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悪殺し -悪を引き寄せる話-  作者: 皆口 光成
16/23

悪ー拾伍ー


時は朝まで遡ります。




ユニアド学園。




私、サヤは昨夜誘拐された他四人の安否の確認と共に自身の無事についてもミキナとハゼト君に伝えることが出来ました。

その後すぐさまHRの時間となってしまい、一時解散。昼休みにもう一度集まることになりました。




自分の組の一年P組の教室に着いた時、私はそのいつもの光景を見ることでようやく自分が日常に戻ってこれたのだと認識出来たのです。

いつものクラスメート、いつもの机、椅子、いつもの黒板に教壇。後ろにある連絡ボードに貼られた連絡用紙。



あぁ、私は本当にここに戻ってこれたのだ、と。




私は思っていたのです。

本当のことには気づけずに。



ーーーーーー



HRの時間。




担任の先生が教室に入った後に委員長である私が号令をし、一年P組の朝は始まります。




「はい、おはよー。みんな毎回同じ挨拶でよく飽きないねー」




そんな先生の余計な一言は軽くスルーします。




「あ、そうそう。今日はちょっと紹介する人がいるから呼ぶねー。はい入ってくださいー」




先生の間延びするような掛け声と同時に教室の引き戸がガララッ、と開けられます。

教室全体の視線がそこに集められます。




そこにいた人物はいかにもな外国な方でした。

髪は短く、肌は黒に近いグレーで、下は砂色のチノパンを履いており、足には客人用のスリッパを履いていました。

さらに白衣を羽織っており、まさに海外からやってきた研究員、という印象が持たれます。

ですが私たちの注目はある一点(・・)にのみに集中していました。




その方は教室の引き戸を開けると入る前に一礼し、入った後も一礼してその場にビシッと姿勢良く立っていました。




「あ、こっちで自己紹介と挨拶をしてくださいねー」




先生に促され、教壇まで上がります。




「初めマシテ。ジョネルヴィ…」


「あっとストップー」




と、いきなり先生が阻止の手を入れてしまうことで挨拶が一度中断されました。気のせいか一瞬恐い顔をした気がしますが。




「いや、すみませんねー。ここでは苗字は言っちゃいけない決まりなんですよ。なので名前だけでお願いしますねー」




どうぞ、という手を出され、再び挨拶に入ります。




「初めマシテ。ジョネルヴィ言いマス。外国から来マシた。これから一週間教師やらせてもらいマス。ヨロシクオネガイシマス」




片言の言語とは裏腹にキチッとしたお辞儀。まるで軍隊の兵隊のような雰囲気を感じます。




「はい、というわけでー。これから一週間このジョネル先生がここ一年P組に押し付け…配属されることになりましたのでみなさん仲良くしてあげてくださいねー」




今とても失礼なことを言いかけた気がしますが、それはともかく。

こうして、私、サヤの日常には新たに加えられた人物が入ってきたのです。




その人物は黒に近いグレーの肌に白衣を身にまとい、砂色のチノパンを履いたいかにもな外国からの研究員。

顔はややいかついというより濃いといったニュアンスを感じさせる特徴的な顔でしたが。

それよりも、私たちの興味を引くものがありました。




それはジョネル先生が来ているシャツ。




白衣の中に切られているそのシャツはおそらくこちらで買われたのであろう文字がでかでかと書き記されていたのです。




『泥棒』と。



ーーーーーー



それはHRの後でした。




「あ、サヤさん。ちょっといいかなー?」




朝の報告が終わりしばしの休憩時間、他のクラスメイトは皆それぞれの時間の使い方をしてる中、私は先生に呼ばれました。




「どうかしましたか?」


「うん、ちょっとねー」




そう言って私と先生は廊下に出ます。

