92 成長
翌日もフェル達は壁を作っていく。
既に1辺は作り終わっており、堅牢とまでは言わないが、十分に役割を果たせる土塁が積まれている。
昨日のティルクの話は、正直よくわからなかったフェルであるが、実感として、力を使うという感覚が少しづつわかるようになってきていた。
どうやら、転送は一回の転送の量に比例して消費する力の量が違うようだ。
重さなのか嵩なのか厳密なところまではわからないが、少なくとも少量転送した時と大きく転送した時の力の抜け方が違うのだけはわかった。
そして、力の抜ける感覚のあと、そのままかというと、1分もすれば徐々に普通の感覚に戻ってくる。
そう、何か危険な時に血の気が引く感覚に近い。
だから、連続して使える力の量には多分上限があるが、休憩しながらだとかなりの力の量が使える。
この辺は、魔法と似ているが回復するスピードが大分違う。
でも、やはり夕方にはかなりの疲れを覚えるから、無理は出来ないと考えていいのだろう。
それでも、一晩も寝れば力は完全に戻っている感じがする。
「ティルク。なんとなくわかってきた。
ティルクは手伝ってくれてるけれど、あくまで力を使ってるのは僕なんだね。
魔法の呪文ややり方をしらなくても、力の使い方だけ念じれば魔法が使えるって感じでいいのかな?」
ティルクは、ちょっと首をひねって考える。
「まぁ、あたらずとも遠からず・・・かな。
人間のいう魔法とはちょっと違うんだ。使っている力も違うし。
そうだなぁ・・魔法が魔法力っていうから、精霊力でいいかなぁ。働きかけるのもマナにじゃなくて精霊に対してだし。」
「ティルクは妖精じゃないの?」
「うーん。説明が難しいけど、広い意味で、妖精って精霊の一種なんだよ。」
「え?そうなんだ。」
「うん。このマナの世界と違う世界に本来住んでるっていう意味でね。
この世界の法則とは違う次元の力をもってるの。よく似た力が魔法にもあるんだけど、別の力なの。」
「うーん。難しいね。」
「まぁ、力の使い方がわかってくると、また自然にわかるようになるかもよ。」
「そっかな・・・。」
ティルクは、嘘もつかないし仲もいいし信頼もしているのだが、時々言っていることが理解が出来なかったり、肝心のことを言わなかったりする。悪気はないのだが、こればっかりはしょうがないのかもしれない。
・・・・
「ふう・・・やっとできた。」
壁を作ってから5日目の夕方。ついに村を一周する壁ができていた。
「ああ。あとは、四方の門だが、ここまできたらあとは任せてもいいかもしれん。
どういう形の門にするかも相談した方がいいしな。
そもそも、そういう細かい作業は、専門家にまかせた方がいいだろう。」
「そうね。フェルも私達も大したものは作れないでしょ?」
「そうですね。すぐ壊れるようなものしか作れないでしょうね。」
「ここにも、ちゃんと大工はいるからそこに任せた方がいいだろう。」
「村長には?」
「もうじき日も暮れるし、明日でいいだろう。」
そういうと、グラコの店で食事をする。
宿でも食事はできるのだが、2日に1日はここで食事をしている。
フェルもクリスもかなりこの店がかなり気に入っていった。
特に、石窯で焼くピザが・。
「しかし、フェルもクリスも本当に助かった。」
「言いっこなしですよ。僕も楽しかったですし、いい経験になりました。」
「そうね。私もカティアにはお世話になってるし、いい修行になったわよ。」
「そういってもらうと助かる。まぁ、今日は俺のおごりだ。好きなだけ食ってくれ」
こうして、打ち上げともいえる食事会が始まった。
フェルとクリスは酒など飲まないし、他のメンバーも積極的に飲む方ではない。
これもフェル達がこのパーティーで過ごしやすい理由の一つだった。
・・・・
「どう?」
「うん。かなり力の使う感覚が分かるようになった。
実はね。今日はほんとに時々なんだけど、作業時にグノームが見えたよ。」
「うん。やっぱり。土をいじってるから、結構グノームはいたからね。
結構フェルを覗き込んでたりしたよ。」
「え?そうなの。そこまでは見えなかったなぁ・・・。」
「でも、見えたんでしょ。これも成長ね。」
「そうだね。」
剣などはなかなか上達を実感しにくいが、これは成長がわかりやすいからフェルもこれは嬉しい。
実用的な部分では、まだ何一つ変わらないのだが。
・・・・
「いや・・・本当に助かった。
特に、家畜を飼っている者からは、感謝されておる。
門については、大工に頼むようにするから、心配はいらん。」
「助かります。最後まで仕上げたかったですが、ここから先は素人なので・・・。」
「いや、肉の差し入れも含めて、感謝しかない。」
「そういってもらえると、私達もうれしいです。
この村にはお世話になりましたから・・・。」
暁のカルテットのメンバーは深々と礼をする。
詳しくは効いていないが、この村がなければ、この村が良くしてくれなければ彼らの今はなかったということだけは、おそらく間違いがない。
「いつでも帰ってきてくれ。」
「ええ、その時には、門もきっとできているでしょうし。
それに何かあった場合は、ギルドに指名依頼をだしてくれれば、すぐに駆け付けますから。」
「それは、心強いな。何かあったら、ぜひ頼むよ。」
「「「「はい。」」」」
元々は、帰りにも何か狩猟をするという話であったが、すでに十分狩りもしたし何より疲れたということでまっすぐに街道をすすむことになった。
もちろん、彼らを襲うようなものはなかった。
こうして、ガティコの村での帰省は終了した。
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