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病的依存デスガール  作者: レーゼ
凶悪な思想
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とりかえっこ

少しの残酷描写がありますのでご注意ください。

これまでのことは、夢だと思いたかった。

それはそれは恐ろしい、悪夢だったと。


さっきまでの出来事は全部夢で、目が覚めたら全部が元通り。

そんなことを期待して、目をあけた。


そして、俺をみて笑顔を見せる少女をみて、夢だったという僅かな期待が砕け散る。


少女は俺の顔をのぞきこんできた。


俺は目の前から消えた友人達の名前を呟く。

少女の顔が曇る。

その瞳は潤み、雫が光っていた。


少女は言葉を口にした。


「あなたを愛してあげられるのはもう、私しかいないの。だって、邪魔者は皆・・・・・・・消したからね?」



俺は全てを悟った。

この少女からはもう、逃げられないのだと。


少女は俺に手をさしのべた。

俺が少女の手をとると、ふんわりと笑う。


「あなたの『大事な人』とあわせてあげる」


少女は両手に包帯を巻いていた。


 俺を労わるようにして立たせ、歩幅をあわせてくれる。

歩くたび傷口が痛むのに気付いたのか、微かに顔を歪めた。




少女に連れられたのは中庭だった。


そこには人1人入るくらいの穴があいていた。

そして、その横にナニカが存在していた。


「ほらみて」


 内臓だろうか、あれは。ねじられ抉られて引き千切られている。

臓器は滅多刺しで、どれがどの臓器かなんて判別できないまでになっている。

 潰れた顔はどす黒い。吐き気がしたけど、吐くことはなかった。

トレードマークだった長髪は引き千切られ無惨に散らばって、ぐちゃぐちゃな内臓や肉片に絡みついていた。

骨はむき出しで、足で踏み折ったのだろうか、ばきばきにへし折られている。


「・・・これでもこいつが大事?こんな姿になっていてもこいつが大事?ねぇ、まさかそんなわけないよね?」


少女は無垢な笑顔を浮かべて聞いてきた。


「あれ。どうしてそんなに怯えてるの?」


「ああ・・・・そっか、全部こいつが悪いんだね」


少女は狂いすぎて逆に純真になってしまったのかもしれない。


 少女は散らかった臓器のひとつを何気なくけった。地面に転がっている、小石をけるような自然さで。


少女は俺に抱きつく。

抵抗する気力なんてもうなかった。


傷口が傷んで、ウッと呻き声をあげると、はっとして謝ってきた。

その仕草を見たら大概の男は惚れてしまうんじゃないだろうか・・・彼女の全身が血まみれでなければ。


少女は俺をひっぱって、地下室までおりた。


 盗賊などに襲われた際の緊急避難場所であるそこは、誰も掃除をしていなかった為にほこりっぽく、かびくさい。アンマリーがここを管理していたはずだが、ほったらかしにしていたらしい。年に一度の大掃除の際にアンマリーが掃除するくらいだから、とてもじゃないが清潔とはいいがたい。

 そもそも俺が最にここに足を踏み入れたのは、公爵が死ぬ前のことだ。地下室独特の陰気な雰囲気が嫌いで、近寄ろうとも思わなかったので、この部屋の管理はアンマリーとメアリーにまかせっきりだった。


 室内には小さなベッドがぽつんとおかれている。そのベッド隅っこには、もこもこしたぬいぐるみが積み上げられていた。

幼い頃のメアリーに、ウェネフィー公爵が買い与えたものだろうそのぬいぐるみ達。そのぬいぐるみ達は異彩を放っていた。

 どのぬいぐるみにも、首から上がなかったのだ。


部屋の頑丈なドアを、彼女はゆっくりとしめた。


「邪魔者は消した。でもまた、別の奴が邪魔しに来る。その度にあなたを危険な目にあわせるなんて耐えられない」


そして、泣きそうな声で言った。


「私達の幸せを邪魔する奴は多いけど、必ず乗り越えていける。私はそう信じてる。

 でもね、ずっと我慢するのはつらいよ」


ぽろぽろと涙が零れ落ちた。


「だから安心できるように」


 少女が俺に近づいてきた。

いつのまにか、その手には真赤なナイフが握られている。

俺の友人たちの命を奪った、凶器だ。


「頂戴」


「なに・・・を」



「・・・その、瞳を」


「ひとつでいいの、代わりに私の瞳をあげる」


「とりかえっこしよう?そしたら2人、同じ景色がみられるよ」


少女は微笑んだ。


涙を流しながら、血まみれのナイフを握り締めながら。



今まで見た中で一番。


一番、歪で。


一番、綺麗な笑顔で微笑んでいた。



ゆっくりと。

本当にゆっくりと、その手が俺の瞳にのばされた。



「誰にも邪魔されない、2人だけの世界に行こう?」



メアリーは、


俺の目玉に、


―――――――――――――――――――優しいキスを落とした。

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