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僕は、魔法が使えない。  作者: アーシェス
94/106

94 装備の拡充2

グラスコ武具店。

店舗そのものは決して大きくないのだが、メインストリートの間口のある老舗である。

そして、その特徴は、その店舗の奥にある大きな倉庫・・・蔵である。

既に店主は3代目らしいのだが、初代が名のある冒険者で一財産築いたのを堅実な商売で大きくしたのは2代目らしい。そして、今の店主の3代目はその教育と理念を受け継いで堅実な経営をしている。


この店の理念 「安い物には理由がある。高い物には価値がある。」である。


そのため、初心者が買うような金貨10枚以下の装備は基本置いていない。

もちろん、修理やパーツなどはその限りではないが、命を守るのにふさわしい物を扱うのがモットーだ。

とはいえ、いわゆるブランド志向というわけではない。

ここの自慢であり、”目利き”なのだ。


そのために、現在の3代目は一流の鍛冶屋や、ギルモアのギルドの付与魔術師に従事し数年の修行を経ている。自分で造るためではない。見抜くためである。

そこまでやる商人は、そうそういない。

それが、この店の強みであり、ネールもすすめる理由なのだ。



「すみませーん。」

そういって、店を訪れたのはウェンツ、ギル、ニース、そしてフェルの4人だった。

カティアとクリスは、欲しい装備があるわけではないということでフェスカの所で魔法の訓練をすると言っていた。まぁ、あまり大人数でいっても店も困るだろうという配慮もあったが。


店主のグラスコは、40代になったばかりという中肉中背の男性だった。ベストのポケットには、大きな虫眼鏡やらなにやら魔法具を留め具で留めた変わった格好をしている。


「いらっしゃい。」

そういうと、職業柄だろうか4人をゆっくりと注視する。

初顔であることを確認すると、見ているのは鎧などの装備だろう。


「ギルドのネールさんの紹介で来ました。暁のカルテットと言います。

主に盾などの装備が欲しくて来ました。」

ウェンツが話しかけると、グラスコは黙って頷きテーブルに座るように言う。


「ネールの紹介か。なら話は早い。まず、予算を聞こうか。」

ギルは、少し面食らった感じの表情をするが、ウェンツは落ち着いて対応をする。

予算を聞くのは商売の基本であるが、ここまでストレートにいきなり聞いてくる者はあまりいない。

そして、店にもかかわらず、愛想の一つもない。


「予算は、全部で金貨200枚程度です。これで盾を2枚と槍が欲しいです。」

「うむ。その前に、パーティーの概要や誰が使うかも聞かせてくれるか。」

誰が使うかを確認するのは当たり前だが、パーティーの概要とは?

