赤の思惑 前編
『赤の思惑』
ということで、レニー視点での回想です。
後編はもう少し後に掲載します。
私の中でどす黒い感情が蠢いている。
今の関係が崩れて、あの人が私から離れていってしまうのが怖くて、その感情に蓋をして気付かないふりをする。
そのことに疲れてきたし、いい加減飽きてきた。
初めてあった日のこと、覚えていますか?
私は鮮明な記憶が残っています。
ナルガに紹介されたあなたは、少し緊張気味の私を見て微笑を浮かべながら、よろしくと手をさしのべてくれた。
鋭く目つきが悪くて、でも笑うと優しく穏やかになる瞳に興味をもった。
私は産まれた時から、両親の愛情を受けながら育った。
同時にプレッシャーもあった。 一人娘だった分、プレッシャーは強かった。
両親は愛想がよくてききわけのいい、成績優秀な娘を望んでいた。
その期待に応えなくちゃいけないと思った。
期待が失望に変わるのが怖かったから、一生懸命に努力した。
嫁ぐ相手も間違えられない。
約束された地位をもつ貴族と知り合う手段として、従兄を利用した。
伯爵家の次男坊・・・もし誰にも見初められなくても彼の正妻になればいい。万が一の保険で、彼は堕としてある。
いつも笑顔を絶やさない、完璧な淑女を演じながら候補を募る。
最低でも準伯爵の正妻。侯爵や公爵なら、愛人や側妻であっても構わない。
グレイディ家にとって有益になる相手で、出世も期待でき、頭の悪くない人が望ましい。
目先の欲にとらわれ、自己保身と高位な者にとりいることしか考えていない愚鈍な者を選んでしまえば、失脚することもあるかもしれないし他の者に利用される可能性だってある。
この国は一夫多妻制。
選びたい放題の男と違い、女である私は、嫁ぎ先は決して間違えられない。
未亡人となった女や、一度離縁された女、婚期を逃した女は世間体が悪く、殆どと言っていい程相手がいない。つまり、一度きりのチャンスしかない。
そんな時、従兄の親友だという男を紹介された。
それがガイアさんだった。
地位は王家仕えの中枢の大臣の、それも一人息子。
伯爵位の叔父という後ろ盾もある。地位としては申し分ない。
更には公爵令嬢の婚約者がいる。
・・・・・・
知らないふりをしていたけど、とっくに知っていた。
婚約者の父親は蒸発していて、公爵位はガイアさんが彼女と結婚するまで空いているらしい。
公爵位が約束されているガイアさんの側妻になる、それは玉の輿を意味する。
それに顔もいいし、地位をひけらかしたりしないし、私と年齢的にもつりあう。
他の貴族のように権力に目が眩んでいるわけでもないし、悪い噂も殆どと言っていい程ない。
こんな優良物件、そうそう見つかりはしない。
なんとかして、側妻の座にすわれはしないだろうか・・・私は必死に考えた。
そう。
私は初めから富と地位が目当てでガイアさんに近づいた。




