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4.妖精さん×2はうちの食卓で朝食を

翌朝。

顔を洗っていると、玄関先から大きな声が聞こえた。


「ジェールーバーちゃん!あーそーびーましょー!!」


ふいに十年くらい時間が戻ったような気になる。

昔、よくリクオルはこうやって朝早くから誘いに来たっけ。


あらあらいらっしゃい、と母さんが迎え入れている声が聞こえる。やれやれ。

早朝から他人の家訪ねるとか、迷惑だって何回言っても覚えないよね。


で、身支度を整えて食堂に行くと、そこには美少年がふたり、ちんまり並んで、うちの朝食をとっていた。


「あ、ジェルバちゃん、遅かったね。今日もママンのご飯は最高だよ!」


「ジェルバさん、朝早くから申し訳ありません。

 しかし、母上のお料理はジェルバさんに負けずとも劣らぬ美味・・・」


ふたりしてフォークを振り回して、うちの母さんのご飯がどれだけ美味しいかを朝からたっぷり力説してくれた。


・・・いや、知ってます。


席につくとわたしの前にも栄養たっぷりな朝食が並ぶ。母さん有難う。


「さあ、ジェルバちゃん、たっぷり召し上がれ。」


得意げにリクオルが勧めてくれる。

いや、あんたに言われなくても食べるけどさ。


「今日はお友だちがふたりも来てくれるなんて。

 よかったわね、ジェルバ。」


母さんはなんだか嬉しそうだ。

朝からご飯を余分に作らされて迷惑だとか、そういう顔は一切しない。

だからこそリクオルが調子に乗るんだろうけど。


「ママン、お弁当のおかずには玉子焼き、入れてくれた?」


リクオルが母さんに甘えるように言う。

いやだから、この人はあんたのママンじゃないってば。


「もちろんよ、リクオル。

 お砂糖をたーっぷり入れて甘くしておいたからね?」


「やったー。

 甘い玉子焼き、オレ、だーい好き。」


なんか、ふたりの間にちっちゃなハートが飛び交っているのが見える。

まるで仲良しの母子のように。

てか、リクオル?この人は、わたしの母親なんだからね?


「突然やってきてご迷惑ばかりおかけして、申し訳ありません。」


ミールムのほうはリクオルよりはいささか常識があるらしい。

ぺこり、と頭を下げると、母さんの目尻が下がった。


「まあ!なんて、礼儀正しいの?

 いいのよ?ジェルバのお友だちですもの。

 遠慮なんかしないで、なんでも言ってね?」


「恐縮です。」


ミールムってば、リクオルと同級生らしいけど、リクオルよりだいぶ大人っぽい。

リクオルのほうは、もうまったく遠慮も礼儀もなってなくて、ちょっと恥かしいくらい。

ごめんね、うちの幼馴染が、と思わず謝ってしまいそうになる。

まあ、リクオルの礼儀がなってないのはわたしのせいじゃないんだけど。


頭を下げるミールムの横でリクオルが元気に右手を上げる。


「じゃあ、ママン!

 夕方、晩ご飯また取りに来るから、昨日みたいにバスケットにつめておいてよ。

 もちろん、三人分ね?」


おいおい。

あんたはちょっとは遠慮しろよ。リクオル。


「いいわよ、リクオル。

 たくさん食べて、元気に大きくなってね?」


いやいや、母さん。

リクオルは確かに幼く見えるけども。

多分、もうこれ以上は大きくなりません。


「うん!ママン。

 オレ、おっきく強くなって、ちゃんとジェルバちゃんを守れる男になるからね?」


「そういうことはわたしに腕相撲で勝てるようになってから言いな。」


思わず言わずにいられなかった。

リクオルは、ぐ、とうなって黙り込んだ。

昔っから、一度としてリクオルはわたしに勝てたことはない。


ミールムは小さく咳払いをして口元をナプキンでぬぐう。

わたしたちがしゃべっている間に食事を終えてしまったようだ。


「母上、ごちそうさまでした。とても美味しゅうございました。」


「あら?紅茶のお代わりは如何?

