あなたにとっての青春とはなんでしょう?
「斎藤さん、あなたにとっての青春とはなんでしょう?」
夢野のクエスチョン。いつもながらの唐突さである。
斎藤は腕を組み、うーんと悩み始める。
そんなに真面目に考えることないのに。
「うーむ。女の子の前で言うことじゃないかもしれんが、やっぱり女の子じゃないかなぁ。
女の子といちゃいちゃして、それを見せびらかして、エッチなことできればそれが青春じゃいのかなぁ」
正直すぎるだろ。
どんだけ煩悩丸出しなんだよ。
「なるほど。参考になります」
何の参考にするんだよ。
思わずこことのなかでツッコミ。
時計を見る。
もうすぐ1限の授業が終わる時間だ。
2限の試験どうするか。
サボるか?
また、千穂に怒鳴られそうだが。
そう思うと不思議と顔が微笑んでしまう。
「さて、そこのにやけ面のお兄ちゃん。
あなたにとっての青春はなんです?」
「僕にも聞くのかよ」
「ええ、そんなに興味もないですが。
この流れで聞かないと失礼な気がしまして、一応」
「そんなこと言われて誰が話すか」
「いいじゃないですかー。話してくださいよ。斎藤さんも聞きたいですよね」
「え、あぁ。まぁ、うーん、まあ」
「めちゃくちゃ興味なさそうだな!」
ちっ、この場はとりあえず何か発言しないと話が進まないだろう。
進める話もないが……。
「青春かぁ。単なる言葉だろ。若いころの数年がそう呼ばれている、それだけのことだ」
「単なる言葉だろ。それだけのことだ。
……ぷっぷーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!」
僕の言葉をなぞると夢野は思いっきり吹き出した。
「聞きましたー、斎藤さん? 大学生にもなって中2病全開ですよねー!!」
「そうだな、割とガチでひくわな」
なんだこいつら。
妙に息がピッタリだ。
「笑うな! 別に間違っていないだろうに」
「間違っていますよ。
青春とは①若く元気な時代。人生の春にたとえられる時期。青年時代。春。陽春のことですよ」
どうして辞典の言葉暗記しているんだ、この女。
「まぁ、秋山のはどうもいいや。彼方ちゃんにとっての青春はなんなの」
「私にとっての青春ですか」
夢野は前髪を抑え、空を見上げた。
どこを見ているのか、その眼は虚空、感情を感じ取れない。
「私にとっての青春は誰かに奪われてしまいました」
その表情は10代の少女にはとても思えない悲痛な表情でもあり、何もかも諦めた諦観の表情でもあった。
何か声をかけようかと、考えを巡らしていたその瞬間、叫び声が空間を割いた。