そのまま特に説明もなく私と先生は職員室まで歩きました。




「んじゃ、この部屋に入ってー」




そう促された部屋はプレートに『進路指導室』と表記されたところ。

意味も分からず私はとりあえずはノックをしてから中に入りました。

そしてその中にいる人物を見て思わず動揺しました。

ミキナがいたのです。




「あれ…ミキナ?」


「………サヤ」




お互いの名前を呼び合いつつ、私はミキナの元へ近寄ります。




「まぁ、座ってサヤさん。どこでもいいのでー。あ、ジョネルさんはしばらく職員室で待っててくださいねー」




そう言うとジョネル先生は返事を返さず一つ頷くだけで職員室へと入って行きました。




「んじゃ、始めよっかー」




先生はそのまま一人入って、進路指導室には私とミキナ、先生の三人となりました。

私とミキナは隣同士に座り、その向かい、長机を挟んで先生が座ります。




「あの、始めるって…」




何を?と言おうとしたところで、先生は一言だけ言いました。




「昨日の夜何がありました?」



ーーーーーー



ここまでの経緯を説明するならば、やはりまず昨夜まで時間を遡らせることになります。




昨日私たち五人が誘拐された日の夜。




実は私たち以外にも寮に帰って来なかった生徒はいたようなのです。

大半がソロカリで規定時間が過ぎたのでその流れで夜の街を遊んでいただけということですが、中には私たちと似たような案件もあったようです。




そこで事あるごとに寮主の方が警察に連絡して見つけたら連れ帰ってほしいと伝え、事無きを得ていたようですが。




それでも帰って来なかった生徒はいました。

それが私たちです。




その時警察は私たちがどこかの店で遊んでいるのではないのかとひたすら街の中を散策していました。

裏路地にはいないと判断していたのです。




しかしいつまで経っても発見出来ず、日付が変わる頃には一旦捜査は中断してしまいました。そんな折にです。

A組の二人が発見されたのは。




二人はどこか憔悴しきった顔をしていたようで、それにより事件性を感じた警察はすぐさま二人を保護、そして現在勤務中の警察全員に改めて私たち三人の捜索を開始したのです。

その際あらかたの事情はA組の二人に聞いたようで、警察は一応は私たちが捕まっていた廃墟までたどり着いたようなのです。




その頃ミキナとハゼト君も行っていたはずですが、どうやら行き違いになったようです。




そのまま捜索は朝まで続き、一度警察はユニアド学園に報告をしたところ。




その三人なら普通に登校している───。




それにより、私たち三人の捜索は打ち切ったとのこと。

その後、A組の二人はまだ精神面(メンタル)に問題があると見て学園を欠席にし、家に帰し。

そして普通に登校してきた私たち三人はこうして精神面に問題が無いかの確認のために集められたそうです。



ーーーーーー



「あれ?なんでハゼト君は呼ばなかったんですか?」




私はある程度の事情と経緯を説明し終え、そんな質問をします。

一応言っておきますがサツキくんのことは言っていません。




「あ、忘れ…グフンッ!いや、男女別々にした方が良いと判断したまでですよー」




そんな間延びする声に私はもちろんミキナも辟易とした顔をしていました。



ーーーーーー



事情聴取も終わり、私たち二人はそれぞれ自分たちの教室に戻っていました。




私が教室に戻ると、ハゼト君が微妙な顔をしてこちらを見ていました。

おそらく彼も自分が忘れられていたことに気づいてる様子でした。




大丈夫、後でハゼト君にも聞くって言ってましたよ。間延びする声で。




「あぁ、サヤさん。戻ってきましたか。それで、どうですか?」




今授業を行っている先生が私に聞きます。この場合は「今日はもう帰るのか?」という意味が含まれていましたが、事情を知らないクラスメイトのみんなは私の体調が優れていないと思っていることでしょう。