「ああ、すまん。主にどんな奴を相手にするかだ。人相手か魔物相手か。魔物はどのクラスか。

最近、相手にしたやつでいいぞ。あと、使う者の役割とかだな。

戦士として殲滅力重視なのか魔法使いなどが主力が別にいて防御重視なのか。」


「まず、相手は主に魔物になります。最近なら跳龍や赤毛熊を相手にしています。

パーティーは6人です。前衛は私とギル、中衛がニース、後衛に魔法使い1名と弓使い2名です。

ただ、魔法使いは、補助系魔法の使い手なのと、弓使いのフェルは場合によっては接近戦もしています。盾が欲しいのが、私とギル。槍はニースです。」

ウェンツが、メンバーを紹介しながら説明をする。

それを聞きながら、グラスコは相槌を打ちながら紙にメモを取っていく。

跳龍や赤毛熊と聞いてから、途端に機嫌が良くなった気がしたのは気のせいではないだろう。


「なかなかじゃないか。選びがいがあるというものだな。

悪いが、ウェンツとギル、そしてニースは今つかっているメインの装備を順に見せてくれるか」

そういうと、グラスコは手をウェンツに出す。武器を見せろという事だろう。

今回買うものにどう関係するかはわからないが、とりあえずは言う通りにする。

ネールからは、色々相談に乗ってもらえると聞いているし、機嫌を損ねるなよと釘を刺されていた。


「ふむ。お前さんは?」

ウェンツに剣を返すとギルの剣を受け取って見る。最後にニースの槍とバックラーを確認するとため息をついた。


「予算はぎりぎりか?どこまでなら追加できる?」

グラスコはウェンツに問う。

「金貨10枚程度なら。」

グラスコは、満足げに頷くとしばらく待つように言って奥に行く。

店番兼用心棒と思われる男が、飲み物を持ってきてくれた。


「ご主人は、ちょっと気難しいところがあるのと、無愛想というかぶっきら棒なところが欠点ですが、目利きの腕は確かですので。」

そう男はフォローをする。

グラスコの対応は、商人というより職人のそれであった。

事前に聞いていなければ、不快に思ったであろう。まぁ、それでも正直驚いたが。



しばらくすると、グラスコは台車にいくつかの装備を乗せて戻ってきた。

どうやら、奥の倉庫から持ってきたようだ。


「ちょっと予算オーバーになるから、よく聞いて選ぶことだ。」

そういうと、ウェンツとギルの前にセミスパタと呼ばれる刀身は肉厚・幅広の両刃の長剣と鱗の貼りついた大型の盾、そしてニースの前にウェンツ達より一回り小さい方形の盾と細い金属製の槍を置いた。


「まず、男二人だが、盾と武器を用意した。いっちゃあ悪いがいくら良い盾だけがあってもその武器がメインではこの先厳しいだろう。よくそれで跳龍を相手にしたという感じだ。

剣そのものの質はそこまで高くないし、学院の生徒の作品だが、武器には巖鉄がかけられている。

盾の方も、リザードマンの鱗に硬質化、後ろの青銅の部分に軽量化の付与が施された複合盾だ。

こっちも、学院の生徒作だから一流とまではいかんが、悪くない出来だな。

値段は、それぞれついている値札をみてくれ。」

値札には、それぞれ値段が書いてあるが、同じセミスパタでも金貨値段が違う。

ギルの方が金貨5枚ほど安い。不思議そうな顔をしてみたのをみてグラスコが答える。


「同じ出来の作品なんてないからな。一流の名工の作品でもないし、付与も学生だからムラがある。

この値段帯はそこは妥協点だ。一応、剣の刃こぼれの仕方をみて、どちらが使う方がいいかを置かせてもらった。まぁ、交換するのは自由だが、値段=自分に合う剣じゃないからな。」

それを聞いて、ギルは頷く。確かにウェンツとギルでは剣の扱い方に差がある。

それは技量の差というよりも好みや癖に近い。


「で、お嬢さんは盾も用意した。バックラーってのは接近戦向けだからな。細身の槍を使うならもっと大型の盾を使うべきだ。こいつの表面は甲獣の表皮に硬質化、後ろの青銅の部分に軽量化の付与がされている。大きさは、男どものよりも小さいが軽くて強度も高い。なにより衝撃を少し緩和してくれるのが特徴だ。あと槍は鉄の槍に巖鉄を付与したものだ。

鉄の精製の時点で魔物の爪などをうまく配合できているので、武器としての性能の付与も悪くないはずだ。」

ニースの前に置かれた装備の値札をみると盾は金貨50枚、槍が40枚とある。かなりの金額だ。


「全部で金貨216枚だ。少しオーバーするが後悔はさせない自信はある。

まぁ、安くはないものだからよく考えな。」


それぞれが武器と盾を手に取ってまじまじと見て、少し振ったりしてみる。

そして頷き合う。


「それで、お願いします。」


いつも応援ありがとうございます!

最近、タイトルが仮づけのままなんで、ちょっと違和感があるかもしれないですがご容赦ください。

励みになりますので、下のブクマ、評価など、よろしくお願いします!


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