浮気現場を目撃された夫の気分
「はぁ~っすごかったね、ガイアさん!」
ジナはにかっと、満面の笑みを浮かべている。
喜んでもらえて何よりである。まぁ、誘ってきたのはジナなんだけれども。
「それにしても、熊は面白かったな。出番の2回とも失敗して・・・ちょっと哀れだったけど」
「あー、熊ちゃん・・・多分、一生忘れないと思うよ、私」
思い出したのか、また吹き出している。
あの熊、後で飼育員さん(団長さん?)に叱られるんだろうな・・・。
しゅんとした熊の姿が目に浮かぶ。
サーカステントをでてすぐ、
「ガイアッ!」
という、聞き覚えのある声に呼び止められた。
振り返ると、黒いオーラをまとい、背後には般若がみえる、まるで悪魔を模したような黒い笑みを浮かべた彼女が。
「え!?メアリー!?」
「・・・・・・偶然だねー?ガイアもサーカスを観に来てるなんて、思ってもみなかった。用事があるって、サーカスを観に来ることだったの?」
・・・・・・・・・・怖いよ、メアリーちゃん。
「ふーん・・・?」
背後に般若のみえるメアリーに問い詰められ、頭をさげつつ弁解をすると、メアリーはぶすっと仏頂面になった。般若が消えてくれただけマシか。
ジナは何も悪くない、メアリーが思っているような疚しい関係でもない、と説明すると、納得のいかなそうな顔になる。
そして、ぎゅっと抱きついてきた。
「私だって、ガイアを信じていないわけじゃないけど・・・まわりの人に優しすぎるよ・・・」
小さな声だったが、なんとか聞き取れた。
「優しいって・・・俺がか?」
「むむー」
背中にまわされた腕に、思いっきり力をこめられる。
メアリーの力だし、そんなに痛くはなかったけど。
「ジルに対する罪悪感からなの?その妹の面倒までみてあげるなんて。ガイアはなぁんにも、悪くなんてないのに」
「・・・俺の屋敷で遊んでいった帰りにいなくなったんだぞ?招いた俺の責任にだって責任はある。
それに、ジナは俺の友人でもあるんだ。大事な人をなくして悲しんでたら、慰めんのが友人としての役目だろう?」
「もーっ。それが優しすぎって言ってるのーっ!!・・・・・そんな優しいガイアにつけもうとするゴミ共にこそ、罰が与えられるべきでしょ?」
最後の言葉は小さすぎて聞き取れなかった。
「え、最後なんて?」
「はぁーっ。今日のことは許してあげる・・・だけど、ポップコーン買ってね。キャラメル味と焼き玉蜀黍味。屋敷に帰ってから2人で食べよ?」
「ああ・・・わかった」
メアリーはそうとうポップコーンが気に入ったらしい。
ここ数話、一話分の文字数がやたらと少ないですね・・・。




