現在の話
幕間の、「少し先の話」のガイア視点になります。
意識を失いかけているレニーを抱き寄せると、壊れた人形は、メアリーは、驚いているような表情になった。
「もう、やめてくれよ」
震えた声で本心を口にだす。
体まで震えてるじゃないか。本当に俺は、情けない。
「どうして?ガイアの為なのに。
ガイアと私が幸せになる為には、そいつはいらないでしょう?」
メアリーの表情になった彼女は、凄惨な笑みを浮かべながら言う。
俺の頬に伝う、これはナンダッケ?
「なんでこんなこと」
「あははははははははははははは!!!!
そいつが死ねば私達の邪魔をする奴はだぁれもいないんだよ!?だからそいつをはなして?」
その笑みは狂人そのものだった。
歪んでいた。
一瞬、狂気に満ちたその笑みを、なぜだろう。美しいと思ってしまった。
そんな俺も、もう狂い始めているのかもしれない。
「ガイア、ねぇ・・・・・・愛シテルヨォ?」
ナイフを掲げるメアリー。
それは、紅くないところがほとんどない程に血ぬられていた。
「私の言うことを聞かないとおしおきだよ?」
今なら許してあげるから、それを離して。
その言葉に、顔をふせた。
・・・俺も、殺されるんだな。
俺の人生こんなもんか、結構恵まれてたな。
目を瞑り、レニーの体をひきよせた。
厳格ではあったけど、本当は優しくて子供思いだった父親。
いつもその一歩後ろを歩き父親を支えていた、淑女の鏡のような母親。
社交的で爽やかで、誰よりも尊敬し、憧れの念さえ抱いていた叔父。
走馬灯のように、蘇る。
屋敷につかえていた使用人達。
リザは時たま、メアリーをうっとりとみつめていることがあって、そのたびにエリカに頭をはたかれていたっけ。
アンマリーは侍従長のくせにいつだってマイペースで、業務時間中に美麗な絵を描いてたりして。これで絵がうまくなきゃ、減給するところだと苦笑することもあった。
大切な友人。
ジル、ナルガ、ジナ、そしてレニー。
最後に思い浮かんだのは、メアリーの屈託ない笑顔だった。
ぐさり、と肉のきれる音がして。
鋭い痛みが俺を襲った。