「大丈夫です。このまま今日は授業を受けます」


「分かりました。では、すぐに席についてください」




私の返答に特に言及することもなく、授業は再開されました。それが私に対する配慮であると私は理解しました。




その後も授業は受けました。

途中休憩時間にクラスメイトからはどうしたの?大丈夫?と話しかけられ、体調が優れていなかったと言っておきました。




ハゼト君の姿はいつのまにか消えていました。どうやら彼も呼ばれたようです。

ですが次の授業が始まる頃には帰ってきていました。その表情にはどこか安堵のようなものが見えます。

ちなみにハゼト君も残るようです。




そのまま授業は問題無く行われ、私たちの日常はいつも通りの時間へとゆっくり軌道修正かけていきました。




ですが実際は大きく脱線していたことに私は気付けていなかったのです。



ーーーーーー



異変は三時限目の授業の時です。




それは突然のアナウンスでした。




『デングルさん、デングルさん、至急職員室までお越しください』




やたら早口の放送に教室中がざわめきましたが、その声は先生の一声でかき消されました。




「今少し確認を取ってくるのでしばらく自習をしておいてください」




そう言って教室を出る先生の顔はやや焦りの色を見せ、早足に立ち去って行きました。

教室に生徒だけが残され、その静寂を打ち破るように急にざわめき立ちます。




「えー、何今の放送?」「“デングルさん”って誰よ(笑)」「やった自習だ寝よーっと」「次の授業の課題見せて!」「なぁ今日ってソロカリある?」「さっきの放送の声ってもしかしてさぁ…」「なぁ、この問題どうやって解けばいいの?」「次の授業ってなんだっけ?」「やっべ!まだ課題やってない!」「Zzz…」「放課後どこかに遊びに行く?」「“デングル”って聞いたことあるような…」「これをこうするといいよ」「次は、えぇと…」「おいコイツもう寝てるぞ」「久々にカラオケに行きたいな〜」「なぁ、もしかしてさっきの放送ってよぉ…」




皆それぞれ思い思いの言動に一時騒然とする教室でしたが、再び先生の影が廊下側の窓に映り込むとその声は次第に成りを潜めました。




「どうやらさっきの放送は誤作動によるものだったようなので気にすることはありません。それでは授業を再開します」




戻ってきて早々先生がそう言うと、再び教室には静寂が生まれました。

そこにはチョークを黒板に叩く音と先生の声のみ。




しかしチョークからの音はいつもより少し早く激しく聞こえ、先生の声もやや早口に上擦った声に聞こえました。

その理由を知っているのは僅か少数、そして核心まで迫っていたのはおそらく私だけだったでしょう。




まず先程の放送、あれは一つおかしな点があったのです。




一回しか(・・・・)言わなかった(・・・・・・)。




普通放送では大事な案件を聞き逃さないようにするために必ず二回は言うことになっています。ですが今の放送は一回しか言われなかった。なぜか。




それは緊急性の高いものだったからです。




すぐにでも伝えなくてはならないことがあるため、また時間が無いために一回しか言わなかったのです。




それともう一つは『デングルさん』。




この学園には当然そのような方はいません。では一体何を表すことなのか。

それは、どの学校にもある特定の人物(・・・・・)を刺激しないための隠語。




つまりこの学園に不審者が侵入したのです。



ーーーーーー



三時限目が終わり、休憩時間の時。




またもやアナウンスが校舎中に流れました。




『これより全校集会を始めます。各自教室にいる先生の指示に従い、行動してください。繰り返します──』




その放送を聞いて場は再び騒然としてしまいますがすぐさま授業を行っていた先生の指示により沈静化されました。




「少し緊急の集会だ。体育館に向かう前にトイレに行きたい人はなるべく早く済ますように」




そう言って私たち生徒は廊下に出ます。そのうち数人程はお手洗いへと向かいます。

私も行くことにしておきました。




ハンカチを口に咥え、手を洗い、手を拭きます。

どうやら私が最後だったようでその場には私以外誰もいないようでした。




「よし、全員並んだか?それじゃあ行くぞ」




廊下にいる先生のそんな声が聞こえ、急いで私はみんなと一緒の列に入ろうとトイレを後にしようとした時。




私の後ろから二つの手が伸びました。




一つ、右手は私の顔の右辺りから伸びており。




二つ、左手は私の腰辺りから伸びていました。




私はそれを見てこの後の展開を直感しました。なぜなら。




昨日の夜も全く同じ(・・・・)光景を見たからです。




私はそのことに理解しながらもしかし全く何もすることが出来ず、頭に思考が及ぶことも間に合わず、右手で口を押さえられ、左手で体をガッチリと押さえられてしまい、ものすごい力でトイレへと引き戻されたのでした。

