第16話 魔界
メルは持ってきたティーセットをテーブルの上に置くと、右手にクッキーを持ちながら近ずいてきた。
「てか、勝手にお邪魔したらだめじゃないのか?」
「大丈夫。お母さんには伝えてあるから。それにここからの方が向こう側に行きやすいからね」
「向こう側?」
右手に持っているクッキーをかじり食べているメルを観ると何故か癒されてしまう。
「魔人達が住む。世界の片割れだよ」
「いやいや、なんで行くことになってんだよ」
「だって、魔人の王様に呼ばれたから仕方ないじゃん。それにつきそう人連れてこいて言われたから、貴方を連れてきたんだよ?」
「なるほどなぁ。てか向こう側に王国なんかあるんだな」
「一応あるよ。王国て言ってもそこしかないけどね。」
「つまり、あれか、世界の半分を支配している王国てことか?」
「そういうこと」
なんでそんなとこにお呼ばれされてんだよ。
全く、俺が手の届かない所にまで進みやがって…
テーブルの上のティーセットからコップを取り出し、ポットからお茶を入れていると、メルが食べているクッキーが気になりつまんでみると、なかなか美味しかった。
「うま…。メルがつくったのか?」
「ん? クッキーね。私じゃないけど、どうして?」
「いや、なんとなくだが…」
「ふーん。食べたいならそのうち作ってあげるけど、あんまり期待しないでよ?」
メルが少し頬を赤くして、こっちに背中を見せながら、こっちを向いていた。
「ういうい」
綺麗な身体のラインが見えるが、でこぼこしていない。
まぁ、成長期だから!と言って何も変わっていないような気がするが、
「お待たせしました。メル様とルース様ですね」
突然部屋の扉の前に魔法陣が現れ、その中から魔人の姿で、メイド服をきた怪しい女性がでてきた。
「きたきた。ほらほら。早くいくよ〜。」
メルに手を引っ張られ、現れた魔人の人にぶつかりそうになると、すり抜けてしまい、そのまま魔法陣が発動した。
「ちょ、待てぇぇぇぇ………」
★★★
瞼を開けると目の前には見知らぬ街が拡がっていた。
路地裏に転移したようで、ここから見える1本の広い道には多くの魔人たちが集まり、その真ん中に馬のようなものに乗った魔人達に手を振っている様子が見えた。
「とりあえず、ルースがここにいると襲撃されるからこれ被って」
メルは相変わらずどこからか取り出したか分からないフード付きマントを取り出すと、俺に被せた。
めっちゃ地味だなこれ…。
なんか、変な匂いするし、
「襲撃て、ああ、そういう事か」
「そゆこと、パーティもあるはずだからその時も変装させるからね?」
「まじかぁ〜。てかホントなんで俺連れてきたし」
「いいから、着いてきて」
ここは首都 ベルクール。 魔王が住む都として日々栄えている都市だ。人口は、およそ一億と呼ばれ、その中には亜人達もいるという。
しかし、現在魔人と人間達は仲が悪く、交易すら行っていないという。
そのため、姿を隠すために俺にこんなものをかぶせたのだろう。
「後ちょっと…」
こそこそと、裏路地を通りながら徐々に城に近づいてはいるが、見えた先には巨大な門と塀があり、そのまわりには、魔人の兵士達がうろうろしていた。
「てか、正式にまぬかれたんじゃないのか?」
「違うけど? 私はともかく誰かさんが付き添い人じゃ、正式になんて無理でしょ?」
「まぁ確かにな」
メルは俺の手を引っ張って門に近づくと、一人の兵士に停められた。
「お前たちここで何をしている! ここは城門前だぞ!」
「全く…これだからここの兵士か嫌いなんだよねぇ…」
「何を言っている貴様!」
「礼儀知らずに貴様呼ばわりとかされたくないんですけど…」
「な、何を…この小娘がァァァァ」
やべぇ、メルくそ煽ってんじゃねぇかよ!
