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僕は、魔法が使えない。  作者: アーシェス
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78 跳龍3

「あとは、あの穴ね・・・。」

カティアは3つの洞穴の方をみながらウェンツ達に問う。


「いや・・・撤退しよう。

正直、あの穴はそこまで深いものではないし、跳龍がいたのなら他に何かいる可能性は低いとは思う。

だけどな・・・。何かあったら、まともに動けん・・・。

撤退するときには、ギリギリになる前にしないとな・・・。」

「正直ギリギリだよ・・・。まぁ、でも撤退は同意だね。

ウェンツも僕も盾は使い物にならなくなっちゃったし、ニースの槍もなくなったからね。

跳龍がいくらで売れるかわからないけど、えらい出費だよ・・。」

「命があるだけ、マシと思いなさい。フェル君たちがいなかったら、間違いなく全滅しているわよ・・。」

そういって、大きく割れた岩に目をやる。


「フェル・・・、あれは一体??魔法か?」

「収納魔法の応用らしいわよ」

自信満々に答えたのは、フェルではなくクリスだった。

「そうですね・・・。あまり遠くの敵にはできないんですが、大岩を一つ収納しておいて、頭上に出すという技です。実際に岩を創るわけでもぶつけるわけでもないので、1回限りの大技です。」

「で、これは?」

問いただすのは、またまたクリスだ。

「いや・・・、咄嗟のことで、自分でも良くわからないんだけど・・・・」

「むぅぅ・・・・」


実際に、フェルは咄嗟にグノームと叫んだだけで、何かをしたという意識はない。

すでにグノームと思われる小人はフェルには見えなくなっている。

実際に、小さくグノームとつぶやいたが、何も変化はなかった。


「あたり前じゃない・・・。精霊に語りかけたりお願いするから力を貸してくれるんであって、単に何もないところで名前を呼んでも何もならないわよ・・・。」

ティルクがフェルにだけ聞こえる声で喋る。


クリスは、フェルが自分よりも強力な魔法を使ったことで、不機嫌になっているのが自分でもわかった。

嫉妬なのだが、どうしてもそれを認めたくない自分がいるのだ。


「クリスちゃんも、あの凄い閃光はなあに?」

ニースがそんなクリスの心情を知って話題をクリスに向ける。

クリスも、自分が話題になったことが嬉しいのか、少し照れながら話す。

「あ、あれは只の灯火の魔法よ。本当は攻撃の魔法を使いたかったんだけど、まだ習ってないから。」


「え?!あれが灯火?ものすごい光だったけど・・・。」

驚いたのは、カティアの方だった。

確かに、灯火は純粋な光を作り出す魔法だが、あのような爆発的な光量は通常だせない。

「とりあえず、思いっきり魔力を込めてみたの。」

「ちょっと・・・クリスちゃん。あなた、自分が言ってることの意味わかってる?」

「ん?」

きょとんとするクリスの様子を見て、これは解っていないなとカティアが悟る。


「あなた・・魔力のコントロールができるってことは、学院の1年生並の資質があるってことよ。

魔力というのを知覚するのはすごく難しいの・・・。コモンの呪文しか普及しないのに・・。」

「でも、フェスカさんに習ってる途中なんで、まだ良く解ってないんですけどね・・・。」

「にしても・・・凄いわね。私もそれがわかるようになるのに半年近く掛かったのに・・・・」

急に褒められて、さきほどのフェルのことなどすっかり忘れてしまうのがクリスといえばクリスらしい。




「とりあえず、撤退ということでいいな。

あまりゆっくりしていてはいかんから、早く安全なところまで撤退するぞ。」

ウェンツの掛け声とともに、武器を拾い、跳龍を収納すると、すみやかに帰路につく。

幸いにも魔物などに遭遇することもなく、街道までもどってくることができた。

ウェンツによると、撤退を早めにするのはこの帰路で、肉食獣などと遭遇することが度々あるのだという。

血の臭いを嗅ぎつけて、寄って来易いのだという。

もちろん、最低限はぬぐってはいるが、そう簡単に血の臭いは取れるものではない。

大抵は、狼などの小型から中型の普段であれば問題のない魔物であるが、こちらが満身創痍であれば勝手が違ってきてしまう。なので、最低限その対応ができるうちに撤退をしなければいけないのだという。



行きは1時間程の道のりだったが、帰りは休憩を取りながら2時間近く掛かって街にかえってくることになった。

まだ夕暮れまでには時間があるが、すぐにでもベットに倒れこみたい衝動にかられる。

血まみれのハンターというのは、そこまで珍しくはないが、今回はウェンツなどはかなりの返り血を浴びており、人々の注目を集める。

「まだ時間もあるし、先に風呂で身体を洗うか」

そういって、風呂屋へ行くと意外な人物に出会った。


「あれ?バーン?!」

「フェル?それに暁の皆さんも・・・どうしたんです? その血・・・。」

どうやら、バーンは例の薬湯の素を納品にきたようだ。

なかなか好評のようで、供給がおいつかないらしい。

「いやぁ・・・ちょっとね。それより、また回復薬が欲しいんだけど。」

「ああ、ちょっと待たせるけれどいいかな。必要なのは?」

パーティーを離れても、バーンとフェル達の関係はあまり変わらずに接することができている。

バーンにとっても、ゼペットに教えてもらえるのはありがたいが、それだけではさすがに気がめいってしまうので、フェル達の存在は大変ありがたかった。

「じゃあ、またあとで。」

そういって、バーンと分かれると全員が風呂屋へと入っていった。




・・・・



「いやぁ・・・、気持ちよかった。」

「なるほど・・・、あの薬湯っていうのは癖になるな。」

「バーン君のあの薬・・・凄いな。既に傷跡にかさぶたができていたよ。」


「カティアさんって・・・意外と着やせするタイプなんですね。」

「なにいってるの、クリスちゃんの肌すべすべだったじゃない・・うらやましいわぁ・・・」

それぞれが、湯上りに好き勝手なことをいう。


この風呂屋には、大きな休憩スペースがある。

酒類は販売していないが、軽食をとることもできる。少々割高だが、替えの衣服などの雑貨も売っている。

これは、ハンターなどが汚れた衣服や武器屋や鎧などもまず洗ってから風呂に入れるようにし、風呂上りにまだ乾いていない場合に時間を潰せるようにしたもので、高くはないが有料のスペースになっている。

だが、絶妙の金額設定もあって、ここで休憩をする者は意外と多い。

くたくたになっていたフェル達も同様である。

薬湯といい、この風呂屋の店主はなかなかのやり手のようだ。



「さて、少し休憩も出来たし、ギルドに行くか。」

「そうね。混む前に報告すましちゃいましょう。」

「高く売れるといいが・・・・・。明日は買い物かな」

読んでいただきありがとうございます!

(そして、細切れになってしまってすみません。)

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