彼女はメアリー
「もう7時か・・・」
俺、ガイアはつぶやいた。
「何か用事でもあんのか?」
「まぁね」
「ふぅん、もう帰っちゃうんだ・・・?」
ジルが上目遣いに俺を見上げてくる。
リスのようで可愛い。
「明日もくるよ」
「わかった」
2人に別れを告げ、俺は背をむけた。
「そういえばガイアの婚約者って公爵令嬢サマなんだっけ」
「らしいな」
「なら、ガイアも相当な地位なの?」
「・・・・・よく知らない。あいつあまり自分のこと話してくれないしな・・・。
侯爵とか伯爵の子息かなんかだった気がするが。」
「うへえ、ぼっちゃん?
もしそうなら、従者もつけないで夜歩くのって、危険だよね・・・」
「・・・だな。大丈夫かな、あいつ」
俺は息をのみ、居間へはいった。
彼女はシャンデリアの真下の揺りいすにこしかけ背をむけていた。
「・・・ただいま」
俺が言葉を発した瞬間に彼女はたちあがり、抱きついてきた。
「お帰り、ガイア・・・もう7時過ぎてるけど、何してたの?」
「ナルガんちで夕食ご馳走になってたんだ」
「ああ・・・グレイディ家の子息の・・・。本当に仲いいんだね、妬いちゃうな」
その微笑みに、俺は少し安堵する。
「2人だけだよね?女はいないよね・・・?」
「うん、2人だけ」
俺は嘘を吐く。
彼女こそが俺の婚約者、メアリー=ウェネフィー。
数年前に死んだ公爵の忘れ形見で、遺産相続者でもある。
まぁその辺は後で。
彼女は普通のかわいいお嬢様じゃない。
彼女は、正真正銘の
『人殺しの経験がある箱入り娘』
なのだ。
この話は中世風ダークファンタジーです。
この世界では貴族の地位は、
皇室>公爵>侯爵>準公爵>準侯爵>伯爵>準伯爵>男爵
の順番になっています。
子爵や士爵、卿などは除外です。
力によって変わる地位なので・・・。
後、ナルガは伯爵家次男なので家を継ぐことはできません。
伯爵が位を譲るときは嫡男が伯爵位を継ぎ、次男は準伯爵位、つまり分家の主となる。
ジルは伯爵令嬢、メアリーは公爵令嬢で2人とも1人娘なので、自分と結婚した者が爵位をつぐことになります。
以上、くだらない豆知識でした!