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僕は、魔法が使えない。  作者: アーシェス
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64 密談

ゼペットは、ギルドのカウンターでとある人物を指名する。

オーギュスト子爵・・・この街のギルドマスターである。


この街には、子爵位を持つものが二人いる。

独りが、街の当地を国王から任されているゼッペル子爵。そしてもう一人がこの街のギルドマスターである者である。ゼッペル子爵が世襲制なのに対し、オーギュストは一代限りしかもギルドマスターの役職についている間だけの爵位持ちである。

全ての街ではないが、一定規模の重要拠点ではこのようなギルドマスターへの爵位を国が認めるようにしている。これは、国王の世襲制の貴族への牽制も兼ねており、ギルドにとっても貴族が無理な要望をしないためにも役に立っていた。もちろん、世襲制の貴族にとってもやましいことさえ考えていなければギルドと有効関係であることは望ましく、よき相談相手を得ることも可能なわけであるから悪いことばかりではない。


「あの・・・失礼ですが、どのようなご用件でしょうか?」

受付の女性がゼペットの応対をする。

当たり前だが、ギルドマスターを出せといわれてすぐに出すようなことはない。


「うむ、ゼペットが緋毒の件で来たとだけ伝えてくれればよい。」

女性は短くわかりましたというと、奥のギルドマスターの部屋へと入っていく。

そして、しばらくすると、「こちらへどうぞ」といってギルドマスターの部屋へゼペットを案内してた。


「おしさしぶりですね。」

ギルドマスターの部屋の応接では、鋭い眼光の壮年がゼペットを迎える。

「ほんに・・ひさしぶりじゃな。偉くなられたようで、わしもうれしいわい。」

社交辞令ではあるが、二人は知り合いのようであった。


「さて・・・。急にきていきなりじゃが、本題からはなそうかの。

実は、この街で緋毒と思われる患者がでおった・・・・。」

急にギルドマスターの顔から笑みが消え、真剣な顔つきになる。

「それは・・・・まことですか。緋毒などもう20年以上前に根絶したと思っていましたが・・・。」

「うむ。もう、若い者は知らんじゃろうて・・・。じゃが、おそらく見立ては間違っておらん。

 一応、治療は済んでおるし、接触したと思われる者にも薬を投与したが、感染源はわからんし、他の者に感染していない補償はないでな。急いで知らせに来た。」

そういうと、木筒を3本ほど取り出す。魔法薬の失敗作だ。

「初期の症状であれば、この薬でも対応できるでな。預けておく。

まずは、緋毒の症状を伝え、発症の疑いのある者を隔離・投薬を行なわねばならんとおもってな。

あの時のようなことが再びおきんようにせねばな・・・。」

オーギュスト子爵は頷く。


緋毒がこの地で最後に発見されたのは、25年ほど前のことである。

オーギュストもその頃はまだ若く、中堅のハンターだったのだ。そして、そのオーギュストの恋人であったのがゼペットの娘エルザであった。

エルザは絶世の美女というわけではないが、よく気がつく娘で彼女もまたオーギュストを好いていた。

そんな彼女を、ある日突然“緋毒”が襲ったのだ。

当時もゼペットは薬師をしていたのだが、娘を襲った奇病になすすべもなかった。

当時のゼペットが知りうるありとあらゆる薬を試したのだが、一時的に症状が良くなったとしても、回復することがなかった。それどころか、伝染することすら当時はわからなかったのだ。


魔導学院から派遣された魔術師が、解析魔法をつかって、緋毒の正体や解毒方法を確認するまでおよそ1ヵ月。緋毒は猛威をふるい感染者は数百名、命を落としたものは100名を超えた。

そして、その中にエルザもいたのである。


ゼペットもオーギュストも、自身の無知と力のなさを呪った。

娘を失った虚無感とともに襲った後悔の念。これが、ゼペットの薬師としての努力を生み、老いても薬師を続けている理由なのかもしれない。


「初期症状は、これで抑えれるが、問題は症状が進行していた場合の対処じゃ。

今回の患者もかなりの進行具合であった・・・。これを抑えようと思うと、前回同様・・魔法薬がいる。

そこで、いくつかお前さんに頼みたいことがある。

1つは、魔導学院への要請じゃな。魔法薬の作れる者を送ってもらうこと。

そして、もう1つは、その技術をある者に教えるように働きかけて欲しいんじゃ。」

「な、魔法薬の精製技術を教えるように働きかけろと?流石にそれは・・・・」

「いや、秘術を教えろとはいわん。流石にそれは無理じゃろう。実は・・・」

そういうと、ゼペットはオーギュストにバーンのことを説明する。

自分のギルドに所属しているハンターとはいえ、流石に全員を知っているわけではない。

オーギュストはバーンの名前は知らなかったが、最近登録をした3人組のことは流石に知っていた。

収納魔法はもちろん、さすがにフェル達の稼ぎは新人としては目立つ。


「そうすると、既に魔法薬の精製方法自体は知っているということでよろしいか?

だとすれば、魔法の扱方などの指導ということであれば問題ないかと・・・」

ゼペットが頷く。

「そして、最後の頼みというのが、魔法薬の精製が可能になった前提でじゃが、バーンが作成する魔法薬の買取先になってほしいのじゃ。」

これには、冷静なオーギュストも少し驚いている。

そして、しばらく考えた後に納得をしたようだ。


「要は、後ろ盾になれ・・・ということでよろしいか?」

ゼペットが大きくうなづいた。


魔法薬は王都などでも貴重な薬である。

ましてや、使用期限の問題などからもこの街まで出回ることはほぼない。

そのため、とんでもない値段でも売れる。つまり、利権の塊なのである。

当然大儲けが出来るが、ことはそう簡単ではない。

その利権をめぐって、様々な権力・暴力が動く可能性がとてつもなく高い。

そして、その影響範囲もこの街に留まらないかもしれない。

そのためには、大きな後ろ盾が必要になる。権力的にも、物理的にも。


ゼッペル子爵は世間でいえば、かなり良い領主である。税も少なく、民に対しても偉ぶることはない。

しかし、魔法薬の精製できる者が領下いるとなると、どうでるかはわからない。

扱い方によっては、近隣の貴族よりも優位になるし、金も稼げるようになる。金は魔物である。

また、地方領主の庇護下ではまずいのが、上位貴族の存在である。

子爵位よりも上位の伯爵などの手が伸びると、ゼッペル子爵では対抗しづらいのだ。


なので、この街での対応だけでなく、その周辺にもにらみを聞かせることが出来る存在といえば限られていた。ハンターギルドであれば、どの街の領主も簡単には口出しできないし、実力行使もしづらい。

これに匹敵するのは、魔道学院かアルキアの賢者の学院ぐらいである。


「それは、こちらとしてもありがたい話ですので、問題ないかと。」

「うむ。バーン達には申し訳ないがの・・・。じゃが、魔法薬が作れることが大っぴらになってからでは、ちとな・・・。本人たちは、良くわかっていないようだしの。」


「わかりました。とりあえず、バーン君にはわからないように護衛をつけておきます。」


そうして、フェル達が知らないところで話は進んでいくのであった。


読んでくださって、ありがとうございます。

本日で連載1ヵ月です。

プロットがいい加減なのと、かなり話を強引にすすめているので、読みづらさなどもかなりあると思います。

区切りのいいところで、ちょっと更新速度なども調整して、もう少し読みやすくするほうを優先しないといけないなと考えております。

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