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民衆の先導者は誰に煽動されたのか

「第二次ラッダイト運動…」


思い出したくもない10年前の惨状が蘇る。

ラッダイト運動。産業革命初期。手工業者の生活苦や失業の原因を全て機械導入と技術革新のせいとした強硬派の先導者達によって起こったもの。死者数は穏健派だけでも数万人を超え、全体では約20万人とされている。街全体が死体に溢れ、疫病も蔓延したその世界は地獄そのものと言えるほどだった。多くの者が死んだ後、良い地位を獲得した強硬派にも多くの被害者が出たことで運動は自動的に終息へと向かった。その後の処理はそこで戴冠した王が迅速な対応を王国軍によって行わせた。その時の王が今現在まで安寧を築き議会制も導入し近代化を成功させた。強硬派の意見も取り入れる機会を与えたのだ。


「そんな…」


シャオの顔が曇る。

シャオ含め今の世代の子供達は片親や孤児となったものが多く、人口減少の弊害で飢餓に苦しむ人間が少なくなかった。そんな世の中を変えるための希望として白羽の矢が立ったのが自動人形である。発明家である私の父の構想があり一族総出で開発に励んだ。1年後頭角を表した天才ルイによって農耕用自動人形初期型が完成した。この功績により父は穏健派のトップとして認められ地位と莫大な資産をを獲得した。それに反対をだしたのも強硬派


「親父を恨む奴等も最近じゃ増えてきた。昔の功績なんか民衆には関係ねぇ。今が不満なら捌け口が必要だからな。そしてそういう奴らは」


「集団になり攻撃的になる。それを煽動するのは」


「強硬派の生き残りです…」


「姫行方不明にも説明がつく。姫を使って王を脅せば表立って王国軍を動かすことを阻止することができる。新聞に掲載をを頼んだことの説明はつかないが、今穏健派の立場が揺いでいるのは間違いなく事実だと思う」


「姫の失踪までの動向について調べたが、当日の朝の王国軍の護衛が…」


「元強硬派の穏健派のエディンバラ公だ」


「エディンバラ?あそこは元来学術都市の出版業が盛んな地域だしこの国の新聞業の総元締めも」


「エディンバラ」


「直近の事件が起こった場所は?」


「エディンバラ城のお膝元だ」


「嫌なところに繋がったな…」


エディンバラ

古代からあるとされ紀元前9世紀に人間の定住が始まった歴史あるエディンバラ城があり、中にある最古建造物は12世紀初頭のセント・マーガレット教会堂として知られ、他にも多くの建造物が残る由緒正しい領地である。


「このままじゃまずいです!早く社長のお父様に」


「ただの自滅だろう。笑えるね…そもそも彼は俺を見限った。俺から動く筋合いもないだろう」


「兄弟。それについて預かってきたものがある」


そう言ってルイはテーブルに一通の手紙を置いた。シーリングスタンプの紋章には忌々しい龍の姿があった。


「それを今すぐどこかへやってくれないか」


「兄弟。今は昔のいざこざで揉めている時ではないだろう?」


ナイフで蝋を剥がす。中には羊皮紙の紙と前金が同封されていた。


「父上からの手紙だ。」


息子へ


これは命令である。

エディンバラ城に乗り込み一件を煽動する領主アーケインを殺害し鎮静化を図れ。

今我々には時間がない。動かせる戦力もない。一族が生き残るために尽力せよ。

報酬は私の元に謁見し渡すことにする。

成功した暁には、あの者も一族としての名を名乗ることを許そう。


ウラノス


「一族ねぇ。」


「我々が表立って生活ができるのも父上のお陰、龍の紋章など数年前までは悪の象徴として掲げることすら叶わなかっただろう。裏の社会に生きる我らが表の社会に出れたのは」


「自動人形の開発は兄さんのおかげだろう。それに手を汚す人間はいる。一族の栄光なんかがあるからあいつはいまだに裏で生きて、こうしてまた人を殺す」


「それじゃあ」


「俺も呪われた一族の端くれだ。言われた仕事はしっかりこなす実行は明後日だ。しっかり準備はしよう。」


「兄弟。俺の部下たちも」


「ありがたいが侵入と実行には関与させたくない。」


「それでは周辺の見張りや物資の運搬をさせよう。それに今回は私も出よう。」


「兄さん!?ダメだ兄さんは」


「可愛い兄弟を一人で生かせる訳にはいかないだろう。それに戦闘用自動人形の実験もしたい…いいだろう?」

ルイは笑顔微笑む。断れるわけがない。


「…わかった」


ウラノス家

血の繋がりが強い本家と分家に別れている国の中でも最も大きいと言われる名家だが元来王国直属の暗部の位置付けにあった日の当たらない家である。

地位の獲得のため命令があればどんな汚いことだって進んで行い、自らの家の存続のために生き、彼らは死をも躊躇わないだろう。


そう恐れられたウラノス家。


しかしラッダイト運動によって権威は地に落ちることとなる。事件を未然に防げなかったことで国王からの信用を失った親父が頼った最後の綱が弟の自動人形事業である。結果、国に多くの被害が出た被災地の復興に大きな貢献をしたことで国王としても切るにきれない重要な地位につけることができたのだ。

親父は超実力主義で実力のないと判断したら実の子すら手にかけるような男だった。しかし前回のラッダイト事件で多くの臣下を失い、今では力を失いつつある。そこで今回第二次ラッダイト運動が起きれば今度こそ暗部としてのウラノス家の名は汚名に変わるだろう。


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