再び思考が頭に巡った時に私が浮かべたことは。




あ、また捕まっちゃった。

と、なんとも呑気なものでした。



ーーーーーー



右手で口を封じられ、左手で体を封じられ、思い出されるのは昨日の夜のこと。




ミキナとハゼト君の助けもあってようやく誘拐犯から逃げることが叶った矢先に私が情けないことを理由に捕まってしまったこと。




あの時はすぐに気を失ってしまい、目が覚めたら顔に傷を負った恐い人が目の前にいて私は恐怖で動くことはかないませんでした。




さらにはその後サツキくんも現れ、私のせいで取り返しのつかない結果になってしまい、サツキくんはその後始末をしていきます。




私の目にはその時の光景がまざまざと焼きつかれています。




私の体に触れたことで全身黒い炎に包まれる傷持ちの男性の恐怖に歪む顔。




およそこの世のものとは思えない姿になってしまった傷持ちの男性の顔。




そしてそれを殺したサツキくんの顔。




その後私を殺す時の顔。




どれも、これもが、皆私には辛いものばかりでした。

またアレを繰り返しちゃいけない。二度とあんな目に遭いたくない。サツキくんにまたあんな思いをさせたくない。

そんな思いが私の中に巡っていきます。




──逃げなきゃ。




そう考えた私はすぐに抵抗を始めます。

まず体を激しく動かし、次に足を可能な限りバタバタと動かし抵抗しました。しかしそれでも拘束は解けません。




「んーーーーー!!ん゛ーーーーー!!!」




それならと私は大声で攻撃しようと試みます。ですが口をしっかり封じられているので声など出ません。




詰みでした。




もう、私には何も出来ないのです。

あぁ、また。

また繰り返してしまうんだ。

昨日の惨劇をまた。




…………。




嫌だ。




嫌だ嫌だ嫌だ。




嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ。




嫌だ!!




ここで私が諦めてしまったら、どうなる?

私のせいで“アクビト”になってしまった人は二度と人に戻ることはできないし、その“アクビト”に襲われて傷つく人たちも出てくるかもしれない。

サツキくんにまたあのまるで胸を締め付けられているような顔をさせてしまうかもしれない。また、私を殺さないといけないのかもしれない。




また、友達を泣かしてしまうかもしれない。

もう、そんな思いはさせたくない!




私が決起し、必死に抵抗をし続けていると、一瞬体の拘束の力が緩むのを感じました。




その隙を狙い私はすかさず後ろに鋭いエルボーをお見舞いしました。




「ぐぼほぉっ!!?」




後ろ向きでよく分かりませんでしたが上手く命中したようで、相手の悲鳴が聞こえ………。




………………。




あれ?この声……。




私は恐る恐る後ろへ振り返り、その人物を見ました。




そこにいたのは髪は白く、その他肌も負けじと怖ろしいほどに白く、ユニアド学園の制服に身を包んだ人物がお腹を抱えてうずくまっていました。

というかサツキくんでした。




「あの…サツキくん?」


「あ、さ、サヤさん…ナイス……エルボーです……」




すかさず私の反撃を褒めてくれたサツキくんでしたがその表情には余裕などありそうにありません。

今にグロッキーな状態です。




「あの…ここ女子トイレですけども?」


「そのことに…関しては……すみません。なにぶん…急いでいました…ので」




あ、やばい。白目になりかけてる。本当に全身真っ白になっちゃう。




「と、とにかくここを出ましょう!」




私はそう言ってサツキくんを教室に連れて行き、回復を図ろうと思いました。




「!!待って!」




しかし、サツキくんに手を捕まれ、そのまま何故か一つの個室の中に二人で入りました。

そのすぐ後。




「誰かいるの!?」




と、女の先生がやってきたのです。

あのままあの場面を目撃されていたらどう説明すれば良かったことやら。




「………気のせいかしら?」




そう言って去っていくのを耳で感じ取ります。




そこでハッとします。




サツキくんとの距離が近い。




今現在私はサツキくんと女子トイレの個室に二人で入っておりサツキくんは左手を私の顔の横に壁にもたれるような形でいました。

世に言う「壁ドン」です。




しかも顔がかなり近いのです。それはもう、近い。サツキくんの吐息がこちらまで聞こえるほどに。

サツキくんは右手でお腹のあたりを押さえて苦しそうにしていました。もしや先程の一撃が運悪く鳩尾に入ってしまったのでしょうか。どこか息も荒く感じます。




いや本当にそれだけの理由なのでしょうか?




