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とある狂人の独白②

 そう、私であって私ではない私を作るのだ。

 それは年齢や生まれ育った環境が違うというような同一個体ではなく、

 あらゆるものが異なっているが、全く同じ生命体である。


 意味不明のこの思い付きが私の最後の希望となった。

 この狂った思想に縋る他、私にはもう道がなかった。

 私は80歳を越えていた。

 両親はとっくにこの世を去り、斎藤も死んだ。

 

 私にはもう何もない。


 親も友も夢も金も人間らしい感情も、そして残された時間すらも。


 私は私を作るのだ。

 私であって私ではない何かを作るのだ。

 私が持っていない、私ができなかったことをする何かを作るのだ!

 そんなものは存在しない!

 だが、存在させる!

 矛盾なる何かを作る!

 作らなければならない!

 

 そのために、この私は生まれたのだ!!!


 



 そして、今私の眼前には確かに「ワタシ」が存在している。


 完成した。

 

 もう私は指一本動かすことはできない。

 おそらく死ぬだろう。


 暗い研究室のカプセルがゆっくりと開く。


 それはゆっくりとカプセルから自力で這い出てきた。


 あぁああ、なんという人生だったのだろう。

 おそらく別の道もあったはずだ。

  

 千穂を忘れ、それなりの幸せを掴む選択もできたはずだ。

 だが、私が選んだのはこのような意味も価値も、何もない自己満足の人生。


 私の80年はこうして終わる。


 過去の私をこの「ワタシ」は変えることはできるのだろうか。

 閉じようとする瞼から涙が溢れる。


 今生まれしワタシよ。

 どうかあの時の「私」を救ってほしい。


 私の時が終わる、その瞬間。

 私が考えたのは私の顔を伺う「ワタシ」への謝罪の気持ちだった。


 「す、すま…ない」


 許せとは言わない。

 だが、許してやってほしいのだ。


 


 愛しい我が娘よ。

 

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