81 精霊
「ねぇティルク。あの時、僕にははっきりとグノームが見えたんだ。
だけど、すぐに見えなくなっちゃった。なんでだろう?」
「うーん。こないだも言ったけど、洞窟みたいな土の精霊力が強い場所には、グノームはちゃんと最初からいたよ。でも、フェルには見えなかった。それは、人間には普通の事だよね?
フェルの他にグノームが見えた人はいない。」
「うん・・・。でも、どうしてティルクには見えるの?」
「私達妖精は、人間よりもはるかに精霊に近い存在だから。
人間の中には、妖精が見える人は存在するわ。大体が純朴な子供だけれど大人でも稀にいるの。
まぁ、話ができる人っていうと、また別の次元になるんだけど。
フェルは、妖精である私と話ができるから、おそらく一部の精霊を見ることができるのよ。
つまり、フェルが人間の中でも妖精に近い存在ってことかしらね。」
「わかったような・・・わからないような。」
「まぁ、簡単にいうとフェルは特別なんだけど、精霊を直接理解しているというより、妖精の延長線上で理解をしているのよ、もしかしたら、シルヴェストルやドリュアデスなんかは私たちに姿が似ているから感じやすいのかもしれないわね。」
「なるほど・・・確かにシルヴェストルもドリュアデスもティルク達に似ているね。」
「そうね。この2種類は、特に妖精と仲がいいから。
他の精霊と仲が悪いわけじゃないけれど、やっぱり妖精の住む森を守ってくれている存在だから。」
「精霊って、他にどんな種類がいるの?」
「有名な4大精霊だけでも、風のシルヴェストル、土のグノーム、火のヴルカン、水のウンディーネ・・・。そのほかに光の精霊ウィル・オ・ウェスプとか闇の精霊シェイドとか・・・。この他にも上位精霊と呼ばれる存在もいるし・・・。私達もあったことのない精霊だっているかもしれないわね。」
「ねえ・・・そうすると、他の精霊を見たり力を借りるにはどうしたらいいの?」
「うーん。難しい質問ね。まず、精霊が見えないことにはお願いなんてできないわ。
で、なぜグノームが見えたかなんだけど、たぶん二つの理由があると思うの。まずは、グノームの姿かたちを少し話をしていて知っていたことじゃないかと思うのよ。だって、見えてすぐにそれがグノームってわかったんでしょ?」
「うん。たしかに。そうすると、他の精霊の姿かたちを知っていると見えやすくなるの?」
「うーん・・・。その可能性はあるわね。一応は試してみる価値はあると思うわ。
グノームは、一度見えているからわかるわよね。ヴルカンは炎に包まれたトカゲのような姿よ。そしてウンディーネは、虹色に輝く体をもつ綺麗な女性よ。シルヴェストルやドリュアデスが少女なのに対して、かなり大人の女性に見えるわ。ウェル・オ・ウェスプは静電気の球体に見えるし、シェイドは真っ黒な布を纏った幽体のように見えるのよ。」
「なるほど・・・。でも、グノームはまた見えなくなったよ」
「それが、もう一つの理由ね。
それは、命の危機に接することによって、フェルの普段だとリミッターのかかっている潜在能力が使われたことよ。まわりのスピードがすごく遅く感じたっていってたよね?
祝福<ブレス>の効果もあって、多分フェルの普段眠っている能力が使われたのよ。
人間はね、自分で自分を傷つけたり、すぐに疲れて動けなくならないように、普段は持てる力の半分ぐらいしか使えないんだって。だけど、命の危険などがあるときは、その力を最大限に使える場合があるらしいのよ。『火事場の馬鹿力』とかよばれるやつね。
これで、フェルの精霊に対して働きかける力も増えたんじゃないかと思うのよ。」
「そうすると・・・・どうすればいいの?」
「そうね。命の危険な状態なんて、そんな簡単になってたらこまるから、この場合は全体の能力を鍛えることが大事になるの。剣だったら筋肉アップすると斬撃の力がふえるでしょ?それと同じ。
精霊に対する知識や知覚力を鍛えるしかないわね。」
言っている意味は分かるが、具体的にどうしていいのかがわからない。
「えっと、既に見えるシルヴェストルやドリュアデスになるべく多く接して会話をするようにするの。
今度から、急ぎの場合以外、なるべく通訳しないようにするから。
精霊の言葉は、人間の言葉とは違って、音で聞くんじゃなくて魂で直接話をするの
それができるようになれば、もっと精霊に近づけるはず・・・。
簡単に言うが、もちろんそんなに簡単なことではないし、かならずしもそれで力が付くかどうかはわからない。なにせ、近くに前例となる人などいないだろう。あくまで仮説でしかない。
だが、なんとなくだが、フェルにはそれは正しい気がした。
ただ、フェルが精霊力をより感じれる場所というと限られる。たとえば、メリアの森とか・・・・。
そして、やはり初心者御用達とはいえ、一人で行くのはあまり奨められない場所だろう・・・。
「まぁ、そんなに急に力がつくわけじゃないから。
風が強い日なんかにシルヴェストルを感じることもできるし。
あまり根を詰めすぎるのはよくないから。それよりも、また近くの岩場に岩を取りにいかないと。」
「うん。とりあえず、意識はしてみる。岩は今度ウェンツさんとニースさんと一緒に行ってくれるって。
なんかこないだの技を聞いて、うってつけのいい岩があるって言ってた。」
・・・・
「ニムロまで行くんですか?」
「いったことある?あそこにフェル君にぴったりの岩があるわ。」
「松岩っつってな。炭鉱の石炭層のなかにまじっている石炭になりきれなかった岩なんだよ。
珪化木っていうらしいんだが、この岩とても硬くて重いんだ。
しかも、炭鉱側にとって石炭を掘るのに邪魔な岩なんで、もちろんタダでもらえるだろう。
だけど、ちょっと考えがあってな・・・。
まぁ、これはついてからのお楽しみだが、うまくいけば、フェルにも村にも悪くない話だと思う。」
「ギルはもう少し休ませたいし、カティアをつれていくとクリスに怒られそうだから、今回は3人で行こう。半日もあればつくし、比較的安全な行路だけど、準備は怠るなよ。
2〜3日は向こうで滞在する予定にしといてくれ。」
読んでいただきありがとうございます!
面白いと思って頂けましたら、励みになりますので、下のブクマ、評価など、よろしくお願いします!




