費した魔力の回復か、使用したカードを戻す権利を得てしまう。
神の魔力にはまだ余裕があり、超魔術テンペスト・リザーヴを打ち消しても、再度使われるだけ。
観客たちもそれがわかっており、落胆の声を漏らす。
しかし、神は目を見開きハッと息を呑んだ!
彼には意図がわかったからに他ならない。
そして今、優が宣言する!!
「対象は……オレの超魔術インサニティー・リバースだ」
会場に驚愕の声が響き渡った。
なぜ、自分のカードを打ち消すのか。
その理由がわからず、大勢が困惑。
しかし、気付く者もちらほら……。
特に、ベストエイト進出者たちは皆、一瞬にしてその意味を理解した。
数秒後、徐々に気付いた者が増えだし、再びの驚愕と興奮に会場が包まれる!
そして今、その答えを告げようと優の口が開く。
「超魔術インサニティー・リバースに使用した魔力を回復する。……そして、再びカウンター発動。超魔術インサニティー・リバースを使用」
それを聞き、ようやく全員が理解した。
と同時に、歓声が湧き起こる!
優が一枚上回り、その宣言は通った。
そして、その後も優のペースでバトルが進み、快勝!
まずは一戦、優が制した。
そして、優は神をまっすぐに見つめ……。
「オレはお前をずっと誤解していた。お前もただ、ゲームが好きで楽しみたかっただけなんだな……。来いよ神、全力で。オレはもう、お前から逃げない……!」
その言葉を聞き、神の顔を涙が一筋伝った。
そして、満面の笑みと共に……!
「僕も楽しんでいいんだね? うれしいよ、優君! ずっと我慢していたんだ。けど、それはもう辞めにしよう……!」
そう言って、新たなデッキを取り出した!
【デッキ紹介】
デッキ名:ディープスワンプ
タイプ:一撃ワンショット
使用者:神
【デッキ内容】
幼きエスパー:4枚
宣教師:4枚
ワイズパロット:4枚
見習い天使:4枚
コール:4枚
カーム:4枚
オネスティ:4枚
ディレイ:4枚
シヴァルリー:4枚
コンフュージョン:4枚
杞憂:4枚
パラダイムシフト:4枚
カウンタースペル:4枚
超魔術テンペスト・リザーヴ:1枚
超魔術ライト・リライト:4枚
超魔術コンフュージョン・リライト:1枚
超魔術ファルコン・リバース:1枚
神風:1枚
【解説】
以前、優とのバトルに使用したブラックスワンプに、第三弾のカードを加え更新したデッキ。
レッサーイーグルの代わりに超魔術ファルコン・リバース、ヒメカゼスズメの代わりにワイズパロットが採用され、より対応力が増している。




