85 ガティコの村
「なぁーんにもおこらないわね。」
街道を歩きながら、クリスがつまらなそうにつぶやく。
「そら、盗賊も出んわけじゃないから気をつけないといかんが、街道がそこまで危険だったら困るさ。」
「それに、女性が多いとはいえ、馬車にも乗ってないフル装備のハンターを襲うような馬鹿はいないさ。」
「まぁ、それはそうね・・・。なんだろう・・・フェルといると何かしらトラブルにあうから・・・」
「えっ?!また僕?!」
というわけで、1日が何事もなく過ぎていく。
「そろそろ、野営の準備をするか。」
「そうか・・野営なんですね。」
「そうだな。火をたく準備をするから、木の枝などを集めるんだ。少し、森の方へ行くぞ。」
「フェルくんがいて助かるわ。実は、これが結構大変なのよ。
木は森の近くにあるけど、森の近くでの野営は危険でしょ。薪を持ち歩くのは重いのよ。」
「あまり、フェルに頼ってばっかりじゃいかんがな・・・。確かに上級のパーティーに収納持ちがいることがいることが多い理由が良くわかるよ。何をするにもな・・・。」
収納持ちは貴重である。使える者の数はそれなりにいるのだが、上級パーティーやギルドや大型商店の専属になっているため、暁のカルテットのようなランクのパーティには縁がないのが普通なのだ。
「着火は、私に任せて」
クリスが、集めた薪に火をつける。
通常は、カティアの役割なのだが、フェルへの対抗意識かクリスが役割をかって出る。
「すごい!クリスいつの間に!!」
フェルが驚きの声をあげ、自慢げにクリスが胸を張る。
確かに、これはこれで凄い。
着火の魔法は使える者も多いが、使えるかどうかで便利さは格段に違う。
そして、フェルにはこれが出来ない。
「へっへーん。成長しているのはバーンやフェルだけじゃないのよ。」
子供じみている反応だが、これはクリスの劣等感の表れかもしれない。
「フェルもクリスもすげぇ・・・よ。
これでFランク・・・俺達より下ってんだからな・・・。
まぁ、変な奴らに利用されないように気をつけろよ。
お前ら二人の利用価値は自分達が思っている以上だからな。」
「はい。で・・・そのことでちょっとご相談が。」
「なんだ?」
「実は、クリスと話したんですが、もしよろしければしばらく皆さんのところでご厄介になろうかと・・・。」
「え?いいの?私達には願ったりかなったりだけど。」
「ええ。実は、最初はエドガーさん達についていこうかと思ってたんですが、それだと言われたようにエドガーさん達の邪魔をしてしまう可能性がありますし、既に家もご厄介になってますし。
新しくパーティを探すのも、正直不安というか・・・。」
「女性がいるパーティってここぐらいしか知らないし。やっぱり安心なのよ。」
「ですね。クリスのことも考えると。この間の跳龍の時の対応も信頼できるものでしたし。」
「ありがとう。歓迎するよ。」
そういうと、ウェンツはフェル達の手をしっかりと握りしめる。
こうして、フェル達も暁のカルテットの一員となったのだった。
「ちなみに、6人になったけど・・・」
「いや・・・シクステッドとかちょっとな・・・。どうせ、”暁の”としか呼ばれねぇし。」
・・・・・
ガティコの村まで野営を2回行ったが、これも順調であった。
通常は、2交代で行うのだが、今回から3交代で行えることもあって、普段より大分楽らしい。
「ねぇ・・・ティルク。これぐらいの薪とかって、余裕で入るよね?」
「余裕ね。実際、まだガラガラよ。
あまり量が入るのが周りにわかると警戒されるからと思って、自重してるけどもうちょっと活用してもいいかもね。松石も2つしか持たなかったけど、いくらでも入るしね。」
「クリスも暁の皆・・・って僕もそうなったんだけど、信頼していいと思うんだ。もうちょっと使っていこうかな。」
「まぁ、今の状態でもかなり・・・だから、ほどほどにね。
ところで、夜はシェードって精霊がいっぱいいるし、この焚火からはヴルカンを感じられるんだけど、どう?」
フェルは目を凝らして焚火をにらむようにして見るが、しばらくして首を横に振る。
「まぁ、すぐには難しいか。でも、感じようとすることが大事だと思うのよ。」
「うん。頑張ってみるよ。」
・・・・
ガティコの村は、周りを畑と平原に囲まれた場所にあった。
エルアよりはかなり小さいが、ニムロよりは、広く栄えており、村にはいくつかの大きな建物もある。
フェルの育った町に近い規模だ。
ただ、ここもエルマン子爵領である。
「あの大きな建物は、穀物庫だよ。ガティコは農産物で持っている村だからな。」
「そして、あの教会の横にあるのが、私達の育った孤児院ね。」
孤児院といわれた建物は、お世辞にも立派とは言えない造りの木造の建物である。
「まぁ、そんな顔すんな。みすぼらしいかもしれないが、あの施設がなかったら俺達の今はない。
もちろん、手伝いもしながらだが、教育まで受けさせてもらったからな。
村の皆さんだけじゃなく、ハンターになった先輩なんかからの寄付で成り立ってるんだ。
俺達も、もっと稼げるようになったら、ここにもお礼をしたい。」
「でも、今回はフェルのおかげで、もっと喜んでもらえるかもしれん。」
「そうね。まずは村長のところに行きましょう。」
読んでいただきありがとうございます!
面白いと思って頂けましたら、励みになりますので、下のブクマ、評価など、よろしくお願いします!




