最愛の探し人
「ねぇアンマリー?ガイアはどこにいるのかなぁ」
馬車の中でご主人が、足をばたつかせた。
「どこにいるんでしょうねぇ」
「ねぇ。それにしても、アンマリーったら汗だくだよ?・・・暖炉が巨大すぎるのも考えものだよね」
そう言って口角をあげるご主人の衣服は赤黒く汚れている。
馬車の中が鉄のようなにおいなのは、まちがいなくご主人が原因でしょうね。
「はいハンカチ。これでぬぐいなよ」
「ご主人のものを使うだなんてそんなおそれおおいことはできませんわ」
「いいからいいから。汗が冷えておなか壊すよ?二日酔いよりもつらいと思うけどなぁ」
「う」
二日酔いのつらさは身にしみている。
つい先週ものみすぎて頭痛がおさまらなかったばかりですしね。
「お、おかりいたします」
「素直でよろしい」
私にハンカチを渡したご主人は、窒息する。
「ガイア、グレイディ家にはいなかったし、後いるとしたら、バーベキューしたところとかかな?」
そういいながらも、私の返事はどうでもいいらしく、返答をまたずに話し続けている。
「サーカスはもうおわったし・・・とにかく行って見なくちゃね。ガイアが困ってるかもしれないし、心配なんだ」
ご主人ははにかんで、窓をみつめた。
しばらくして。
ご主人は窓から身を乗り出した。
そしてにやり、と不敵な笑みを浮かべる。
「・・・・・あは♪いたぁ・・・ガイア」
きゅっと、瞳孔が細くなった気がした。まるで、獲物を狙う猫のように。
・・・ご主人の性格は、どちらかといえば犬だけれど。
勿論、たった1人に懐く従順な犬だ。
雪で真白の風景の中に、4人の男女がたたずんでいるのがみえた。
使用人服を着た女と、同じく真白な包帯を全身にまいた、まるでミイラのようななにか(性別はわかりません。小柄ですし女子供でしょう)、薄汚れた赤毛の女、そしてご主人の最愛の人。
「よかったぁ・・・まだ売女共に何もされてないみたい」
ご主人は安堵の笑みを浮かべると、乱れた髪を軽く整える。
血のこびりついたナイフを懐にしまい、絹の手袋をはめる。
「さぁ・・・迎えに行こっか、アンマリー」
「承知しました」
ご主人は馬車を止めさせ、馬車から飛び降りた。
「ここまでありがとう。寒いでしょ、これあげるね」
そういって、臨時で雇った御者に高値の糖菓子を握らせている・・・私特製の毒入りの糖菓子を。
ご主人は足音をけして4人の背後に近づく。
そしてひどく明るい声で言った。
「何も言わずにいなくなるなんてひどいよ、勇士」




