絵画と画家
シモーヌ視点です。
行方不明事件の次なる被害者は3人。
行方不明事件の容疑者最有力候補とされていた、公爵令嬢メアリー=ウェネフィー。
同じく有力候補と考えられていた、その婚約者のガイア=アルカード。
何者かによって一族郎党惨殺され、そのまま行方不明となったレニー=グレイディ。
しかも、メアリー=ウェネフィーは、行方不明になる直前に、すべての使用人に退職金を渡して解雇したらしい。
3人が行方不明になったことが確認されて二週間。私はフィド率いる傭兵団に加わり、ウェネフィー邸を調査することに決めた。
これはフィドの独断ではなく、国王陛下直々に許可がおりている。
公爵位の人間が行方不明になるという事態は、国家問題にすら発展するからだ。
「よし、はじめるぞ」
手袋をはめ、帯剣する。
準備を整え、ウェネフィー邸敷地に足をふみいれた。
屋敷内は、静まり返っていた。
「うわっ」
むせかえる程の、濃厚な血の香り。
まるで戦場のようだった。
誰もが先に進むのを尻込みする程の、におい。
こういう時、いつもミランダが先頭をかってでてくれていた。
いつも頼もしかったミランダは、1ヵ月前にウェネフィー領からでていってしまった。
「私が先頭をいきます」
だから私が進み出る。
屋敷内は広く、傭兵団30人がかりでも調べ終わるのに時間がかかった。
昼間なのにどんよりした血生臭い屋敷の中を捜索するのは、やっぱりやる気になれないのも理由のひとつだろうけど。
中庭にでて、私達は絶句した。
そこでは1人の女が、木製の椅子にこしかけていた。
女の前には穴があいていて、そこに肉塊が入っていた。
「おい」
フィドが声をかけると、その女は顔をあげた。
彼女を私は知っていた。
「少し話をきかせてもらおうか」
彼女はゆっくりと立ち上がる。
唇を真一文字に結んで。
「おい、おまえら。この淑女をつれてけ」
彼女は、一枚の絵画を抱えていた。




