96 薬の材料
「ああ、フェルよかったよ。ちょっと頼みたいことがあってね。」
ゼペット薬屋の薬屋で会ったバーンは、フェル達の顔を見るなりカウンターに来てそういった。
すでにギルドでクリスとカティアとも合流している。なにやら収穫があったらしく、クリスはとても上機嫌だった。
「どうしたの?いきなり。」
クリスが問う。
「いや、もう依頼を見てもらったかもしれないけれど、薬剤がいくつか欲しいんだけれど手に入らないんだよ。」
「薬剤?どんなやつ?」
薬の材料といっても千差万別である。
樹木や草、菌類などの植物の他、動物や魔物の内臓や爪、血などが多い。
場合に行っては鉱石などもある。
「うん。いくつか欲しいものはあるんだけれど、とりあえず急ぐのは『岩蜥蜴の肝臓』なんだ。
あと、できればエリー湖に生えている『黒昆布』も欲しい。」
岩蜥蜴の肝臓は随分前にバーンも含めた3人でゴルダの丘で採取したものだ。
その時の依頼主はゼペットであったし、それが今のゼペットとバーンの関係の最初である。
もっといえば、カティアが助かったのも、今こうして暁のカルテットとして活動しているのも、この依頼を受けてゼペットと知り合ったからといっても過言ではない。
「『岩蜥蜴の肝臓』は、どうしても定期的に必要なんだけれど、ほら、尻尾はともかく内臓はなかなか・・・。それに、最近あのあたりはリザードマンがよく出るだろう?よく行ってくれていたパーティーが怪我をして以来、採取に行ってくれるハンターがいなくってね。」
フェル達も何回か狩っているため慣れてはいるが、岩蜥蜴はとにかくすばやい。
性格が臆病で、積極的に襲ってくることは稀だし、直ぐに逃げるが、それでも鋭い歯を持つし口内に毒を持っている。素人が手を出して良い相手ではない。
そして、大体は、尻尾しか狩れない。
本来は、それでも十分金になるので、”たまたま”でも全体を狩れた場合に、依頼を見て納品してくれる者が今までは多かったらしい。
ところが、問題がリザードマンの遭遇が多くなったことである。
こちらは、一度対峙しているが危険極まりがない相手であった。
独自の言語で集団行動を行なうし、膂力は人間以上あるし、大体の場合、武器ももっている。
鱗でおおわれた体は、最初から天然の鎧をつけているようなものだ。
なにせ、フェルの鎧もウェンツやギルの盾もその鱗が材料なぐらいだ。
おそらく、単純な接近戦ならDランクハンターと互角以上といわれている。
稼ぎとしては悪くはないが、今なら季節がいいこともあって、他にも稼げる依頼はあるのだ。
「お客さんで血苞腫の方がいてね。そろそろ新しい薬を作らなければいけないんだけど、『岩蜥蜴の肝臓』が手に入らない。『黒昆布』の方もこの季節に手に入れて乾燥させておかなければいけないんだけど、エリー湖自体に行く人がいなくてね。」
「ギルドの注意喚起情報でも、エリー湖のリザードマンについては、注意度が上げられていたからな。」
ギルが頷く。
リザードマンは、エリー湖の湖畔のような湿地帯のような場所で相手をするのは危険以外の何者でもない。
「まぁ、ゼペットさんにもバーンにも恩があるからな。ましてや、フェルがいるから失敗しても赤字にはならんだろう。『黒昆布』までは約束できないが、明日でよければ『岩蜥蜴の肝臓』は取りに行ってやろう。皆もいいな?」
ウェンツがそういうと、皆頷く。
暁のカルテットは、平均より人数も多いし圧倒的に強い者はないものの、ギルドの中でもバランスが取れた良いパーティーだという自負はある。
フェル達だけで、一度こなした依頼なら、そう苦労せずにこなせると考えていた。
・・・
「おい・・・。あんなに早いのか。」
颯爽と、尻尾だけを切り落として逃げていく岩蜥蜴を見送りながらウェンツがつぶやく。
尻尾には、クロスボウやフェルの骨矢が刺さっており、切り落とされた後も、まだ結構動いている。
どうやら、暁のカルテットは岩蜥蜴を見たことはあっても、狩ったことはなかったらしい。
確かに、ほぼ近接攻撃のみの4人には、毒のある岩蜥蜴はあえて挑む敵でもなかったのだろう。
そして、その体格や岩の上でじっとしている様子だけをみていれば、早いとは聞いていても、あそこまでとは想像できなかったようだ。
「そういえば、僕たちも最初苦労したよね・・・。」
「ええ、フェルが何とか岩落としで1匹確保できたから良かったけど。」
「あれも、運よくだからね。」
フェルが尻尾を収納しながらクリスと、懐かしむように話す。
随分昔のように言うが、まだ半年もたっていない。
「これは、ちょっときついわね・・・。」
カティアが丘を登りながらため息をつく。
彼女は、もちろん普通の村人などよりは体力があるが、他のメンバーに比べて体力は低いし、攻撃力は低い。攻撃魔法ができないわけではないが、あまり得意な方ではないからだ。
6人で囲っても、あのスピードでは逃げられるのがオチだし、下手に突っ込んで噛まれたらそれはそれでことである。
「クリスちゃん。駄目もとでためしてみる?」
「ん。ちょうど良い練習台だとおもってやってみる。」
カティアがクリスに話しかけるとクリスが頷く。
「次の獲物がいたら、少し私にやらせて。覚えたての魔法を使ってみるから。
で、あたってもあたらなくても、速攻で接近戦で首を狙って。」
そういうと、クロスボウを地面に置いて、小さな細い杖を腰から抜いて手にした。
評価&ブックマーク、ありがとうございます。
PVも結構気にしてみてます。その一つひとつが、原動力になってます。
魔王も英雄も出てこない、盛り上がりもあまりないお話ですが、読んでくださる方がいるので、更新だけは頑張っていきたいです。(逆に、更新優先にしたら行き当たりばったりで話に軸がなくなってしまったんですが。)
なお、誤字報告機能をONにしました。お気づきの点がありましたら、こちらの機能をお使いください。