この状況、個室に二人きりで誰にも邪魔されない空間に壁ドンで私に逃げ場を無くして近距離で互いの顔を見てお腹辺りというより胸辺りを苦しそうに押さえながら息を取り乱している、この状況。




え?ひょっとしてもしかして…。




「…サヤさん」




サツキくんの声に肩を震わせ、過剰に反応してしまう私。




「………大事な話があります」




その言葉を聞いて、私の鼓動が速くなっていくのを感じました。

ドッ、ドッ、ドッ、と破裂しそうなほどに動悸が動いています。




「さ、サツキくん私…!!」


「心して聞いてください」




有無を言わさずそう言われ。




「……はい」




と私は返事しました。




サツキくんの目を見ます。

その目には何かを覚悟したものと、一種の迷いのようなものを感じました。

しかしその迷いも数瞬、次の瞬間には消えて無くなっていました。

口が、動きます。




「サヤさん…今日」




一言一言を言われるたびに私の鼓動は高まっていくのを感じました。




顔が熱く、頭もまともに働かず、体も全身言うことを聞いてくれず、私の目はサツキくんの目を真っ直ぐに捉えるのみです。




あぁ、どうしよう。




これってアレですよね?このシチュエーションはアレですよね?世に言うアレですよね?




どうしようどうしようどうしよう。




いつかは、なんて夢見てはいましたがまさかその時が本当に来るなんて思ってもいなかったことですし。

まさか今されるとは思っていませんでしたし。




まさか女子トイレでされるとは思っていませんでしたし。




どうしようどうしようどうしよう。




なんて返事をすれば良いのだろう。




確かにサツキくんのことは嫌いではないですけどまだ会って一ヶ月ということもありますしそもそも昨日のこともありますしでも今朝のこともありますし……あぁ!!もう訳わかんない!!!




「今日……」




続きの言葉を待ちます。




サツキくんの目は相変わらず真っ直ぐです。その顔は真剣そのもので表情を見ても恥じらいというものを感じさせません。

この辺り、さすが(自称)二十二歳と言うだけあります。




あれ?そうなるとコノエちゃんとはどうなるのでしょう?




まさかまさかのサツキくんがそんなことするとは思えませんしそこの辺りは彼なりにケジメなりなんなりつけてくれるのでしょう。




私としてはコノエちゃんも一緒で構いませんが。




「今日………」




それにしてもなかなか言わないな、と思ったらそういえば私の動悸がかつてないほど動いているので、そのせいで頭の回転が速くなって実質加速状態になっているのかもしれません。

気づけば私の自分の鼓動もいつしか分からなくなっていましたし。




サツキくんの口元を見ればかなりゆっくりですが次の言葉を言おうとしているのが分かります。

それほどまでに今私の全身の血の循環が速くなっているということでしょうか。




「今日…………」




それにしてもまだ出会って一ヶ月だっていうのに意外とサツキくんって積極的だったんですね。今まではやたらと紳士の面ばかり見ていたから分からなかったですけどももしかしたらその部分も私の時だけしか見せていなかったのかもしれませんし。




そもそもいつからだったのでしょう?私とサツキくんが友達になったのは?気づけば毎朝普通に話しかける仲になってましたしいつの間にか一緒に帰る仲にまでなりましたし。

思えば私は最初からサツキくんが…。






「今日…………………ユニアドは滅びます」






ただ一言。

サツキくんはそう言いました。




私はその言葉を聞いて。

返事を返すことも出来ずに。

心臓が止まるような感覚に陥っていました。


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