明るい瞳の少年
少し緊張気味の少年は、私をみてお辞儀をした。
その隣の少年の父親は、もっと気味しているみたい。
うまくやらなくてはという気持ちで頭の中がいっぱいなんだろうな。
「メアリー、だったよね。」
艶のある、優しい声。
声変わりはもう終わったのかな。
でも、もっと気になるのは。
鋭いその瞳。
鋭いのに、明るい瞳。
黒いのにどこか明るいの。
あったかさも感じてしまう。
なぜ?
目つきは悪いのに、明るい。明るい。
手鏡に自分をうつしてみる。
その瞳はとても暗かった。
なぜ?
なぜ?
「顔になんかついてる?」
あ、ついまじまじと見てしまった。
私は首を横にふる。
「ガイアって言うんだ。よろしくね」
さしだされた手に触れてみる。
あったかいなぁ・・・。
「こちらこそ、よろしくね」
そう言ったら、僅かに微笑んだ。
嗚呼、なんてあたたかい笑顔なんだろう。
それから私と彼の婚約が決まった。
悪い気はしなかった。
だってガイアの近くにいたら、私もあんな明るい瞳になれる気がしたから。
お父様はこのことに不満だったみたいだけど。
お父様はガイアが嫌いみたい。
私の前では笑顔だけど、目が笑ってない。
どうしてだろう。
ガイアはあんなに明るい瞳をしてるのに。
あんなにあたたかい笑顔で笑うのに。
どうしてお父様は、ガイアが嫌いなの?
どこに嫌われる要素があるのか、さっぱりわからない。
お母様にそう告げたら、お母様は少し困った顔をした。
そしてこう言った。
「お父様は焼き餅を焼いているのよ」