少ないだろ? 友達
「君に言う必要はない」
「いいじゃないですか。
教えてくださいよ。ケチくさい男は嫌われますよ」
唇を尖らせ、文句を垂れる。
「これは私からの忠告です。
後悔したくないなら、自分の気持ちを伝えるべきです」
いつになく真剣な顔だ。
なぜこの女がここまで僕と千穂のことにとやかく口を出すのだろう。
何かのメリットがあるのか?
わからない。
「よぉー、秋山!」
不意に間延びして、くぐもった男の声が背後から届いた。
こんな声に呼ばれても嬉しくもない。
「なんだ? 斎藤」
へらへらした巨漢の男がゆったりのったり僕と夢野がいるテーブルに近づいてくる。
「お前デスゾーンに踏み込むなんて、気でも違えたか?」
そう言って豪快に笑う……が、その笑顔は夢野の姿を見た瞬間に凍り付いた。
「ば、馬鹿な……! 秋山が……秋山が女の子とデスゾーンにいるなんて、
お、おおおおお俺は信じないぃぃ!!」
いきなりの現実逃避である。
「はじめまして、斎藤さん。
兄からよく話は伺っています」
「あ、あにっ?」
と斎藤。
「兄っ!?」
と僕。
わけわからん。
急に設定を変えてきやがった。
しかも、今度は兄だと?
だが、いくらなんでもこれでは……。
「いやぁ、だけど全然似てないよな」
斎藤は怪訝そうに眉を顰める。
そりゃあ、そうだ。
似てないもの。
「腹違いの妹なんです」
よくもまぁ、呼吸をするように口からデマカセが出るやつだ。
「そ、そうなのかー?」
「そうなんです。
そんなことよりも私は斎藤さんにお会いできて嬉しいです。
数少ない兄のご友人だと伺っています」
両手を合わせて口元に持っていく、ぶりっ子ポーズ。
単純な斎藤のことだ。
もう、顔の似ていない兄妹についての疑問は消えてしまったことだろう。
「あぁ。まあそうだね。
確かに秋山の友達は俺くらいだ。
こいつの友達の数は悲しくなるくらい少ない」
「少なくないわ!」
「少ないだろ? 友達」
と真顔の斎藤。
「こんな下らないことで嘘つかなくてもいいですよ。
余計に惨めに見えますし」
と憐れんだ目を向ける夢野。
2人ともいつか殺す。




