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僕は、魔法が使えない。  作者: アーシェス
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62 緋毒

「おや、どうした。そんなにあわてて。」

「すみません。リングの花の蜜ってありますか?」

バーンが向かったのは、薬師のゼペット老人のところであった。

ウェンツがカティアの診断を頼んだ薬屋は、街の最大手の薬屋ではあったが、ゼペットのところではなかった。そこで、もしかしたらここになら薬があるかもと思ったのである。



ゼペットの店は、老人一人がやっているだけあって古くて小さな店である。

古くからの客でなりたっているが、一見でまず顧客は来ない。

しかし、ゼペットの薬師としての腕や経験は本物であることをバーンは良く知っていた。


「リングの花?そんなもん何に使うんじゃ?」

どうやら、ゼペットもリングの花の使い道を知らないらしい。

少し、がっかりしたが、全ての薬効を知るというもの自体無理な話だからそれはしょうがない。

「実は・・・」

そういうと、カティアという女性の症状を話した。

ゼペットは、真剣な表情で聞き入っていたが、どうも納得がいかない様子で首をかしげる。

「それは、本当にリングの花が薬なのか??」

そういうと、いくつかの薬材の粉と木箱をとって、カティアのところに案内しろといった。




・・・・




クリスとニーズは、男たちを部屋から出すとカティアの身体を拭く。

床ずれも起きており、かなり痛々しかったが、魔法薬でその痛みは緩和したようである。

しかし、水泡は消えない。ただ、床ずれがなくなっただけでもかなり楽にはなったようだ。

ゼペットとバーンが戻ってきたのは、それから少したってからだった。


「これは・・・・。まさかとおもうたが、緋毒・・じゃな。しかもかなり進行しておる。」

ゼペットはそういうと、ウェンツを呼んで、これまでの処置を確認する。

どうやら、最初に見せた薬屋では、薬が材料不足で調合できないといわれたらしく、安静にするだけで、バーンが処置をするまで具体的な処置はなにもされていなかったらしい。


『緋毒・・・』

バーンには初めて聞く病名である。

ゼペットの説明によると、特殊な菌による感染症の一種らしく、体内にはいった菌が皮膚を食い荒らし、やがて死に至る病らしい。感染率は低いが、致死率が高い病気なのだという。

この病名をバーンが知らないのも無理はなく、最後の患者がでてからもう20年以上たつというのだ。

おそらく、薬屋は対処方法がわからず、無理な薬剤を言ったのではないか・・・。



「この娘さん方と接触の持ったのは、お前さんたちの他にいるか?」

「いや、我々3人と、フェル達、そして最初に見てもらった薬師だけだ。」

「その薬師が接触を持ったのは?」

「もう3週間前ぐらいになる。」

ゼペットはうなずくと、薬剤の粉をいくつか混ぜて水で薄めめると、木箱を開け中にはいっていた細長いガラスに出来た液体を注いだ。

そして、先端に短い鉄製の針をつける。よく見ると針の中が中空になっている。

そして、自らの腕にその針をさすと、ガラスの端の棒を押し込んだ。

注射である。


半分ほどの液体を自分にさした後、針をふき取り火であぶると6人に順に注射をしていく。


『ぐぅわぁぁ・・・』

大の大人が腕から目をそらし、痛みに顔を歪める。

なんども刀傷をはじめとした大怪我をしてきたベテランハンター達にとっても、それは拷問のように感じた。

痛みは怪我に比べればもちろんたいしたことはない。だが、準備ができる分、恐怖を感じるのだ。


「うむ。これで感染は防げるはず。薬屋の様子は後でみにいってやればいいが、3週間たって異常がなければ問題ないじゃろう・・。それよりこの子の対応じゃな・・・。」

そういって、ゼペットはカティアの病状を確認する。


「ここまで進行しているとなると、ただの薬では、進行を遅らせるだけでもう効かんな。

バーン。おまえさん魔法薬を作れるよな・・・。」

「かなり効率が悪いですし、傷薬しか作れませんが・・・・。」

「それでも、作れるということは、才能があるということじゃ。わしと違ってな。

どちらにしろ、このままでは手遅れになるだけじゃ。お前さんにかけてみるしかなかろうて。」


そういうと、”暁のカルテット”のメンバーに確認する。

「金貨200枚・・・。後払いでもかまわん。払えるか。」

こんな時にとは誰も言わない。ゼペットの眼光がいつになくは鋭い。もちろん慈善事業を期待しているわけではないが、かなりの金額である。しかし、カティアの命には帰られない。

後払いでよい。つまりは助かる見込があるということだ。


ウェンツは力強くうなずく。ゼペットはそれを確認し、”暁のカルテット”とフェル達に次々に指示を出していった。

「まずは、薬の材料がいる。あいにく、さっきのやつでほとんど材料が切れてしまっている。

バーンの生成率を考えると、かなりの量が必要になるからの。

まずは、大型の樽1つ、小型の樽を2つ、それから、芋と米 とりあえず2㎏ずつ・・・・」

手分けをして店に買いに出る。

「それから、最後がアオカビのついたパンかチーズ。これはできるだけ沢山用意してくれ。

パン屋はもちろん、宿屋などまわって集めるんだ。

それから、バーンは調合の仕方を教えるから、できるだけ沢山の湯を沸かしておけ。」


そういうとゼペットは道具を必要な道具を取りに店にもどっていった。




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