98 昼ごはん
「これは面白いな」
ギルがそういうと、クリスは少しムスッとする。
「いや、褒めてるんだぞ。確かに地味かもしれんが、それだけに有効だ。
腕にあてれば、間違いなく力がはいらなくなるし、足に当てればバランスを崩すだろう。
まぁ、それだけに誤爆だけは勘弁してくれよ。」
そういわれて、クリスは機嫌を少し直したようだ。
カティアは、その表情がクルクル変わる様子を見て面白がっているが、クリスの成長には驚きを禁じ得ない。クリスが魔法を覚えると言い出してから、そこまで時間がたっていない。
確かに威力も弱いし、課題も多いのだが、曲がりなりにも魔法を平気で使ったのだ。
カティアやフェスカの指導があるとはいえ、学院にも通わずに。
「へへ。冬にドアに触れるときに、ビビっとくるときあるでしょ?あれをイメージしたの。」
「なるほどね。あれは嫌なもんだが、戦闘に使えるとはね。」
簡単にクリスはいうが、この感性が凄いのだ。
普通は、あれを雷の属性の魔法で再現できるとは思わないだろうし、しようと思わないだろう。
ある種の天才だとカティアは思うのだ。
これでも、自分も天才といわれたのだが、クリスと比べると嫉妬すら覚える。
「魔法を過信はしちゃだめよ。」
一応は釘はさしておく。魔法は万能ではない。
何も魔法使いに限ったことではないが、才能があると期待された者が些細なことで散っていくことのなんと多いことか。
クリスも、カティアの意思を感じ取ったのか素直に頷いた。
・・・・
「で、どうする?」
とりあえず、必要であった岩蜥蜴の肝臓は手に入れた。
あとはエリー湖に生えている「黒昆布」をどうするかだ。
なんだかんだで時間的にも、体力的にも余裕がある。
今のところリザードマンの影もない。
「とりあえず、お昼ごはんにしませんか?」
ウェンツとギルが相談しようとしていると、フェルが声をかけた。
確かに、日はちょうど南の空高く登っており、言われてみると食事をするにはいい時間だ。
いつ戦いが起こるかもしれないから、腹いっぱい食べるわけにはいかないが、いつ戦いが起こるかわからないからこそ、食べれるときに食べておくべきだろう。
「そうだな。食べながら検討しよう。」
通常、このような場合の食事といえば堅いパンに干し肉、良くて野菜くずのスープなどの携帯性優先の食事になる。暁のカルテットもつい最近まではそうであった。
しかし、フェルが加入してからは大きくこれが改善している。
もちろん、町で食べるものとの差はあるが、ニースが事前に用意していた柔らかく嵩張るものが食せるのだ。
「もう、こればっかりは戻れないわね・・・。フェル君優秀。」
ニースがちょっと失礼な本音をつい言ってしまい、それを聞いて、フェルも苦笑してしまう。
今日は、ニース特製のサンドイッチとコーンスープなのだが、パンは柔らかくスープは調理済の状態で温かいまま出てくるのだ。
美味い食事は人生の彩という言葉があるが、やる気に直結するとニースは考えているのだ。
「で、どうします?」
サンドイッチを頬張りながら、こんどはフェルが確認する。
「フェルはどう思う?」
「僕はここまで来ているなら、できることならバーンのために取りに行ってあげたいと思います。
でも、だからといって無理をする必要はないと思います。」
「クリスは?」
「私も、フェルと同じ。でも、このメンバーならいける気がするわ。
危なくなったら、逃げればいいし。」
ウェンツは頷きながら他のメンバーをみる。
いうほど逃げるというのは簡単なことではないが、カティアの祝福<ブレス>や先ほどのクリスの雷の魔法は逃げる際にも役に立つ。
「折角だから、いきましょうよ。
ゼペットさんやバーンには恩しかないし。」
カティアの返事を受けてギルとニースもうなずいた。
「よし。決まったな。だが、肝を持って帰るのが優先だから危なくなったらすぐに撤退する。いいな。」
今日は、短めですみません。
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