残酷な現実
アンマリー→ガイア視点です。
初のアンマリー視点ですが、アンマリーのイメージが崩れるんじゃないでしょうか。
今から、およそ5分前のことです。
ご主人とジナ様がボートから落ち、おぼれてしまいました。
咄嗟に川へ飛び込んだ旦那様によってご主人は、無事救出されました。
それ自体はよかったのですが、同じくボートから落ちたジナ様がまだ、見つかっていないとのことです。
ジナ様の安否も心配です。
けれどもっと大事なのは目の前の彼女のことと、ボートに残された彼女の愛犬のこと。
ご主人の体は冷え切ってしまっている。初冬に川の深部につかったのだから当然でしょう。
後々、発熱しなければいいのですが…。
そしてブラック。
哀れなブラックはまだ、ボートの上に取り残されているのです。
旦那様が救助なさるでしょうが、きっと怯えている。たった一匹で、川をボートで漂流しているのだから。
・・・・正直なところ、ジナ様のことはどうでもいいのです。ご主人はジナ様のことを芳しく思っていないようですし。
ひどいと思れるかもしれませんが、私はこんなんでもウェネフィー家の侍従長ですから。見つかるかわからないジナ様を探すことよりも、ご主人を優先したいのです。
私は泳ぐことこそできるものの、寒中水泳はあまり好きではありませんし。
「ご主人、小屋の方まで行かれますか?あそこには毛布などもありますし、暖炉もあります。小屋で体を暖めましょう」
「うん、わかった・・・」
体の震えがおさまってきたご主人に声をかける。ご主人は頷いた。
そして、誰にもわからないように顔を伏せてから、意味深な笑みを浮かべた。
その笑みの理由を検討しようとは思わない。
なぜなら私はメアリー=ウェネフィー様に仕える使用人。
ご主人の言葉は絶対であり、ご主人のとる行動全てが私達にとっては正義であり、真実なのだから。
冷たい川底をもぐり、必死になってジナを探す。重たい水をかきわけて、目をしっかりとあけて。
水流がないので泳ぎやすくはある。けれど、底は暗くて奥が深く、見えない。
大切な友人の1人が行方不明になっている今、ジナまで失いたくはないんだ。
頼むから、無事でいてくれ・・・!無事でいて、その笑顔をまた俺に見せてくれ。
その願いが通じたのか。
水中でなにかが、きらりと赤く輝いた。
「!」
水中で輝くその光をめざして、俺は深くもぐった。
その光の正体は、ジナのつけていたルビーの髪飾りだった。
ルビーが太陽光に反射して、輝いたんだ・・・・後少しでも遅かったら、太陽光の届かないところまで、ジナの体は沈んでいただろう。
ジナを胸に抱き、浮上する。
レニーの乗っているボートまで泳いでいって乗り込む。
レニーは涙目になっていた。ジナをみて、安堵の笑みを浮かべている。
しかし。
「ジナ、は大丈夫か・・・!」
呼びかけてみたが返事はない。
おそるおそる、口元に顔をよせる。
「!?」
ジナは、息をしていなかった。




