ドジなところはご愛嬌
今俺は、馬車に乗ってサーカスを観に、サーカステントに向かっている途中だ。
同伴者はメアリーではなく・・・、
「私、サーカス観るの初めてなんだよね~♪楽しみ♪」
先程からそわそわしっぱなしのジナ。
励ましの言葉なんてぶっちゃけ思いつかないし照れくさいし、それなら一緒にサーカスでも観にいこうか、きっと面白いよ~!
ということで今に至る。
門限前に帰りさえすれば、メアリーにも心配されないだろう。
まあ、俺が行きたいということもあったんだけど。
メアリーはひきこもりがちだし(ブラックのおかげで外出するようになったけど)、レニーはナルガのこともあって誘いにくい。
そういうところはいつもジルと行っていた。
実は俺、サーカスは以前、ジルと観にいったことがある。
わざわざ隣国まで行ったんだ、それも日帰りで。
門限過ぎててメアリーに泣かれたことは記憶に新しい。
そんなことを思い出していると、目的地についたようだ。
「lady and gentleman!ようこそいらっしゃいました!」
恰幅のいい燕尾服の男性が挨拶し、演目が始まってから、ジナの目は輝きまくっている。
こんなに興奮したジナをみるの初めてだ。
だぶついた格好に白塗りの顔の道化師が、ガラス製の高価そうなワイングラスを額の上に重ねていき、抜群の平衡感覚を見せ付けたり。
3メートルをゆうに越す熊が、最近異国で作られたと言う一輪車と呼ばれるものに乗って舞台を一周。が、途中でバランスを崩して、盛大にコケた。
熊がお辞儀をする・・・中々に礼儀正しいな。熊なのに。
金髪の美人な女性の団員がうやうやしく進み出ると、道化師の体にマッチで火を点ける。
悲鳴をあげる道化師の体が、あっという間に炎に包まれた。
「あれ・・・大丈夫なの!?」
ジナが顔をゆがめた。
しかし団員が赤い布を道化師にかぶせ、次の間にぱっととると、あーら不思議。
道化師は全くの無傷で、衣装にも焦げ目さえついていない。
・・・どういう手品なのだろうか。
次は先程失敗してしまった熊の玉乗り。
今度は成功・・・かと思いきや、半分をすぎたところでドテッと落ちた。
「ww」
「か、かわいw」
テント内が笑いの渦に包まれる。
熊はまたもやお辞儀をした。
芸は失敗に終わったが、教育のいい熊である。