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でも、私可愛いですよね?

「おじいちゃんは松村千穂さんのことをどう思っていますか?」


 我が大学キャンパスには無駄に広いので、

 あまり足を踏み入れない場所も多い。

 今、僕と夢野がいるこの校舎裏の広場もその一つだ。

 季節の色とりどりの花々に囲まれた、

キャッチボールくらいできそうな広場には4つほどのベンチが置かれている。


 昼頃になると仲睦まじいカップルがここでいちゃころせっせと励んでいる。

 実に忌々しいことである。


 そのため、僕のような彼女はおろか女友達すらあまりいない可哀想な男は断固としてここには足を向けないように日ごろから心がけている。

通称「デスゾーン」


 だが、どうしてこうなった?


「おじいちゃん、聞いていますか?」


 昼時には若干早いが、人が全くいないわけではない。

なぜ、僕がここに座らねばならないんだ。


「悪いが、ここじゃ僕は落ち着けない。

場所を変えさせてもらうぞ」


 しかし、席を立とうとした僕の腕は夢野にギュッと掴まれた。


「別に人に見られてもいいじゃないですかー。

私と一緒だと嫌ですか?」


 そして強引に再び座らされる。


「私はここに座りたかったんです。いいじゃないですか、少しくらい」


 そう言う夢野の表情は哀愁を感じられた。

 ここに来たのは初めてじゃないのかなと、少し疑問に感じる。


「青春って感じでいいですよねぇ。それに私みたいなかわいい女の子と一緒でうれしくないですか?」


「嬉しくないね」


 即答で返してやる。


「即答とは失礼ですねー。

 でも、私可愛いですよね?」


 こいつの自信は底なし沼か。

 今日日、自分でそんなことをいうやつは少ないだろうに。


 確かに目の前にいる少女はめちゃくちゃかわいい。

 それは認める。

 少しSっ気のあり、蠱惑的な表情。

 ぷるんと弾力のある唇。

 シルクのような(どんなものか僕は知らない)金髪のショートヘア。


 完璧である。

 というか僕の理想の少女像がそこにあるのだ。


 だからこそ、なぜか怖いのだ。


「ふつうは喜ぶと思うんです」


「はい?」


「私のような女と話すことができるだけで大抵の男は舞い上がるはずなんです。なのに、おじいちゃんは素っ気ない。

とても悔しいです」


 悔しいと言いながら、その顔はなぜか嬉しそうだ。

 

「もしかしてゲイなんですか?」


「違うわ」


「むふふ、冗談です。

だから、最初の質問に戻るんです。

おじいちゃんは松村千穂さんのことをどう思っていますか?」

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