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嘘つきガールの誕生

 一人の老人が倒れた。


いや、私はこの男が誰だか知っていた。


 秋山螢。


 一人の男の人生が今終わったのだ。


 私は男を見つめた。

 醜く老い、そして汚れた姿。


 だが、この人は「私」なのだ。

 そして……


「……お父さん。

そう呼んでも差し支えはないのでしょうね」


 そう、私はこの男に作られたのだから。


 自分が生まれた理由。

 多くの人は知らないだろうし、それは自分で見つけるものなのなのかもしれない。


 だが、私が生まれたことには理由がある。


 まだ、カプセルの中にいた時にこの男が何度も何度も何度も何度も何度もくりかえし言っていたこと。


 松村千穂。

 彼女を救う。

 それが私の生まれた理由。


 同一人物が同時間軸に存在することはできない。

 それがタイムパラドックス。


 ところが、私は秋山螢であって、秋山螢ではない。

 性別も年齢も思考回路も全く違う。

 ただし、秋山螢の細胞から作られたクローン。

 それが私である。

 親もいない、歴史上存在するはずのない完全矛盾の存在である。

 

 私ならタイムパラドックスの影響なく、過去に戻れるはずだと父である私は考えたのだ。


 鏡を見る。


 そこに映っているのは美しい10代の少女の裸体。

 非の打ちどころのない完璧な肉体…自分でもそう思う。

 ただ、若干胸のサイズは控えめ。


 「随分とゲスな趣味をお持ちだったんですね。私は」


 さて、これからどうするか。


 父である私……面倒だ。

 もうお父さんでいいだろう。


 お父さんの考えでは今すぐにタイムトラベルをし、60年前の過去に戻り、松村千穂を助けることが私のすべきこととして正解なのだろう。


 それが「60年前の私」を救うことにもなるはずだとお父さんは言っていた。

「60年前の私」

 いや……これも面倒だ。

 

 おじいちゃん。

 うん、実際はおじいちゃんではないけど、お父さんがこうなった理由を作ったのは「60年前の私」なのだから、ある意味お父さんの父、つまり私のおじいちゃんと考えてもいいだろう。


 だけど、そんなことする必要が本当にあるのだろうか。


 私がお父さんの思い通りに行動しなければいけない理由もないだろう。


 こうして私を作ってくれたことには感謝も感じるが、幸いもう死んでいるのだから。


 私は既に冷たくなってしまった死体を見て、冷たく微笑んだ。


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