婚約に至った経緯
過去編です過去編。
時は10年前―――・・・
「お父様、お帰りなさい!」
「ただいま、メアリー。少しみないうちにかわいくなったな」
「えへへ」
「メアリー、どたばたと走ってきて・・・はしたないですよ」
「いいじゃないか。お前はメアリーに厳しすぎるぞ」
「あなたが甘すぎるのです」
メアリーの父親、ウェネフィー公は、ウェネフィー第一婦人との娘であるメアリーを溺愛していた。
普通の親なら当たり前といえる。
幼いメアリーは愛想がよく人懐こかったし、見た目も可憐で飲み込みも早く、親に愛される要素だらけだった。
そして溺愛されていたのにはもうひとつ理由があった。
ウェネフィー公は正真正銘のロリコンだったのである(-△-;)
第一婦人はそれにうすうす気付いていた。
―メアリー―
真夜中目がさめた。喉が渇いたな・・・。
居間を横切ろうとしたとき、居間から声がした。
「あの人のメアリーを見る目、異質なのよ。いやらしい感じがする・・・
このままだとあの人、メアリーに手をだすかも知れないわ。
どうしたらいい?アルカード」
「しかしどうしようもないですね、公爵様は」
相手は、お母様の幼馴染のアルカードだった。
「いっそのこと、メアリー嬢を婚約させてしまえば・・・」
「!?」
「そうすれば体裁上、メアリー嬢を傷物にはできないかと」
「そう・・・ね・・・・・いい考えだわ・・・!」
・・・・・・・何の話を・・・。
「しかし身分のつりあう年端の近い子供は中々いないでしょうね」
「この際年齢も身分もどうでもいいわ」
「でも公爵様が納得しないのでは?」
「そうね・・・。あ、そうだわ!アルカード、貴方の甥のガイアはどうかしら。
文武両道で成績も優秀だし・・・」
「身分は多少低いですが・・・、いいでしょう。年も近いし、相手として申し分ないかと」
私に婚約者・・・?
ガイアさんって、どんな人なんだろう?
優しい人なのかな、それとも怖い人だったら・・・。
ーガイアー
今朝、叔父が家を訪ねてきた。
「それは本当か⁉」
普段冷静な父様が声を荒げた。
どうしたのだろうか。
幼心からのぞいてみる。
「本当だよ、落ち着いて。兄上らしくない」
アルカード叔父が笑いながら言った。
「公爵家の令嬢様と私の息子では、地位的につりあわないだろう?」
へ?
「婦人は子供なら誰でもいいんだよ。
ガイアだって兄上の後継だし、さして地位が低いわけじゃない」
へ?
どういうこと?
「それにしても運がいい。公爵令嬢との縁談とは」
その時、父様がこちらをむいた。
「おお、ガイア。喜びなさい。
お前とウェネフィー公爵様の令嬢様の縁談がきているぞ‼」
突然のことで、喜びなさいなんて言われても喜べるわけがない。
滅多なことでは笑わない父様が顔を綻ばせているし、笑っておいた方がいいのだろうか。
このみあいが自分の人生を狂わせるなんてこの時は知るわけがない。