少し先の話
――――――『神様がもし存在するなら、こんな悲劇はおこらなかった』
血まみれの青年が、同じく血で真っ赤に染まった少女を胸に抱いていた。
胸にだかれた少女の呼吸は荒く、感覚がはやい。
2人をみおろすもう1人の少女の手には、銀色に輝くナイフが握られている。
そのナイフの先もまた、紅。
「もう、やめてくれよ」
青年は、その端整な顔を歪めながら懇願する。
しかし少女は、わけがわからないと言った風に小首を傾げた。
「どうして?『 』の為なのに。『 』と私が幸せになる為には、そいつは要らないでしょう?」
ナイフを手にした少女は、凄惨な笑みを浮かべながら青年に言う。
青年の頬を涙が流れ、やがてそれは血と混ざって黒くなる。
「なんで、こんなこと」
「あははははははははははははは!!!!」
青年の言葉を遮って笑い出す少女の瞳は虚ろに光る。
「そいつが死ねば私達の邪魔をする奴はだぁれもいないんだよ!?だからそいつをはなして?」
狂気に歪んだその笑みが、青年には狂おしくも美しくみえた。
青年が『妹のように』可愛がった、かつての婚約者の面影はどこにもない。
「・・・・・ガイア、
ねえ、・・・・・・・・・・
――――――――――――――――――――――愛シテルヨォ?」
紅に染まった鋭利な刃物が、2人に向かってふりおろされた。
ぐさり。