 フルーツも召し上がれ。」


母さんはもっと食べろと勧める。

ミールムは恐縮しつつも、誘惑に負けてまたフォークを握った。


「恐縮です。

 この紅茶はとてもよい香りですね?」


「地元産の茶葉なのよ。

 この村は田舎だけど、とても美味しいお茶が取れるの。」


「ほう。それはまた、興味深い。」


ミールムはうなずきながら紅茶を啜って、また、うむ、とうなずいた。


「なんとも美味しいお茶です。

 持って帰りたくなります。」


「なら缶につめてあげましょう。」


「それは有難い。

 いや、なんの手土産も持参せずに、いただいてばかりで本当に申し訳ない。

 王都にお越しの折りには、是非、わたしを訪ねてください。

 王都名物をたくさんご馳走しますよ。」


「まあ。それは楽しみだわ。」


母さんはにこにこと上機嫌で返した。


「ミールムは、昨日はリクオルの小屋に?」


「そうなんだよ。

 ミールムってば、オレのベットを占領してさ?

 オレ、狭くって寝られないから、今日からジェルバちゃんの家に来てもいい?」


リクオルがここぞとばかりに訴えてくる。


「台所の床で寝るならいいよ。」


「えーーー、オレ、ジェルバちゃんと一緒のベットでいいよ?」


「却下。」


わたしより小柄なミールムとふたりで狭いんなら、わたしと一緒だともっと狭いでしょうが。


「だいたい、リクオルん家って、じっちゃんの使ってたベットあるんじゃないの?」


「あ。覚えてた?」


当たり前だ。


「ばらばらにしてしまってあるからさ。

 昨日は遅くて面倒だったからもう出さなかったんだよね。」


「なら、今日出せばいいんじゃない?」


「・・・しょうがないな、もう。」


しょうがないのはあんただ。


「まあ、どっちみち遺跡の調査が終わるまでは小屋の改装もお預けだしね。

 あっちのスペースならベットのひとつくらい置けるかな。」


「リクオルたちが調査してる間に、わたし、改装のほうを進めててもいいよ?」


「だーめ。ジェルバちゃんも一緒に来るの。」


まあ、そう言うんでしょうね。


「じゃ、ちゃっちゃとベット組み立ててから行くかな。

 帰ってからやるのはまた大変でしょ?」


「はーい。」


リクオルは嬉しそうに手を上げる。

力仕事は苦手だから手伝ってもらえて嬉しいらしい。


ごちそうさま、と席を立つと、母さんが特大のバスケットをよこした。


「うわ。すげー!」


リクオルがきらきらの目を大きくする。


「母上、どうも有難うございます。」


ぺこりと頭を下げるミールムも、なんだか嬉しそうだ。


しっかし、そのでっかいバスケット、持って歩くのって、やっぱ、わたしですよね?


「これ、流石にちょっと、大きすぎない?」


「だって、三人分だもの。」


いやいや、このサイズは五人分くらいあると思いますけどね。

しかし、リクオルもミールムも小柄なわりに常人の二人前は軽く食べる。


「・・・遊びに行くんじゃないんだけど・・・」


「大事なお仕事なのよね?

 だからいつもより張り切ってたくさん作っちゃった。」


いや、母さん、それは、その、有難いんですけども・・・


「いざ!ママンのお弁当持って、遺跡探検に出発~!!」


嬉しそうに右腕を上げるリクオルにため息が出る。

遺跡探検って、あんたそれ、完全にピクニックかなにかと勘違いしてるでしょ?


「出発~出発~」


リクオルに合わせるようにミールムも手を挙げた。


「出発~、気を付けていってらっしゃい~」


母さんも合わせて手を挙げている。

なんだかみんなして楽しそうだ。


リクオルの目が何かを期待するようにわたしを見るけども。

その期待には断じて答えませんとも。


「じゃ、行くよ。」


バスケットを手に持つと、わたしはそそくさと出かけた。


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