嗤ったのは
「なん、で?」
鋭い熱と、激痛がはしった。
腕に生温かい感触がある。
目をあけると、 ――――――――――――――――――目を見開き絶句するメアリーの姿。
そして、紅い血で染まっていく俺の胸。
―――――――――――――――――――アレ?
理解、できない。
どうやってメアリーが、俺の胸を刺したんだ?
普通なら、背中のはずだろう?
なんで、どうして。
・・・・・・・・・
ナイフが2本もあるんだ?
俺の胸元に刺さったナイフは、メアリーの手にある物程紅くはなかった。
誰かが笑った。
メアリー?
違う。
「ふふっ」
「ぅ……ぁ…ぅ、そ……」
俺の腕の中にいるレニーは恍惚な笑みを浮かべていた。
意識の覚醒した彼女はナイフの柄を握り、ひきぬいた。
不思議と痛みはなかった。
ぬるり、とやけに生温かい血が肌にふれた。
レニーがもう一度、ゆっくりと。
同じ場所へ、震える手で奥深くそれを突き刺した。
肉体的な痛みは、なぜだろうか、感じない。
心はこれ以上ない程に痛くて、悲鳴をあげていたけれど。
感覚が麻痺してしまっているのだろうか?
鮮血がほとばしり白い雪が、まるでかき氷の苺をかけたかのようになっている。
痛みを感じることもなく、絶叫することもなかった。
わりと冷静な自分に驚いた。
俺は、迫りくる死を目にしていた。
どうしてレニーがこんなことをしたのかわからない。
とめどなく溢れる血が雪にこぼれて、じんわりと広がっていく。
あんまり、じゃないか。
心の痛みに喘げば、メアリーの顔が悲愴に歪んだ。
今にも、大粒の涙が頬をぬらしそうだ。
ああ、元のメアリーだ。
かたかたと震えながら、俺に手をのばす。
その手には包帯がまかれていた。
ひゅー、ひゅー、と、変な呼吸音が俺の口からもれる。
メアリー。壊れた人形だなんて思ってごめんな。
そんなことをぼんやりと思った。
女性の涙は苦手だ。
見てる方が辛くなるから、笑ってほしいんだけど、な。
ぐらり、と視界が揺れた。




