雪と火の粉が舞う中で
刺された箇所を庇いながら、目指すのはあの女の家。
手に巻いた包帯からは血が滲み出している。
私を庇ったあの人の血を彼女が、私のものだと勘違いしてくれたおかげで助かった。おそらく私は、出血多量で死んだと思われているはず・・・。
死にたくない。
私はまだ目的を果たしていない。
そもそもあの女が、彼女がいなければ、私は完全に、彼を手に入れていたはずだ。
あの女さえいなければ、私は今頃、彼に愛されていたのではないだろうか?
そうだ。きっとそうに違いない。
あの女がいなければ、彼のすべては私のものになっていたはずなんだ。
そう思った瞬間、彼女に対する憎悪は膨れ上がった。
私はまだ死にたくない。
死という道から逃れる為には、そうするしかないでしょう?
・・
人間には誰しも、生まれながらにして狂気がある。
破壊衝動、支配欲、独占欲、すべてを自分の思い通りにしたいと言う想いを、心の底で誰もが秘めている。
そんな狂気を知りながら、人間はその感情に、無理矢理蓋をしている。
蓋をすることで、あたかもそんな感情なんてものはないかのように振舞って、みないふりを、知らないふりをする。自分が正常であると信じていたいから。ひとりにはなりたくないから。人間の輪からはじかれたくはないから。
けれど、ひょんなことから、その蓋が外れてしまうことがある、という。
蓋が外れてしまって、野生の狂気に染まった者を人間は恐れる。
自分たちも、その狂気を隠し持っているのに、その狂気を曝け出した彼らを恐ろしく思う。
私が、自分の中にある狂気に気付いたのは、あの女にあってから。
その蓋がゆっくりと開き始めたのは、彼にあってから。
殺す。
殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す。
殺して手に入れる。
殺して手に入れて独占して、私だけのものにする。
逃がさない。絶対逃がさない。何があったって逃がさない。
私だけのものに手はださせない。
包帯のまかれた手をもう片方の手でにぎりしめ、私は嗤った。