それキレられてもおかしくねぇ。
てか、この状況なら行けるか。
メルに持っていた槍を突き刺そうとする兵士の腹に1発拳をぶつけると、あっさり目の前の塀まで吹っ飛んでいってしまった。
「助けてくれたのは嬉しいけど、あんまり暴力はしないでよね? 私の騎士さん」
「へいへい。てかあいつ大丈夫かよ」
「問題ないわ、時間の魔術で傷と塀の壊れたとこも治しておいたから」
目の前の塀をみると、埋め込んでいた兵士が地面に倒れ、気絶しており、塀には傷1つ残っていなかった。
突然空から何かが降ってきた。
「これはこれは、メル様。無礼をお許し下さい」
砂吹雪から出てきたのは、いかにも金持ちのような人が出てきた。
「別に、私はただ小娘て呼ばれたから吹っ飛ばしたまでよ?」
「ははは、ご冗談を、そちらのフードを被った騎士殿がしたのでしょう?」
「全く。二百年ぶりに会ったと思ったら観てたのね」
「ええ、もちろん」
「とにかく、城に入りたいからもう飛んでってもいいよね?」
「構いませんよ。そちらの騎士殿も一緒になら」
「当たり前よ! これでも私のフィアンセなんだから!」
「ほほぉ。メルがいなくなってから二百年。男を連れて戻ってくるとは…。面白そうですなぁ」
そんなことを、聞いていると突然身体が軽くなりメルに手を掴まれて、そのまま城門を飛び越え城のテラスに着地した。
「全く。なんでデゥークスが戻てるのよ…」
「デゥークスて、さっきの金持ちそうなおっちゃんか?」
「そう。二百年前に求婚持ち込まれたけど振ったから」
「待て待て、そんなにメル長生きだったか?」
「いいえ? こっちの世界の100年は向こうの世界での2年だからそんなもんじゃないの?」
「まじかぁ、て、2年前て俺が冒険者しながら誰かさんを探してた時じゃねぇか」
「とにかく。中に入りましょ。こっちの世界は向こうより寒いから」
確かにこっち側に来てから体の震えが止まらない。圧倒的、寒さで向こうの世界とでは季節は真反対なのだろう。
ガラスのような水晶の扉を開けて部屋に入ると、そこには見たことある絵画が並んでいた。
「なぁ、ここてメルの部屋か?」
「ん? まぁね。なんでわかったの?」
「いや、ここら辺に置いてある絵画とかが、館で見たメルの部屋のやつと同じだなて」
「ふーん。細かいとこ見てるじゃん」
「てことはあれか? メルはフェルルさんと魔王の娘なのか?」
「そういうこと、お姫様なんていやだからお母さんに頼んであの館に住んでたけどね」
「よく許したな親父さん」
「当たり前よ。娘の願いを聞いてなんでも叶えてくれる人だもの」
「親バカか」
「そだよ。鬱陶しいぐらい親バカなんだぁ。だって今そこにいるし」
メルが指を指した方を見つめると、壁紙が動き何かモゾモゾしているのがわかった。
「パパ! そこから出てこないともうここに帰らないからね!」
とメルが冗談で言ったのか苦笑いしながら言うと、壁紙が剥がれ落ち、隣にいたメルに髭を生やしたおっさんが抱きついてきた。
「やめてくれぇ。パパ、この200年間ずっと寂しかったんだぞぉぉぉ」
「はいはい。分かったから泣かないでよ」
メルは父親らしき人物に、抱き返すと何故か急に父親から離れていった。
なんなんだ、この家族…。
「それで、そちらの人間の男は誰かね? 見た感じだが、彼に魔が少し入ってるようだが」
「あ、聴いてないんだ」
「何をだ?」
「この人、私のフィアンセだから」
「な、何ぃぃぃ! き、貴様! 娘に何をしたああ!」
突然父親が、俺の服を引っ張り上げてきた。
メルよりも数十倍の力で引っ張て来たせいか、マントが砕け散り、被っていたフードが取れてしまった。
やり返そうと思ったその時、メルの渾身の右ストレートが、父親の腹に直撃しているとこが見えた。
「ぐふ、反抗期になったのか…。ガク」
「ガクて自分から言ってるし」
メルは渾身の右ストレートを放った右手をどこからか出てきた綺麗な紺色のハンカチで拭き取ると、倒れている父親を靴を履いたまま蹴り飛ばした。
どこまで飛んでったんだあれ…。
水晶の扉が割れ、外に吹っ飛んでいく姿は見えたがその後のは光になってどこかへ飛んでいで行ってしまった。
「これだから、帰りたくなかったのに…」
「なんか納得したかも…」
メルが座っているベットに俺と座ると、メルがこっちに肩を寄せてきた。
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