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僕は、魔法が使えない。  作者: アーシェス
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67 初めての魔法

バーンが劣化魔法薬の精製を習いだして5日。

バーンの精製率は5割を超えるまで成長していた。魔法力の扱いに随分なれたようだ。

精製率はネフリムに随分劣るが、スピードが速いので精製個数は若干バーンの方が多いぐらいだ。


「おまえ・・・本当にすごいな。」

ネフリムは素直にそう思う。自分も魔法薬を作るのはほとんどしたことがないとはいえ、魔導学園を出ており付与系のエキスパートだ。まだ精製率や品質面では自分の方が優れている自信はあるが、バーンの上達ぶりは正直凄い。そしてなにより、魔力総量が多い。自分の倍近い付与にチャレンジしているわけだから。


2人の活躍のおかげで、あれから死者は出ていない。

間違いなく彼らの活躍がなければ、疫病は猛威を振るったはずである。

ゼペットも毎日重篤患者へ劣化魔法薬を投与を行っており、全員かなりの疲労が蓄積していた。

それでも、3日目からは街の薬師が何人か復活して、薬をつくってくれたので、通常の薬はかなりの量が用意できた。

ギルドや領主の対応、情報統制も見事の一言であり、大きなパニックもなかったのだから、大したものだ。しかも、街からでる者に薬の摂取を義務付けを徹底していた。


ただ、人口が多いため、沈静化もしておらず、むしろ患者はじわじわと増えている状況であった。








「こちらです。」

そういって、2人の男が案内がされてやってくる。どうやら魔法学園から派遣された者が到着したらしい。

フェーンとクロウズと名乗った男を見て驚きの声をあげたのは、バーンであった。


「あ、兄貴?」

フェーンと名乗った男を見てポカーンとしているが、驚いているのはフェーンも一緒だ。

フェーンは10以上歳は離れてはいるがバーン兄である。そして、魔法薬の術式を覚えたのもこの兄の練習を見ていて覚えたものだ。


「フェーン先輩?」

ネフリムも驚く。ネフリムにとってはフェーンは学院で同じ付与系の研究をしていた先輩であった。

学院でそのまま教鞭をとることになったほど優秀だった。


「バーンにネフリムか・・・。こいつは驚いたな。」

「私は、ここの体制の方が驚いていますよ。疫病の状況を聞いて安心しましたが、なるほど・・・納得です。これは、私たちは必要なかったかもしれませんね・・。」

クロウズという男がフェル達の薬の精製する様子を見て言う。


「いや、来ていただいて助かります。というか、我々では”緋毒”の拡散防止で精いっぱいでしてなぁ

しかも、かなり疲労がたまってきておりますので、このままではまずいところでしたんじゃ。」

ゼペットが、挨拶をする。


「あなたが、ゼペットさんですね。報告は聞いております。

私は、クロウズと申します。ここにいるフェーンと共に魔法学院で魔法薬の研究・指導をしています。

微力ながら、ご協力いたします。よろしくお願いいたします。」


粗方の挨拶が済むと、二人はさっそく準備を始める。

フェーンは、ネフリムとバーンの付与を見て関心をする。

「驚いたな・・・。効果はともかくちゃんと付与できてるじゃないか。」

「うむ。薬の方も精製方法が若干古いが、素晴らしい。学院以外でここまでできるとは・・・。」

そういながら二人は着々と準備をしていく。

二人が用意した仕組みは、フェル達の仕組みよりもかなりコンパクトにできていたが、理論的には同じものらしい。


ただ決定的に違うのがスピードと出来る薬の形が、錠剤になっていることだった。

「ネフリム君、ちょっと手伝ってくれるかい。この仕組みを動かすのには魔法力がいるんだ。いや、君なら簡単だから。」

そういうと、薬の精製をする仕組みの稼働をネフリムに指示する。

1時間ほどの稼働で、フェル達が半日かけて精製する薬ができあがっていた。


「皆、少し休んでもいいぞ。」

フェーンとクロウズはそういうと、次々に薬に「効果拡大」「即効性」の二つを同時付与していく。

付与率は100%、そして付与するスピードはバーンの半分以下であった。


「はぁ・・・。流石・・・。」

ネフリムがその術式を見てため息をつく。自分とは次元が違うのがすぐにわかる。

2時間ほどで100近い魔法薬が精製されていた。

経口摂取でもすぐに効果が出るらしく、重篤なものから投与されることになった。




そこから数日、薬は恐ろしく速いスピードで精製され、軽度の発症であった人にも配布をされていった。

基本は、ネフリムが薬を生成する機械を作動させ、フェーンとクロウズが付与をするのだが、時折バーンも付与を手伝ってた。

ただし、フェーンの指示で今度は「即効性」のみの付与をしたものを作成していた。軽度の患者や予防用である。

重篤な患者の発生は減り、軽度の発症者や潜伏期間の者の治療をする時期になるまで3日ほどであった。



「いや・・・本当に助かったよ。流石は学院だ。ギルドを代表して礼を言う。」

ギルドマスターのカシューがフェーンとクロウズに礼を言う。


すでに、薬は減産体制に移行しつつあり、交互に休暇をとれるようになってきていた。

特に、ゼペットを含めてエルアから来た者たちの疲労はピークを越していたのだ。


そんな中でもバーンは良くやっていた。

フェーンの付与などをよく観察もしていたし、話もよく聞いていた。流石にそう簡単にできるようにはならないが、理論は大分わかったようである。

フェーンも年の離れた弟が自分の得意分野のことを聞いてくることを嬉しくも思っていた。

どこまで理解できるかわからないが、かなり詳しく付与魔法について教えることになった。



そして、その横で一生懸命に話を聞いていたのが、クリスである。

ほとんど理解できていないのだが、必死で聞いている。

そして、あとでバーンにやさしく解説をしてもらっていた。

クリスは、今回バーンがネフリムなどから指導を受けているときから、かなり耳をすませて話を聞いて、あとでバーンに説明を聞いていた。

実はバーンの力量がこんなにアップの背景には、クリスにマナの扱い方を教えているからでもある。

実は、バーンもネフリムから教えられたことをすぐには理解できなかった。

だが。クリスが懸命に聞いてくるので、教えるために頭を整理していると、自然と理解ができるようになっていたのだ。

教えることで、自身が学んでいたのである。


そして、クリスはまだ魔法は使えないが、マナの扱い方を少し覚える。

魔法力を感じ、動かす感覚がわかるようになってきたのだ。

ここまでができるとおそらく生活用のコモンといわれる簡単な魔法は使えるはずだ。


「発火」

そう念じると、わずかに手のひらから火が一瞬出る。

かまどなどに火をつけるためにつかうコモンの魔法だ。

基本的な魔法なので、紋の影響をほとんど受けない魔導学園の入試試験でも使われる魔法・・・・。


「使えた!!」

攻撃魔法には、程遠い。だが、これがクリスにとっての第一歩であった。

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