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死に損ないたちの岸辺  作者: ぜろ
第2章
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自分の足で

 初めてちゃんと家出をした日、私は夜の繁華街をフラフラと歩いていた。


 華やかな街の煌めきを眺めながら当てどなく歩き、喧騒に身を紛れ込ませると、自分の存在が遠のくような、ふわふわした錯覚に陥る。それでいて、ひとりぼっちじゃない気がしてくる。

 その不思議な感覚が癖になっていて、こうしてたまにふらりと家を抜け出して、都会の雑踏へ身を潜めていた。


 でもこの日は、二度と戻らないと決めて家を出てきた。

 スーツケースをガラガラ鳴らしながら、今日一晩どこで眠ろうかと考えていた。


 全財産は3万円。本当はさらに10万円あったのだけれど、全部妹に盗まれた。これからこの財布の中の3万円を少しずつ切り崩して、どうにか生きていかなければならないので、贅沢はできない。


 野宿でもなんでも良いから、休める場所を探さなければ。ため息をついた。


 机の鍵付きの引き出し部分という、ベタな場所にお金を隠していた私が悪い。

 空っぽになった引き出しに気づいた時は、これでは脱出計画はまた先延ばしになってしまうと絶望した。

 でも、そんなこともあろうかとコートのポケットに隠していた3万円だけは無事だったので、心底ホッとした。


 とりあえずは、なんとかなる。


 誰からも存在を消されてひっそりと生きるのは、もうごめんだ。

 自分の足であの地獄を抜け出したんだ。そう思うと、とたんに誇らしくなった。


 スマホは家に置いてきた。どうせ妹のお下がりのSIMなしだからWi-Fiがないと使えないし、GPSで居場所がバレるといけない。

 誰も探しはしないと思うけれど、念のため。


 不意に背後から声をかけられた。振り向くと、お酒くさいおじさんが立っていた。


「お姉ちゃん可愛いから、2万でどお?」


 ラッキー。探す手間が省けた。


 こうして私は、初日から仕事をゲットした。

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