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僕は、魔法が使えない。  作者: アーシェス
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74 暁のカルテット

「メリアの森なら、もう眼をつぶっていてもいけるわね。」

実際にそんなわけはないのだが、ハンター試験以降、何回も通った道なのでクリスの足取りも軽い。

リハビリと言っていたカティアも、軽い歩調で歩けている。

まぁ、これにはフェルがいることによる影響は大きい。近場で日帰りの予定とはいえ、冒険には様々なアイテムを持っていくことが多い。1つ1つは大した重さでなくても、あつまると結構な重さになることが多いが、フェルがいることで、最低限の荷物を持つだけで済む。


「ちょっと、クセになると怖いわね・・・。」

「いっときますけど、その分ちゃんと働いてもらいますからね。」

ニースとクリスはかなり打ち解けているのだが、見た目や年齢を考えると言っている事は逆だなとギルなどは思う。クリスは年齢や見た目以上に、しっかりしているというか、手厳しいのだ。

まぁ、クリスの言うことは最もで、収納持ちに慣れるといざという時に困るのは間違いない。

それに、万一にでもフェルが死んでしまったりすれば、預けたものは二度と取り出せなくなる。

そんなことだけは避けなければいけないが、これもまた真実なのだ。


「どうだ?」

カティアにウェンツが声をかける。

他愛もない移動とはいえつい先日まで寝たきりだったことを考えれば、1時間近くの歩くのすら負担かもしれない。

「いえ、まったく問題ないです。むしろ荷物が少ない分、前よりも楽なぐらい。」

カティアの装備は簡素だ。動きやすそうな単衣の上に革鎧、腰には小さなナイフを刺している。

武器は比較的シンプルな長杖である。どうやら、武器を持って戦うというより、後衛を担当するようだ。


「カティアさんは、魔法を使うの?」

「ええ、これでも賢者の学院に通ったのよ。1年だけだけど。」

賢者の学院は、魔道学院と双璧をなす魔法の養成所だ。

基本的には、魔道学院とかわらないが、研究よりも実践を優先する傾向があり、そのため攻撃魔法などの直接的な魔法を得意とする者が多い傾向があるといわれている。

高額な授業料が必要な事は変わりなく、1年通うだけでも金貨1,000枚は必要といわれている。


「えー。すごい!」

「いや、本当だったら、私なんかの資金じゃ入れないところなんだけれど、駄目もとでうけた特待生制度に受かったのよ。まぁ、1年後は更新出来なかったんだけど。」

「いや、それってメチャメチャすごいんじゃ・・・。」


クリスが驚くのも無理はない。

特待生制度というのは、お金がない者でも、優秀な学生を発掘するための制度で、実質の学費が無料となる制度である。ある種各学院の広告的な意味合いもあり、広く告知されている。

ただし、かなりの難易度の筆記・実技の試験があるし、高くはないが一応受験料も必要なので、本当の意味でお金がない者が通ることは現実的には難しい。かなりの狭き門なのだ。

それに受かったというのなら、カティアはそれなりの実力と素養があるのだろう。


「お前らに、隠すつもりはないから言っとくと、カティアの魔法はちょっと変わっていてな。

”祝福”<ブレス>ってやつを聞いたことはあるか?

仲間の力を増幅する魔法なんだ。筋力はもちろん動体視力や反射力などを全体的に底上げしてくれるうえに、衝撃緩和や魔法緩和の効果まである便利な効果を付与してくれる。まぁ、これは、実際に体感すればわかるだろう。

ただ、欠点がいくつかあってな。

まず1つめは、使っている間は、カティア自身は意識を集中しないといけない。

全く動けないわけではないが、攻撃するみたいなことはできないし、防御もあまり期待できない。

そして、2つ目が、強化した反動だ。

筋力や反射力アップは強力だが、体にも負担をかける。効果を小さくすれば問題はないんだが、全力でかけると効果が切れた後は、かなりキツイことになる。まぁ、戦闘でやられるよりはマシだが。」

「なんで、あんまり無茶はできないのよね。まぁ、コモンはほとんど使えるからそれだけでもいてもらわないと困るんだけどね。」

「私は、便利屋さんじゃないわよ。」


確かに、コモンの魔法が使える者がいるのといないのでは大きく違うが・・・。

「ねぇ。その魔法なら、4人より人数が多い方が有利なんじゃ?」

前衛2・中衛1・後衛1の4人というのは、構成としては悪くないが、今の説明だともっと前衛や中衛がいても良さそうだが・・・。

「いや、それがなぁ・・・。人数が増えるとカティアの負担も多くなるのもあるんだが、メンバーを増やすとニースとカティアにちょっかいをかけてくる奴とかが多くてな・・・。」

「合同依頼の時ですら・・・ね。女性のハンターってあまり多くないから。」


確かに、ニースもカティアも絶世の美女というわけではないが、素材は悪くない。

そもそも、ハンターを目指す女性というのはそう多くはない。

腕力なども含めてやはりハンデがあるし、女性ならではの就職先というのもある。

だから、ハンターをしている女性というのは、変わり者か一攫千金を狙っている者、そしてニースやカティアのように誰かに誘われてなんとなく・・・のような者が多いのだ。


「ところで、4人はそういう関係なの?」

クリスが、興味本位の悪い目をしながらギルに聞く。


「どういう関係を想像しているか知らんが、俺たちは同じ孤児院の出身だ。

成人した際に、一緒に食うためにハンターになったんだ。途中カティアが学院に入学して3人で活動する期間があったけど、ずっと”カルテット”として、一緒にやっている。暁ってのは、今は仄暗い生活だけど、いつか陽の目を見るんだって言う意味なのさ」


「ご・・・ごめんなさい。」

それを聞いてクリスは、興味本位で聞いてしまったことを反省をした。

自分も決して恵まれた環境ではないと思っていたが、両親もいるし弟たちもいる。帰る家もある。

しかし、この4人にはそれらがすべてない。

そして、そんな環境からハンターとして生計を立て、カティアに到っては賢者の学院の特待生になったという。それは、並大抵の努力ではないことは容易に想像できたし、4人の結束はクリスの想像を超えているだろう。


「いや、別にかまわんさ。慣れているからな。

まぁ、俺としてはお前ら二人の関係も気になるがね。」

「な! 馬鹿なこと言わないで。フェルはタダの同期よ。あ、大事な相棒だけど」


あたふたするクリスを暁のカルテットの面子は面白そうに見て笑う。

ウェンツのデリカシーのない切替しに、クリスはちょっと救われたような気がした。

もっとも、フェルだけは、どっと疲れていたが・・・。

読んで頂き、ありがとうございます!

励みになりますので、下のブクマ、評価など、よろしくお願いします!


なお、今月は都合上、更新出来ない日があると思いますので、ご容赦ください。

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