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欲望司書と理想都市  作者: 鳥木野 望


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5/7

道中

いつもよりも短めな投稿です。今日は夜にもう一話投稿になります。

「ねえーー、司書ちゃんまだ農場つかないのー?狭いし、床堅いし居心地がとてもBADなんだけど!」

「まだ、都市部を抜けて二十分しか経ってないよ、後四十分くらいはかかるわ。紫陽花ちゃん最初凄いワクワクしていたのにもう飽きちゃった?」

「そりゃそうでしょうよ!せっかく外の世界に出られたのに運搬道路全部が壁に覆われていて、景色ぜんぜん見えないじゃない!」

僕は騒がしい紫陽花の言い分も多少理解することが出来た、運搬道路という名前の農場に続くただ真っすぐなだけの道は、左右に高い壁が作られているため、景色は一切見えずに、ずっと考えていた外の世界の現状を知ることはまだ出来なったため、少しこの十分間で気分が萎み気味になってきているのだろう。僕は未だに今この瞬間にでも後ろから追手が来て捕まらないか心配で心臓が痛いくらい脈打っているが、彼女は最初っから一貫して楽しそうにしていたし徐々に熱が冷めてきたの頃なのだろう。

響は僕の隣で片足を立てて目を閉じている。眠っているようには見えないが、何を思っているのだろうか?

更に三十分ほどが過ぎたころには数分おきに繰り返されていた、「まだ着かないの?」「まだよ」

の紫陽花と司書の応酬は数分前からはピタリとなくなり、今はもう誰も話さずにじっとその時が来るのを待つのみになっていた。じっとフロントガラスに映る変わらない真っすぐな道を眺め続けていると、やがて道の先に建造物らしきものが見えてくる。

「みんな、起きているかな?そろそろ減速帯に入るよ」

右耳のイヤホンから欲望司書の呼びかけが聞こえた。

「おおおお!遂に念願の目的地に着くの?よかったー数分遅れていたら私の張りつめていた緊張の糸が切れるところだったよー」

お前の切れそうだったのは堪忍袋の緒の方だろとは、思っていても言えなかった。ずっとじっと目を閉じていた響も車内で軽く背中を伸ばして、反応をした。

「やっとか、それにしても揺れたな。道は綺麗に舗装されているのに何でこんなに揺れるんだろうな」

響の疑問は僕も随分前に違和感を覚えたが、聞くほどの事でもなかったので気にせずにいた。

「うん?それはいくら綺麗に舗装をしてあって、定期的に補修している運搬道路でも、200キロオーバーで走行していたらけっこう揺れるわよ。これでも運搬物の破損を防ぐために最低限の車両調整はされているらしいけど、どちらにせよ人の乗ることを想定した調整ではないからね」

「ええ?200キロ?そんなにスピード出てたのかよ」

響は思わず声を荒げてしまうほど驚いているようだったが、僕は正直その驚きの理由が分からなかった、というのも実は僕は車に乗ったこと自体がずいぶん昔の事でほとんど記憶になかったからだ。

そうこうしているうちに遠くに見えていた豆粒ほどの大きさに見えていた建造物が近づき、その姿が見えるようになってきた。それと同時にトラックの揺れが急に少なくなった。どうやら欲望司書の作戦に書いてあった、第一減速帯に差し掛かったようだ。この減速帯では第一段階の速度抑制が行われるらしいが、ここではまだ飛び降りられないらしい。飛び降りたら死なないけど血だらけになるのは免れないと言っていた。僕たちが目的地にしているのはこの先の第二減速帯らしい。

「あれが第三人類食糧生産施設。通称農場ね。」

そういえば、今まで欲望司書はずっと農場と呼んでいたから勘違いしていたが、そこにあったのは、広大な農地でも、農場でもなく、天高くまで聳えるとてつもなく大きな建造物だった。

「な、なんだあれ。欲望司書、ほんとうにアレが農場なの?」

「ああ、そっか別にあの施設については現状手出し出来ないし関係ないから、説明とかしていなかったけど、みんなの思う農場とは少し違うよ。あの施設には農作物以外にも畜産とか研究とか色々入っているからあれだけ大きいんだ。太陽光も土も必要ないし、作物の害虫被害は防げるし、畜産の病気とかも素早く対応が可能だし、メリットしかない構造だね。まあ、研究分野の中には少し不愉快内容もあるから将来的には潰したいけどね」

衝撃的な事実だったが、研究が絡む内容であれば恐らくあそこで働いている人間も多数いるのだろう。AIが人類に唯一求めている仕事が研究なのだから。

僕はじっとその建物を見つめた。この天を貫く威容を誇示した建造物は僕たちのこれから立ち向かわなければいけない強大な敵への暗喩のように思えた。

正直笑い話にもならないだろう、このように得体の知れないAIに唆されて都市を抜け出し、多数決を採ることもなくただ気に食わないから反旗を翻す。

たとえ民衆がAIの教育と言う洗脳をされているとしても、多数が現状を認めるならそれは間違った行いになるのだろう。

旧人類社会に置き換えて考えても、ただ扇動者がAIか権力者かの違いで、恐らくそこに平等と公正の理念から考えれば正義の天秤はAiに傾くのだろう。もちろんAIというただのプログラムに人類と同じ土俵で天秤に乗ることが許されているかは議論の余地はあるが。

「なんだよ、リーダー。難しい顔して考え事か?もうすぐ50M減速帯で作戦だとそこで、このクソ乗り心地の悪いトラックとはおさらばするんだろ。いつでも動けるようにリーダーも身体ほぐしとけよ。」

思考の渦に飲み込まれていた僕の肩を響が軽く叩いてきて、僕は意識を引き戻した。響きは狭い車内で器用に肩や手の指をストレッチしていた。僕もそれに倣い少し首を回し、腕を小さく回した。

ふにっ、

「あ、ごめん。」

腕を動かしていたら、紫陽花の腕に当たってしまった。

「いいよー、スキンシップは親愛の証。紅葉君は私のダーリンだし。」

「ダーリンじゃないし。そのからかい方はする相手選ばないとだめだよ。」

「なんで?お互いが、冗談って分かっているならいいじゃん」

「本気で惚れちゃうよ?それはよろしくないでしょ?」

「そうかな。まあ、じゃあ止めるけどさ。何考えているかは大体わかるけどさ、リーダーは考えすぎだね。その性質は考えることで発展してきた人類の強みだけど、同時に意味のないことにまで意味を求めてしまい人生の貴重な時間を浪費するのは私たちの弱点でもあると思うよ、足踏みはほどほどにしないと私、待つのも合わせるのも嫌いだから一人で突っ走っちゃうからね?」

響に続いて紫陽花からも発破をかけられてしまい、僕は自分の不甲斐なさを悔いてもう一度大きく息を吸い込んだ。

「みんな、第二減速帯に入ったから。一人ずつ降りるわよ。響君側のドアから、順番に降りて。降りたら迎えが来るから少しその場で待機でお願いね」

そう欲望司書から合図があった時に車の速度が急激に落ちて、ここで止まるのではないかと少し不安になったが、のろのろとまさに牛歩でゆっくりと動き続けていた。


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