65 ギルモアの都
魔法薬の生成から約1週間。
まだ、体力は十分に回復したとは言えないが、カティアは順調に回復をしていっており、会話ができるようになっていた。
エルアの街でもギルドから警告が出ていたこともあり、重篤な状態になった者はいなかった。
それでも、かなりの薬の提供が必要であったため、”暁のカルテット”とバーン達は、ずっと薬を作り続けていた。最初は魔法薬の生成をするが、バーンの疲労も大きく、1日に1本できるかどうかという生成率であったので、3本の予備が出来た時点で中止をして基本の薬の作成に集中していた。
薬の代金は、安価ではあるがすべて領主であるゼッペル子爵が買い取ることになっていた。
このあたりは、ギルドマスターであるオーギュストの力量であり、ゼッペル子爵が良き領主である証であった。
そして、1週間が経過したころ、オーギュストから、1つの指名依頼がはいる。
ギルドマスターからの指名依頼。それはつまり、実質上の命令である。
「”暁のカルテット”の3人とバーン達3人は、ゼペットの護衛を兼ねてギルモアへ向かい、現地のギルドマスターの指示に従え」
という内容である。
ギルモアは、ギルバート伯爵というこのあたりの辺境領の盟主というべき存在が納めているエルアから馬車で1週間ぐらいの距離にある大都市である。
なぜ、そのようなところにフェル達が行くことになったかといえば、緋毒の患者がここで発見されたからであり、被害が拡大しているという情報がはいったからである。
オーギュストは王都のギルド本部に、緋毒の発生と魔導学院への要請を行ったのだが、その4日後にギルモアのギルドより同様の報告が入ったのだ。しかも、ギルモアではすぐに緋毒と判断できる者がおらず、対処方法がわからなかったため、既に死者が出ている状況であったのだ。
重篤な患者も報告されていた。
そのため、「緋毒が伝染病であり、顧客の隔離が必要なこと」「緋毒治療の薬があること」などの短い要件は魔法電信で伝えることができたのだが、詳細の作り方までは流石に伝えきれずゼペットを派遣することになった。王都からも、薬師や魔導学院の応援をギルモアに派遣することになったのである。
オーギュストも、ギルモアのギルドマスター、元A級ハンター”雷神”カシューに頼られては、逆らえない。そして、ゼッペル子爵もそれは同様である。貸しは多いほうがいいのだ。
作成した薬に半分と、薬の生成に必要な道具をフェルが”転送”すると、馬車3台で急いでギルモアに向かうことになった。
ハンターは、牽制の意味も込めて、御者台にすわるため、3台というのは人数に対しては過剰なのであるが、負荷を減らし、一刻も早くギルモアにつくためにオーギュストが手配をしたのである。
かくして、フェル達は通常であれば7日近くかかる行程をわずか4日でギルモアにつくことに成功していた。
ギルモアは、領主やギルドからも通知が出ていることから、できるだけの外出を控えるように通知が出されているらしく、”暁のカルテット”のメンバー曰く、いつもより人通りは少なく閉まっている店も多いらしかったが、それでもエルアの街よりもにぎわっていた。
「こっちがギルドよ」
そういわれて案内されたギルドは、大きな館が3つ連なってできていた。
その1つ1つがエルアよりも一回り大きかった。
「すみません。エルアから来ました。これが、ギルドマスターからの紹介状です。」
紹介状を渡すと、すぐにギルドマスターの部屋に案内をされる。
中には、法衣を纏った初老の男性が待っていた。”雷神”カシュー その人である。
現役時代は、雷の魔法を得意とするハンターであり、様々な討伐実績や難事案の解決を行った英雄である。その眼光は老いても鋭く、ゆったりとした法衣をまとっているが動きに切れがある。
しかし、その”雷神”も、眼の下にクマができており、やや憔悴をした状況である。
「お待ちしておりました。ゼペットさん。
本来であれば、ついてすぐでゆっくりしていただきたいのですが、ことは急を要しますので、ご容赦ください。まず、状況について説明します。」
そういうと、街の状況について説明を始めた。
「現在の死者は既に21名、重篤な者も50名近くおります。
これらの者は、ご指示の通り村はずれの山小屋に隔離しております。
また、発病の疑わしき者は100名近くおり、外出禁止を言い渡しています。
街の薬師も対応しているのですが、逆に発病をしてしまい対応が出来なくなっております。
王都からの応援はおそらくあと1週間近くかかるのではないかと思われ、ゼペットさんが頼みの綱です。」
ゼペットは頷くと、いくつかの指示を行う。
まずは、薬を生成するにあたっての場所と必要な薬材料の提供依頼を行う。
そしてギルド幹部および手伝いをする者の招集を依頼した。
持ってきた薬をつかっての病にかからないようにするための注射を行うという。
さらに、バーンとフェル達に提供された一軒家での薬の製造を支持する。
「ここのギルドで付与魔術が教えれるものがおるか?」
手をあげたのは、魔導学院からギルドに派遣された2名とカシュー本人である。
「わるいが、ひとり付与魔法の教えてやってほしいやつがおる。」
そういうと、3本の木筒をカシューに渡しながらいう。
「この薬3本は、魔法薬になる。軽度な発病状況ならそれを飲めば1日・2日で完治するはず。
本来なら、重篤な患者に使いたいのじゃが・・・物量が足りん。使い方はお前さん方に任す。」
カシューはそれを託されながら、驚く。
「魔法薬をおつくりになられるのですか。」
魔法薬をつくるのは、難しい。紋の相性に技術の両方がいる。
ゼペットは首を横に振りながら答える。
「我流のようでな・・・。成功率は1%未満じゃ。エルアでは1日に1本できれば良いほうじゃった。
じゃが、それでも普通の薬とは効果が全然違う。普通の薬では回復困難なものでも回復できるからの・・・。我流でも生成できるということは、紋の相性は悪くないはず。あとは、技術や知識の問題じゃろう。まだハンターにもなりたてで指導も受けたことがないらしい。成功率が数%上がるだけでも随分違うんじゃ。教えてやってもらえんだろうか」
カシューは頷く。
「わかりました。魔法薬生成ができるものは、ここにはいませんが、付与系の魔法指導であればギルドの本来業務ですのでお任せください。こちらも魔法薬付与の技術を見せていただきながらになりますが。」
「うむ。オーギュストには言うてあるが、バーンが魔法薬を作れるようになった場合は、ギルドの庇護下にいれ、専属販売をさせるつもりじゃ。よって、よろしく頼む」
こうして、薬の生成と共に、バーンへの付与魔術の指導が行われることが決まった。
読んでくださって、ありがとうございます。
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いや・・・不自然ではない展開って、書いていると本当に難しいですね・・・。
他の先生の作品を読んでいると凄いと思います。
というわけで・・・最近ちょっと展開に無理があるかなぁ・・・と思ったりしながら書いてます。
ドがつく素人なので、温かい目で読んでいただけると嬉しいなぁ。




